さまざまな分野で活躍する方々に「学び」の体験をうかがうインタビュー「伝えるということ」。前回に 引き続き 、お笑い芸人の川村エミコさんにご登場いただき、芸人生活の苦労と喜び、ダイエット成功の秘訣から英語学習のことまでをお話しいただきます。
目次
川村エミコ(かわむら えみこ)
お笑いコンビ「たんぽぽ」のメンバー。2010年10月にフジテレビ系列の番組『めちゃ×2イケてるッ!』のレギュラーメンバーに選ばれてブレーク。コンビ、ソロでテレビなどで活躍中。
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挫折から始まったお笑い人生
大学4年のときに受けた「ホリプロお笑いジェンヌ」のオーディションでしたが、そのときは持ちネタなんかまったくありませんでした。ただ、分からないながらも、芸人さん=明るくなきゃいけないとは思っていて、「こけしこ、こけしこ、こここここー。自称こけしちゃんこと、川村エミコでございやんす!」みたいな、ほんと、まじで全然受けないネタを披露して(笑)。そのときは来るものは拒まずという感じで、採用されました。
でも、毎週ネタ見せをしなくてはいけなくて、みんなどんどんやめていきました。最初は30組くらいいたんですけど、毎週ネタを作って来れなくなって、最後、金魚ばちさんというコンビと私だけが残ったんです。ネタは毎週、頑張って作っていました。ネタを書いたノートを投げつけられたりしながら・・・。あ、これはカットでお願いします(笑)。
とにかく挫折からのスタートでした。初めてピンで舞台に立ったときは、私だけダメ出しが「声が小さい」だったんです。他に何もない。そこでも声が小さいことがネックだったんです。演劇も通ってきていたのに、緊張して素の部分が出たんだと思います。いや、これはいかんと思って、ホリプロに入りながらサモ・アリナンズという劇団のワークショップに通い始めました。声の出し方とか、体の動かし方とかを学びました。
最初は、演劇とお笑いのお客さんの違いに戸惑っていました。演劇は「どういうお話かしら?」と見てくれるんですけど、お笑いって舞台に出たとたんに「いつ笑わせてくれるんだ」という殺気を感じるんです。本当に挫折からのスタートで、今もそれで悩み続けている、という感じです。同じネタでもその日の天気によって受けたり受けなかったり、分からないことだらけで、本当に難しいです。
私の笑いの基本は、自分をさらけ出すこと
笑いについては、本能でやっているタイプなので今でもよく分かっていませんが、お笑い=明るくないといけないと思って「こけしこ、こけしこ」ってやっていたころは、まったくウケませんでした。
でも、ある日、いつも思っていたことを言ったんです。「二十歳になればきれいになれると思ってた」って。そうしたら、めちゃくちゃウケたんです。あ、普段思っていることでいいんだ、と。わざわざキャラを無理して作ることないんだ、と思ったら、何か一つトビラを抜けた気がしました。
それで、いつも思っていること、普段やっていることをやろうと思って、私は死んでるという設定で、着物を着て「ドロンドロン」って言って、今まで虐げられたエピソードを言って復讐するっていうネタをやったんです。あいつめー、って。普段思っていたことを全部吐き出す感じでした。デトックスみたいなものです。それが、私が精神的な病にかからなかった理由でもあったと思うんですけど、すごくスッキリしました。なんだ、普段思っていることを言えばいいんだ、と。
普段思っていることを大勢の前で言うことに関しては、まったく抵抗を感じませんでした。そこが少し人と違っていて、何かネジが外れているんでしょうね。だから、すごくスッキリしたんです。同級生だったカナコめ――もちろん、名前は変えていますけど、聞いてもいないのに彼氏の自慢しやがって、とか。思い出というか、自分の虐げられたエピソードを浄化させていくネタでした。ある意味、お焚き上げ(※1)ですね。ありがとうございました~、ありがとうございました~、って供養する感じでネタを作っていました。
そういえば、連絡先を交換するって、悩み無用みたいな消費者相談センターのメアドを教えられたこともありました。それも、あいつめーっと全部ネタにして浄化です。ネタと言うより、私の日記を紹介していく感じですね。喋っていなかった分、思っていたことがいっぱいあったんだと思います。
こういうネタが、私の風貌に合っていたというのもあると思います。そういうことされていそう、とか。根の部分ではすごい暗いんですけど、ポジティブな部分もないとお笑いなんてできないと思うんですけど、根っこにある虐げられたエピソードとかが、芸人になってほんとに良かった、救われたって思いました。
全部オープンで嘘がない芸人たち
人生のターニングポイントは、何と言っても『めちゃ×2イケてるッ!(※2) 』に、新メンバーオーディションで入れていただいたことです。人生を変えていただいてありがとうございます。 感謝しています。
お笑いをやるときと違って、テレビの仕事ではキャバ嬢のつもりでいます――あ、これもカットでお願いします(笑)。その日しか会わない人もいるので、銀座で一番売れているキャバ嬢だと思って、とにかくあいさつをちゃんとしなきゃとか、嫌な印象で終わらせちゃいけないと思って、「おはようございます、おはようございます」と、まず、あいさつは明るく気持ちよく。
芸人になって良かったと思うのは、周囲が違うことは違うと言うし、全部オープンで嘘がないことです。中学のころはネガティブに妄想することばかりでした。先生におはようと言われても、おはようの後にかっこで(ブスのくせに)って付いているんだ、とか。親戚のおばちゃんに「えみちゃんかわいいよ」と言われて、(全然可愛くないだろ)って思っていたり。
でも、芸人になったら、私がアパ社長に似ているとか、全部オープンで嘘がない。本当のことを言ってくれる。で、それが笑いになって、みんながハッピーになる。なんて素敵なんだと思いました。私自身、おべっかみたいなのが苦手だったから、芸人さんて優しいな、なって良かったなと思いました。
「めちゃイケ」さんにはすごく感謝しています。それまでは、風呂なしアパートに住んでいました。白金(※3)だったので「シロガネーゼ」じゃなく「フロガネーゼ」って呼んでいたんですけど、そこからユニットバス付きアパートに移ることができました。生活用品に困らなくなりました。
「フロガネーゼ」のときは洗濯機をお風呂代わりにしてたんですよ。洗濯機、電気を止めていても回っちゃうんです。大変です。水しか出ないし、めっちゃ困っていました。ああ、やりにくいよぉ、って。
冬は寒いから、目黒の駅前にあった漫画喫茶に行ってシャワーを借りていました。また、おかっぱシャワーが来た、おかっぱシャワーが来たって、あだ名を付けられるほどでした。何も言わなくてもシャワーセットを渡されるくらい常連さんでした。
基本料金が200円、シャワー料金が300円。10分を過ぎると料金が加算されるから、10分で入る癖が付きました。シャワーを出しながらシャンプーやってリンスやって、体を洗って乾かして着るまで、トータル10分。だから、今でも早いんです。その癖が抜けなくて、今はゆっくり入れるのにカラスの行水になって困っちゃうんです。
銭湯は当時450円か460円で、そっちの方が安いんですけど、漫喫は飲み放題が付いていたので、そっちに行っていました。めっちゃ飲んで、腹を満たすんです。
「楽しいご飯は太らない」がダイエット成功の秘訣
ダイエットに成功したのは、もう7年前ですけど、成功の秘訣は「自分を追い込まない」です。長く続けるには、あれやんなきゃとか、決めごとを作らないようにしていました。これやんなきゃ、あれやんなきゃというのを決めると、私はいろいろなことを気にするんでダメなんです。
ラインとかも、メッセージを返していないと気になっちゃうタイプです。だから、今日はあれができないなとか、仕事の都合でやっぱり無理だとかあるじゃないですか。だから、やることを全部決めると、それに押しつぶされちゃうんです。だから大きい目標、例えば2週間単位でこれをやろうとか、2週間で何キロやせようとか。
ダイエットのときは5カ月半で14.7キロやせたんですけど、1カ月に3キロと決めて、できることを努力していくということで継続できたんです。昨日食べちゃったから、今日は食べないとか。
ダイエットって、続けていくと自分の体のことが分かってきます。自分を知ることも大事なのかなと思います。私はこれをたべていくら太るんだとか、あれを食べるとこれくらいやせるんだとか、これ食べても大丈夫なんだ、とか。たぶん、人によって、そのさじ加減は違うでしょうから、いろいろ紹介されているダイエット法の中から、自分はこれがすごく心地よくできるっていうのを見つけるのが大事ですね。
私はフラフープとかが好きだから、「ウエストつくるぜ」って朝起きたらフラフープをやるとか、朝起きて深呼吸を3回するとか。決め事にしていたこと、毎日やると決めていたちょっとはしたことはあります。でも、無理なく、必ずできるようなことだけです。それ以外は焼き肉を食べに行くのは月1回というルールもありました。
あとは「ポジティブに考える」ことも大事。運動するのはきついけれど、運動は「運を動かす」と考えるようにしていました。運動したら、絶対いいことがある。そんなポジティブな考え方を一つ入れると、とてもがんばれますよ。
そうそう、キックボクシングとかパンチするときとかは、嫌な人を思い浮かべてやるとすごくストレス発散になります。あいつー、とか(笑)。それはともかく、楽しみを自分で見つけてやるのがいいと思います。追い込むと辛くなります。
ダイエットの場合、女子は無意識に足を引っ張るんです。ダイエットしているって聞くと、「大丈夫?そんなに食べて?」と言ってくるし、食べなければ食べないで、「え、体しんぱーい」とか言ってくるんです。無意識なんです、女子は。そういうことに影響されないためにも、いろいろな方法を試して、私、これだったら行ける、というのを見つける。そして、自分の中に日々のルーティンを作る。
私が見つけたのは「楽しいご飯は太らない」ということ。「え、太っちゃう」と思うと本当に太っちゃう。私が精神的に弱っちいからかもしれませんが、だから、食べるときはあまり気にせず、食べよう!と。そうすると、翌朝に体重を計っても全然変わっていなかったりとか。面白いですよね。
私にとって英語はずっと「憧れ」です
自分のことを知るというのは、すごくいいと思います。きっと英語も同じでしょうね。この人の曲だったら覚えやすいから、この曲で英語を覚える。そんな感じだと英語が頭に入って来やすいでしょうし。映画の『タイタニック』が好きだから、このシーンを繰り返し見て、せりふや言い回しを覚える、というのもいいと思います。
英語はいろんな人と話をするための手段の一つじゃないですか。たくさんの人と知り合うために英語をやっているんだと、運動は「運を動かす」っていうのと同じに前向きに考えられたらいいですよね。「この単語を一つ覚えたらから、また、話ができる人が一人増えた」とか、ポイント制で考えてみたりするのも面白いですよね。
とにかく、長く続けるためには、自分を追い詰めないほうがいい。これに限ります。
私にとって英語はずっと憧れです。昔、横須賀の方に住んでいました。米軍の人たちが街にいっぱいいて、声をかけられたりしていました。近くに英語はあるけど話せないみたいな感じでした。クラスとかで、英語が得意な子は、米軍基地でバイト募集があると行ったりして、飛び込んで英語を学びに行ったりしていました。でも、私にはできなかったから、英語はずっと憧れです。
言葉は違っても気持ちは通じる
大学に入ったときに、海外に行ったことがないから、一度は行ってみようと思ってアメリカを旅行したことがあります。2週間くらいの一人旅でした。現地でイギリスの会社がやっているツアーに参加したんです。バンで西海岸、ヨセミテ、グランドキャニオン、ラスベガスと回ってLAに戻ってくるツアーでしたが、それがホテル集合だったんです。でも、ホテルに辿り着くのも大変で、ロスの空港を出るのに3時間もかかった。バス停を探してぐるぐるさまよいました。
そのツアーでは、いろんな国の人がバンに乗っていました。カナダ人、フランス人、オーストラリア人、スウェーデン人、ドイツ人。基本は英語しか話しちゃいけないというルールで、キャンプとかをしながら旅して回るんです。
カレーの当番なんかもあったんですけど、参加者の一人がベジタリアンで、私がカレー当番だったときに、野菜カレーを作ってほしいようなことを言ってきたことがありました。作った後になって、私は食べられないとか言い出して。「そんなの先に言ってくれなきゃ無理だ」と、私が怒っているのが通じたんです。英語じゃなくて普通に日本語で言ったんですけど。
日本語って尊敬語とか謙譲語とかあるから、上の人とか話を聞くと分かるじゃないですか。だから、英語の場合はどうやって立場とかが分かるんだろうとか、不思議に思っていたんですけど、やっぱり分かるんですよ。イラつく話し方していればイラつくし、優しい人は優しいし、相手に通じる同じ言葉に変換しなくても、気持ちって伝わるんだなと、アメリカに行って学びました。
で、今も別に話せるわけではないですけど、英語には果敢に攻めていきたい、関わりたいという気持ちはいつも持っています。
最後になりますが、今年の10月に私が出演する舞台が始まります。ぜひ、そちらをよろしくお願いします。タイムスリップする夫婦の話。手に届く範囲の人を大事にしようという、ほっこりする話です。ぜひ、皆さんに見に来ていただきたいです。
川村エミコさん出演情報
俳優で脚本家、演出家の宅間孝行氏が主宰する演劇プロジェクト「タクフェス」。その第7弾として今年10月より全国で上演される『流れ星』。1970年代の古き良き日本を描く本作に、川村エミコさんが出演します。下のウェブサイトで、ぜひ詳細をご確認ください。
takufes.jp取材・写真・構成:山本高裕(GOTCHA!編集部)
(※1)大切な人の遺品などを、供養として神社や寺で焼いてもらうこと
(※2)フジテレビ系列で2018年3月まで放送されたバラエティー番組
(※3)東京都港区の地名。高級住宅地エリアを含む
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
- スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
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