恋と友情に奮闘する女性たちの人生「第2章」【FILMOSCOPE】

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気になる新作映画について登場人物の心理や英米文化事情と共に真魚八重子さんが解説します。

今月の1本

『また、あなたとブッククラブで』(原題:Book Club)をご紹介します。

※動画が見られない場合はYouTubeページでご覧ください。

40年連れ添った夫を亡くしたダイアン、恋愛感情なしでの複数の男性たちとの関係を楽しんでいるビビアン、いまだに何十年も前の離婚に苦しんでいるシャロン、35年を経た結婚生活の危機に直面しているキャロル。長年の友人である4人は、それぞれのライフキャリアを築き、悩みを抱えながらも、読書にいそしむ「ブッククラブ」で交流を続けていた。あるとき、お題本に選ばれたのは官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』。それに感化され、恋にロマンスに気持ちも行動も大胆になっていく4人だが……。

アラシックスたちの人生の第2章

60代は人生の大きな転機が訪れる時期だ。仕事は定年退職を迎え、これまでと日々の送り方が激変する。本人だけでなく、当然その伴侶の生活習慣にも影響が出るだろう。老化が原因の体調不良も容赦がないし、子どもがいれば結婚したり孫が生まれたりするなどの変化も起こる。

本作は境遇の異なる4人の女性たちが、それぞれ人生の第2章をどのように送るかで戸惑う物語だ。40年連れ添った夫を亡くしたり、離婚した夫がうら若い女性と再婚してショックを受けたりといった悲しみもあれば、昔の恋人との再会や新たな出会いにときめいたりもする。また、夫とのパートナーシップを取り戻そうと思っても、昔は知らなかったED(勃起不全)によって関係がぎくしゃくするような出来事も起こる。

60代は、独りで過ごすにしては、まだまだ先が長い年齢だ。ずっと「お独りさま」だったり、熟年離婚したりするかもしれないが、60代で独り身でも女として枯れたわけではない。出会いによる胸の高鳴りやセックスの楽しみを失うのを惜しんでもおかしくない。「年がいもなく」というのは個々人が倫理で判断することであり、自分が納得しているなら自由に振る舞っていいはずだ。

4人は若い頃からの親友であり、現在も読書クラブを定期的に行っている。同じ本を読むことでつながる、知的で優雅な関係はうらやましい。日本だとカルチャーセンターなどになってしまいそうだが、海外の映画では、カフェや自宅に集まる読書クラブが時折出てきて、文化の成熟ぶりに憧れを感じる。本作では4人が普段の真面目な文学のセレクトと違い、ちょっとした悪ふざけをするように、E・L・ジェイムズのベストセラー恋愛官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2011)をお題にする。それがなかなか刺激的な内容で、彼女たちに思いがけず肉体の喜びを思い起こさせる。それぞれの女性の顛末は、現実の苦しみから脱したロマンス小説のようなハッピーさがあって、幸せな気分で見終わることができる映画だ。

『また、あなたとブッククラブで』(原題:Book Club)

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Cast & Staff

監督・脚本:ビル・ホルダーマン/出演:ダイアン・キートン、ジェーン・フォンダ、キャンディス・バーゲン、メアリー・スティーンバージェンほか/12月18日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国順次公開/配給:キノフィルムズ

bookclub-movie.jp

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年1月号に掲載した記事を再編集したものです。

真魚八重子(まな・やえこ)映画著述業。『映画秘宝』、朝日新聞の映画欄、文春オンライン等で執筆中。著書『映画系女子がゆく!』(青弓社)、『映画なしでは生きられない』『バッドエンドの誘惑』(共に洋泉社)も絶賛発売中。