ちょっと気になる英単語を毎回ピックアップしてお届けします。今回取り上げるのは「emotional labor」。emotional(感情の)とlabor(労働)という、どちらもおなじみの単語から成る表現ですが、実際の意味は直感と少しズレているかもしれません。
単語は知っているのに、意味は想像と違う
emotional laborを直訳すると「感情の労働」。
そう聞くと、「感情を込めて働くこと?」「やりがいのある仕事?」といった意味を思い浮かべるかもしれません。しかし、この言葉が指しているのは、そうした前向きな行為ではありません。
emotional labor
実際には、「自分の感情を抑えたり、相手の感情に配慮したりすること」を表します。こういったことを求められるのが、心理的に大きな負担となるため、問題視されているのです。
なぜこれが“labor(労働)”なのか?
emotional laborという概念が生まれた背景には、「これまでそういったことが 努力や気遣いとして片付けられがちだった」という事情があります。
例えば、
- 常に感じよく振る舞う
- 場の空気を壊さないよう気を遣う
- 相手の不機嫌を先回りしてフォローする
こうした行為は「優しさ」や「思いやり」として、当然のように求められる一方で、繰り返すことで確実に精神的な消耗につながります。そこで、感情労働という概念がクローズアップされるようになりました。
emotional labor の典型的な場面
仕事でも、プライベートでも、この言葉は使われます。
She does most of the emotional labor at home.
(家庭内の感情面の負担を、彼女がほぼ担っている)
※家族の機嫌を気にしたり、空気を和ませたり、感情のケア役を一手に引き受けている、という意味合い。I’m exhausted from all the emotional labor at work.
(職場での感情労働に疲れ切っている)
※常に感じよく振る舞い、相手の気分や場の雰囲気に配慮し続けることで、精神的に消耗している状態を表している。
ポイントは、「感情がある」ことではなく、本音とは別の感情を演じたり、相手に合わせて感情を調整し続けたりすることが負担になっている、という点です。
日本語に訳すとしたら?
日本語ではぴったり一語に置き換えるのが難しく、
- 感情労働
- 感情面のケアの負担
- 見えない気遣いの仕事
などと表現するのが適切でしょう。
気遣いや配慮は、社会人・大人として当然求められる行為ですが、あえて“労働”として捉え直す――emotional labor は、そんな視点の転換を促す言葉でもあります。
「なんだか疲れる理由が、ようやく言葉になった気がする」。この表現に触れて、そう感じる人も少なくないかもしれません。
