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文学の古典で英語の読解力を付けよう!ヘミングウェイ「雨のなかの猫」を読む

ヘミングウェイ「雨のなかの猫」を読む

雨が多くなる梅雨の時期は、家に閉じこもって小説の世界に浸りたくなることもありますよね。この記事では20世紀アメリカで最も人気のある作家の一人、アーネスト・ヘミングウェイの短編小説「雨のなかの猫」の一部を読んでいきましょう。

アーネスト・ヘミングウェイ作「雨のなかの猫」

1925年のヘミングウェイのデビュー作『われらの時代』に収録された短編小説「雨のなかの猫」は、海に面したホテルでイタリア休暇を過ごすアメリカ人夫婦を描いた作品です。

雨が降る窓外をホテルの部屋から眺める妻が、雨のしずくに濡れるテーブルの下で「子猫が一匹うずくまっている」のを見つけ、保護しようと階段をおりていく冒頭から物語が始まります。

次の「雨のなかの猫」の一部分を読み、あとのクイズに答えましょう。

The American wife stood at the window looking out. Outside right under their window a cat was crouched under one of the dripping green tables. (ア)The cat was [dripped、 she、 would、trying、soon、 not、 tomake、 that、 be、herself、 compact].

‘I’m going down and get that kitty,’ the American wife said.

‘I’ll do it,’ her husband offered from the bed.

No, I’ll get it. The poor kitty out trying to keep dry under a table.’

The husband went on[ イ ], lying propped up with the two pillows at the foot of the bed.

‘Don’t get wet,’ he said.

The wife went downstairs and the hotel owner stood up and bowed to her (ウ)as she passed the office. His desk was at the far end of the office. He was an old man and very tall.

‘Il piove, ’the wife said.

She liked the(エ)hotel-keeper.

‘Si, Si, Signora, brutto tempo. It is very bad weather.’

クイズで理解度をチェック!

1.本文中の下線部(ア)が「猫は雨しずくがかからないように、じっと身体をまるめていた」という意味の英文になるように、[]内の語を並べかえて英文を完成せよ。

(ア)The cat was [dripped、she、would、trying、soonmaketo、not、that、 be、herself、compact].

2.[イ]に入る語句として、相応しいものを次のA~Cから1つ選び、記号を書きなさい。

A. read

B. to read

C. reading

3.本文中の下線部(ウ)と同じ用法のasを、次のA~Cから1つ選び記号を書きなさい。

A. George must stop playing video games now as I have to go out.

B. Catherine watched him as he walked through the crowd.

C. We enjoyed discovering different aspects as the session progressed.

4.本文中の下線部(エ)hotel-keeperとはどのような意味か?日本語で答えなさい。

 

猫

「雨のなかの猫」解説

ホテルの部屋から、一匹の小猫が雨に濡れないようにじっと身体をまるめているのを見つけた妻。しかし、妻がホテルの外へ出てきたときには、子猫はすでにいなくなっていました。落胆した様子で部屋へと戻ると、彼女は夫に向けて、自分の人生に望むこと、特にどのような生活をしたいかについて、やや一方的に語りかけるシーンが続きます。

‘And I want to eat at a table with my own silver and I want candles. And I want it to be spring and I want to brush my hair out in front of a mirror and I want a kitty and I want some new clothes.’

自分の銀の食器を置いてテーブルで食事がしたいの。ろうそくもほしい。それに、春になってほしい。そうしたら、鏡の前で髪にブラシをかけて、子猫を飼って、服も新しくしたいの。

Anyway, I want a cat,’ she said, ‘I want a cat. I want a cat now. If I can’t have long hair or any fun, I can have a cat.’

とにかく猫がほしいの。いますぐに。髪をのばしたりとか、何にも楽しいことができないのなら、猫ぐらい、いいでしょう。

夫は「いい加減にしろよ」と妻をうるさがり、彼女の望みを無視するような態度で、本のページをめくる手を止めません。夫婦のあいだの空気が険悪になるそのとき、ホテルの主人に頼まれたと語るメイドが、大きな三毛猫を抱きかかえて、夫妻の部屋に現れるところで突如として物語は終わります。

この短いストーリーは、ヘミングウェイと彼の最初の妻ハドレーの関係が基になっているといいます。Carlene BrennenのHemingway's Cats: An Illustrated Biographyによると、ヘミングウェイと結婚して1年が経つころハドレーは、夫が仕事をしているあいだ、狭い部屋のなかでひとり本を読んだり、手紙を書いたり、借りてきたピアノを練習したりと、とても寂しい時間を過ごしていたそうです。

ヘミングウェイと出合いたった9カ月で結婚し、そのあとすぐにパリへと移住したハドレーは、ミズーリ州セントルイス出身の内気な性格の女性でした。大都会パリの群衆のなかでは、孤独を感じることも少なくなかったでしょう。

ハドレーはときに寂しさを紛らわすため、子猫を飼うことも考えていましたが、若きヘミングウェイには「猫を飼うには貧しすぎる」と言われていたと、Carlene Brennenは書いています。「雨のなかの猫」に登場する「猫」は、そんなハドレーが感じていた孤独を象徴しているようです。

ヘミングウェイは『われらの時代』によって、それまでのアメリカ人作家の常識を大きく覆し、短編小説の書き方と読み方を大きく変えてしまったといわれています。「雨のなかの猫」も、ヘミングウェイ特有の朴訥な文体と曖昧なセリフ回しで書かれており、謎解きのように一文一文を吟味したくなる物語です。

例えば、物語の最後は「大きな三毛猫」が登場して終わりますが、果たしてこの猫は妻が窓から眺めていた猫と同じ猫なのでしょうか?また妻は、この「大きな三毛猫」に対してどのような反応を示すのでしょうか?「猫」を欲しがっていた妻のところに、猫がやってきたという表面的な事実だけをすくえば、ハッピーエンドのように読めるかもしれません。しかし、背景にある夫婦の不和や妻の孤独感は、本当にそれで埋まるものなのでしょうか?

物語はヘミングウェイらしい曖昧さを残して終わっています。とても短い作品なので、英語でも簡単に読み切れます。雨の日には皆さんも、ぜひ物語の世界に浸りながら考えてみてくださいね。

参考文献

■Ernest Hemingway, The Complete Short Stories Of Ernest Hemingway: The Finca Vigia Edition , “Cat in the Rain,” (Scribner, 2007)

■Carlene Brennen, Hemingway's Cats: An Illustrated Biography, (Pineapple Press, 2015)

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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