リスニング力を劇的に上げる「シャドーイング」完全ガイド

英語の「聞く力(Listening)」を伸ばしたい人にとって、シャドーイングは非常に有効なトレーニング法です。ただ、「何となく音を追うだけ」では効果が出にくく、正しい方法と継続のコツがカギになります。本記事では、シャドーイングとは何か、その効果・メリット、やり方のステップ、失敗しやすい点とその改善策、教材・アプリの活用法、そして継続の秘訣まで、初心者でも実践できるよう具体的に解説します。

1. シャドーイングとは何か

「シャドーイング(shadowing)」は、英文の音声を聞き、それに続くように“すぐ後で”発話する学習法です。聞こえた英文を “影(shadow)のように”追いかける──この「追いかける」タイミングがポイントで、音のつながりやリズム、イントネーションも含め、聞こえた音をそのまま口に出すことが求められます。

似た学習法に「音読」「リピーティング」がありますが、音読はテキストを見て自分のペースで読むもの、リピーティングは音声を聞いてからその音声を繰り返すもの(間にタイムラグあり)です。シャドーイングは、聞こえた直後に追うことで、よりリスニングと発話のスピードのギャップを埋めることができます。

2. シャドーイングがリスニング力に効く理由・効果

シャドーイングを正しく行うと、次のような効果が期待できます:

音・つながり・音声変化(リエゾン、リダクションなど)に慣れる

英語は音が滑らかにつながることが多く、日本語話者が苦手とする「弱く発話される音/聞き取りにくい音」が含まれています。シャドーイングではそれらを意識的に追うことになるので、自然な発話の“線”を耳でつかめるようになります。

プロソディ(リズム・アクセント・抑揚)の習得

英語らしい間の取り方、語尾の上げ下げ、強弱のつけ方など、ただ単に語彙や文法がわかるだけでなく、「話し方」の感覚を体で覚えることができます。

発音・スピーキング力の向上

聞く→即口に出すというプロセスは、口・舌・リスニングの協調性を高めます。声に出すことで、自分の発音のクセや弱い部分に気づきやすくなります。

語彙力・文法理解の強化

意味の通る音声を追いかける過程で、知らない単語や文法構造に出会ったら立ち止まって確認することが多くなります。この反復が、語彙の定着や文法感覚の鋭さにつながります。

集中力とリスニング姿勢の改善

 「ただ聞き流す」のではなく、聞こえてきた内容を認識し、自分で口に出すという“能動的”な聞き方になるため、聞き落とし・気の散りが減ります。

3. シャドーイングと他の学習法の比較

英語の学習には音読やリピーティング、聞き流しなどさまざまな方法がありますが、リスニング力を効率的に伸ばしたいならシャドーイングが優れています。

  • 音読:語彙や文法理解には有効だが、スピード対応は難しい。
  • リピーティング:発音練習にはなるが、処理の即時性は鍛えにくい。
  • 聞き流し:気軽だが、理解や発話力の向上は期待しにくい。

まず音読は、テキストを声に出して読むことで語彙や文法の理解を深めやすい一方、どうしても自分のペースで読んでしまうため、実際の英語の速さに対応する力はつきにくいという弱点があります。リピーティングは、音声を一度聞いてから繰り返す方法で、発音練習にはなりますが、聞いてから発話までの間があるため、リアルタイムで英語を処理する力は十分に鍛えられません。

また「聞き流し」は気軽に取り組める一方で、内容を理解しようとする意識が薄くなりがちで、リスニング力や発話力の向上にはつながりにくい学習法です。

その点シャドーイングは、聞いた直後に声に出すため、リスニングとスピーキングを同時に鍛えられるのが大きな特長です。音の変化やイントネーションを自然に身につけられるうえ、英語のスピードにも慣れることができます。つまり、他の学習法に比べて「実際の会話に直結する力」を効率的に育てられる学習法だといえるでしょう。

4. 正しいシャドーイングのやり方:ステップごとに

シャドーイングは、正しい手順で行うことで効果が大きく変わります。いきなり難しい音声を追いかけても挫折してしまうので、段階を踏むことが大切です。

1.教材選び:7〜8割理解できる音声を選ぶ。
2.リスニング:数回聞くだけで全体の流れをつかむ。
3.スクリプト確認:知らない単語や表現をチェック。
4.音読練習:意味を理解しながら声に出す。
5.オーバーラッピング:スクリプトを見ながら音声と同時に発話。
6.シャドーイング:音声を聞き、直後に追いかけて発話。録音して振り返ると効果大。

まずは自分に合った教材選びから始めましょう。スクリプトを見たときに7~8割理解できるレベルが目安です。難しすぎる教材を選ぶと意味が取れず、ただ音をなぞるだけになってしまいます。

次に、音声を数回「聞くだけ」で内容の流れをつかみます。その後、スクリプトを見ながら聞いて、不明な単語や表現を確認しましょう。意味を理解したうえで、声に出して音読することで口の筋肉も慣れてきます。

慣れてきたら、音声と同時に声を出す「オーバーラッピング」に進みます。スクリプトを見ながら音声と重ねて発話することで、リズムや発音の違いに気づきやすくなります。最後のステップが「シャドーイング」です。音声を聞いてすぐ、その後を追うように発話します。録音して自分の声を聞き返すと、お手本との差がわかりやすく、効果的な振り返りができます。

5. よくある失敗パターンとその対策

シャドーイングは効果的な学習法ですが、やり方を間違えると「思ったほど伸びない」と感じてしまうこともあります。

よくある失敗の一つは、レベルが合わない教材を使うことです。内容が難しすぎると意味が取れず、ただ口を動かすだけになってしまいます。理解できるレベルの音源に戻して、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。

また、スクリプトを確認せずにひたすら音声を追うのも失敗の原因です。意味を理解しないまま音をなぞっても、リスニング力は伸びません。まずはスクリプトで内容を確認し、その後にスクリプトなしで練習するのが効果的です。

さらに、長時間続けすぎて疲れてしまうのもよくあるパターンです。集中力が切れると効果も半減します。1回15〜30分を目安に、短時間で頻度を増やすほうが継続しやすいでしょう。

そして、自分の声を録音せずに練習を続けるのももったいない習慣です。お手本と比べなければ、自分の弱点には気づけません。録音や発音評価機能を活用して、改善ポイントを確認しましょう。

6. 継続するコツ・モチベーション維持法

シャドーイングは一度やっただけでは効果が見えにくく、継続が欠かせません。

続けるためのコツは「習慣化」です。朝の支度中や通勤中など、毎日決まった時間に取り組むと習慣として定着します。また、「1週間でこの教材を仕上げる」「1か月でこのニュース音声を追えるようになる」といった小さな目標を設定すると達成感を得やすく、モチベーションが保てます。

録音した音声を聞き返して自分の成長を確認することも効果的です。1か月前と今を比べると、発音の滑らかさやリズム感の違いが分かり、自信につながります。さらに、学習仲間や講師にフィードバックをもらうのも良い方法です。他者の目を通すことで、自分では気づけない改善点に気づけます。

7. 教材・アプリの選び方とおすすめ

効果的にシャドーイングをするためには、教材選びも重要です。

初心者の方は、スクリプトと日本語訳がセットになっている教材がおすすめです。内容を理解しながら進められるので挫折しにくくなります。また、音声の速度を調整できる教材やアプリを選ぶと、段階的にステップアップできます。

題材としては、TOEICのリスニング問題や英語ニュース、TEDトークなどが定番です。ビジネス英語を鍛えたい人は会議やプレゼンを題材にした教材を選ぶと実践につながります。

最近はアプリを使ったシャドーイングも人気です。アルクの「 booco 」には、600以上の教材と音声が収録されており、スクリプト表示や録音・発音評価の機能も備わっています。アプリなら通勤や休憩時間などのスキマ時間を活用できるので、忙しい社会人にも続けやすいのが魅力です。


8. まとめ

シャドーイングは、ただ「聞く」だけでもなくただ「話す」だけでもない、リスニングとスピーキング双方を鍛える、非常に実践的で総合的な英語学習法です。効果を最大限引き出すためには、適切なレベルの素材を選び、スクリプトや日本語訳を活用しながら意味を理解し、録音やオーバーラッピングなどで自分の発音とリズムを客観的にチェックすること、多くの反復と継続が必要です。

まずは「今週から15分/日」のシャドーイングからスタートしてみてください。慣れてきたら素材を変える、速度を上げる、発音チェックを強化する、など小さなチャレンジを重ねることで、リスニング力は確実に飛躍します。


ENGLISH JOURNAL編集部
ENGLISH JOURNAL編集部

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