ちょっと気になる英単語を毎回ピックアップしてお届けします。今回取り上げるのはAI slop。生成AIについての記事やSNSを見ていると、最近よく目にするようになった表現です。AIはもちろんartificial intelligence(人工知能)のこと。では、slopとはいったい何なのでしょうか?
AI slopってどんな意味?
AI slopとは、生成AIによって作られた、質の低いコンテンツを批判的に指す表現です。画像や動画だけでなく、文章などに対しても使われます。
Cambridge Dictionaryでは、AI slopを次のように説明しています。
digital content (= images, video, etc.) of low quality created by artificial intelligence
(人工知能によって作られた、質の低いデジタルコンテンツ)
出典:AI slop, Cambridge Dictionary
ポイントは、AIが作ったコンテンツなら何でもAI slopになるわけではないということです。
slopには、「質が低い」「雑に作られている」といった否定的な評価が含まれています。特に、生成AIを使って大量に作られた画像や動画、文章などに対して使われることが多い表現です。
なぜ今、AI slopをよく見かける?
生成AIの普及によって、文章や画像、動画を短時間で大量に作れるようになりました。それに伴い、SNSやウェブサイトなどでは、AIによって生成されたコンテンツを目にする機会も増えています。
そんな状況を背景に広がったのが、AI slopという言葉です。
2025年には、オーストラリアのMacquarie DictionaryがAI slopを「Word of the Year(今年の言葉)」に選びました。
選考委員会は、AI slopについて次のように述べています。
We understand now in 2025 what we mean by slop — AI generated slop, which lacks meaningful content or use.
(2025年の今、slopが何を意味するのか、私たちは分かるようになりました。つまり、意味のある内容や有用性を欠いた、AIによって生成されたslopのことです)
さらに、次のようにも述べています。
Slop in this sense will be a robust addition to English for years to come.
(この意味でのslopは、今後何年にもわたって英語に定着していく語になるでしょう)
Macquarie Dictionaryは、AIそのものが新しいわけではない一方、この1年で私たちの生活に直接影響を与え、社会的な議論の大きなテーマになったことも選考理由として挙げています。
出典:Macquarie Dictionary Word of the Year 2025, Macquarie Dictionary
AI slopという表現は、SNSやウェブメディアの中だけで使われているわけではありません。
2026年9月には、アメリカ・フロリダ州の控訴裁判所が判決文の中で、弁護士が提出した書面について「AI slopと思われるもの」と表現しました。裁判所は、その書面について、長く焦点が定まっていないうえ、意味をなさない部分や、複雑で根拠に乏しい主張が含まれていると厳しく批判しています。
興味深いのは、裁判所がここでいうAI slopについて、「AIによるhallucination(ハルシネーション)で生じた架空の法律情報や、誤った法的引用とは関係ない」と明記している点です。
The AI slop problem we address here has nothing to do with hallucinated law or false legal citations.
(ここで問題としているAI slopは、AIによるハルシネーションで生じた法律情報や、誤った法的引用とは関係ありません)
実際、この件では引用された判例そのものは実在していました。問題視されたのは、書面が長く焦点を欠き、意味をなさない部分や、複雑で根拠に乏しい主張を含んでいたことです。
つまり、AI slopは「AIが事実ではない情報を作り出すこと」そのものを指すのではなく、AIを使って作られたコンテンツの質や有用性の低さを批判する表現だと分かります。
参考:Lisandrillo v. Palozzi, No. 4D2026-2262, District Court of Appeal of the State of Florida, Fourth District
slopはもともとどんな言葉?
では、slopとはもともと何を意味するのでしょうか。
Oxford Advanced Learner’s Dictionaryでは、名詞のslopの意味として、まず「廃棄される食べ物」を挙げています。家畜の餌にされることもある、食べ残しや残飯のようなものです。
出典:slop noun, Oxford Advanced Learner’s Dictionary
Cambridge Dictionaryにも、液状・半液状の食べ物の残りや、見た目や状態が悪く食欲をそそらない食べ物、といった意味が載っています。
つまり、もともとあまりありがたくないものを指す言葉だったわけです。
そこから転じて、インターネット上に大量に流れてくる低品質なコンテンツをslopと呼ぶようになりました。Cambridge Dictionaryでは現在、slopそのものにも「インターネット上の非常に質の低いコンテンツ、特にAIによって作られたもの」という意味が掲載されています。
出典:SLOP | English meaning, Cambridge Dictionary
言ってみれば、価値のある情報や作品というより、次々と流し込まれてくる「デジタルな残り物」のように捉える、かなり辛辣な表現です。
日本語に訳すとしたら?
AI slopには、今のところ日本語で定着した一つの訳語があるわけではありません。文脈によって、
- AIが作った低品質なコンテンツ
- AIによる粗製コンテンツ
- AIで大量生産された粗悪なコンテンツ
- 低品質なAI生成物
などと訳すことができそうです。
例えば、次のように使われます。
- My social media feed is full of AI slop these days.
最近、私のSNSのフィードは低品質なAI生成コンテンツだらけだ。 - The site is flooded with AI slop.
そのサイトには、AIで大量生成された粗悪なコンテンツがあふれている。
ただし、単に「AI生成コンテンツ」と訳してしまうと、slopが持つ批判的なニュアンスがなくなってしまいます。
AI slopという言葉には、「AIで作られた」というだけでなく、「雑に作られた」「質より量を優先して大量に流されている」といった話し手の否定的な評価が込められています。
AIを使えば、以前とは比べものにならないほど簡単にコンテンツを作れる時代になりました。その便利さの裏側で、私たちは何を「価値のあるコンテンツ」と感じるのか――。AI slopという少々手厳しい言葉が広がっていること自体、生成AI時代の一つの側面を映しているのかもしれません。
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