気候変動、紛争、経済格差や不況、AIの脅威・・・。世界各地でさまざまな物事・問題が生まれたり、渦巻いたりしています。答えや正しいことが分かりづらく、先の見えない世界の「これから」を自分自身で理解し考えていくため、最新の英語キーワードとその背景に触れてみませんか?
目次
世界の「いま」と「これから」を考えるヒント
flight shame(飛び恥)、shrinkflation(シュリンクフレーション)、quiet quitting(静かな退職)――これらの言葉を聞いたことがありますか?また、意味をご存じでしょうか。いずれも、いま世界で起きている・注目されている文化や概念、あるいは物事・出来事を表しています。
紛争・戦争、気候変動に経済格差など、常にさまざまな問題が存在する現代。自分の生活や未来はどうなるのか、今自分は何をすべきか、答えが欲しくても正解を見つけにくい、あるいは正解がない時代と言えるかもしれません。
そんな日々にそっとヒントを与えてくれるのが、書籍『世界をちょっとよくするために知っておきたい英語100』です(以下、『せかよく』)。著者は、キニマンス塚本ニキさん。
私たちを取り巻く5つのテーマでキーワードを知る
『せかよく』は、
- ENVIRONMENT(環境)
- POLITICS / ECONOMY(政治・経済)
- CULTURE / SOCIETY(文化・社会)
- HEALTH / WELLNESS(健康・ウェルネス)
- TECHNOLOGY(テクノロジー)
この5つのテーマごとに、最新の英語のキーワードとその背景を解説しています。
著者のニキさんは、ラジオパーソナリティであり、また、英語通訳・翻訳者、そして報道番組のコメンテーターとしても活躍中。ニキさん自身がもともと、国内外の社会問題に幅広く関心を持っていたといいます。
そんなニキさんが、「まだ日本ではあまり知られいてない」「日本語に訳し切れていない」最新のキーワードを分かりやすく解説。また、そのキーワードに対するニキさんのコメント(Nikki's opinion)も付いているので、より理解が深まったり、「自分だったらどうするだろう?」と考えるきっかけになります。
「flight shame」って何のこと?
例えば、冒頭で挙げた「flight shame(飛び恥)」という英語。これは、
【飛び恥】
地球温暖化への寄与の約4%を占めると言われるほどCO2排出量の多い飛行機移動に対するためらいや恥。2017年頃、スウェーデンで活発な議論が起こり、ヨーロッパでは国内線の利用者が著しく減った。
という、環境に関連する最新キーワードだと説明されています。そして、ニキさんのコメントはコチラ。
《Nikki's opinion》
鉄道や船でも行ける近距離での飛行機移動に批判が集まり、ヨーロッパを中心に影響が広まっています。一方で、航空会社もより持続可能な業界を目指すべく、廃食油燃料でカーボンオフセットを実践するなど努力を続けています。例えば東京から福岡まで移動する場合、時間、料金、環境負荷…あなたなら何を基準に選ぶ?
世界の出来事を“自分事”に
説明とニキさんのコメントを読むことで、意味(日本語訳)はもちろん、その言葉がどこで、あるいはどういう背景から誕生したのかを掴むことができますよね。そして、その問題に対して世界でどんな動きが起きているのかも分かります。さらに、「私なら飛行機と電車、どっちで行くだろう」と、“他人事ではなく自分事”として考えられるようになるのではないでしょうか。
上図はページの一例です。各キーワードにはポップなイラスト付きで、無理なく自分のペースで一つずつ学んでいくことができますよ。ニキさんをデフォルメした女の子もかわいい!いろんな表情やポーズがあるので、実際に手に取ってお楽しみください。(イラスト担当:サトウリョウタロウさん)
また、その言葉を使った例文と関連語句も収録。例文は現代社会に即した内容のものばかりですので、ぜひ声に出して練習してみましょう。
より深く聞く、さらに自分で考える
書籍の後半部分には、ニキさんと、アメリカや世界情勢に詳しいジャーナリスト・研究者の竹田ダニエルさんとのトークセッションが掲載されています。
登場した言葉が、実際の英語の会話でどのように使われたり捉えられたりしているのか、2人の発言を書き起こした英文や音声から学ぶことができますよ。
(音声は無料でダウンロードして再生いただけます。詳しい利用方法については、本書をご確認ください)
いくつ知ってる?『せかよく』収録のキーワード
では最後に、『せかよく』に実際に掲載されている注目のキーワードを、特別に5つご紹介します!ニキさん自身が読み上げた見出し語・例文・関連語句の音声もありますので、併せてご活用ください。
(各音声の冒頭に、書籍内で紐づけられた番号も読み上げられていますので、あらかじめご了承ください)
decoupling
【デカップリング】
「CO2排出と経済発展」「大国同士の経済や市場」など連動性の強い2つのものを切り離すこと。経済や金融をはじめ、エネルギーや環境問題にもこの用語が適用されている。
《Nikki's opinion》
産業革命以降、経済成長とエネルギー消費はセットで考えられていました。しかし、気候変動をはじめ、さまざまな環境問題が可視化された現在、化石燃料使用・温室効果ガス排出の削減は急務です。「脱炭素は経済を犠牲にする」というバイアスにとらわれず、長い間当たり前とされてきた考え方を変えてみれば、新しい可能性や解決策が見つかるかもしれませんね!
It's time to start decoupling economic growth from environmental exploitation for the sake of our future.
(今こそ私たちの未来のために経済成長と環境搾取のデカップリングを始める時だ。)
- ecological economics:生態経済学。経済的な成長と環境保全のバランスを考える学問。
- degrowth:脱成長。経済成長を抑制し、環境や社会の持続可能性を優先する考え方。
leapfrogging
【リープフロッグ現象】
基本的なインフラ整備が全体に行き届いていない新興国・途上国で、最新の技術やサービスが一般化すること。例えば、固定電話回線が整備されていない地域でスマートフォンが急速に普及するなど。
《Nikki's opinion》
先進国が段階的に踏んできたインフラ整備のプロセスを一気に飛ばして最新技術の導入が進むさまを「飛び跳ねるカエル」(leap = 跳ねる、frog = カエル)に例えています。例えばネットバンキング、IT教育、ドローン配達、プラットフォームビジネスなどにおいて、アフリカの新興諸国の「跳ねっぷり」は今、注目の的です。
Improved community development is expected in Sub-Saharan Africa as the regions leapfrog toward 5G networks.
(サブサハラ・アフリカ諸国で5G回線へのリープフロッグ現象が進むにつれ、地域開発の改善が期待されている。)
- emerging markets:新興市場。新興諸国(インド、中南米、東南アジアなど)の市場。
- microfinance:脱貧困支援を目的とした無担保の少額融資。
dupe
【デュープ】
高級ブランドに似ている比較的安価な代替品。語源はduplicate(そっくりなもの)と言われている。
《Nikki's opinion》
コピー商品とどう違うの?と疑問に思うかもしれませんが、デュープは高級品そっくりの模倣品ではなく「それっぽい」もの。ブランド品をステータスとは感じず、使い心地や見た目に満足できれば問題ない、というZ世代にとって、コスメや香水、バッグに靴など、パッと見がよくて安価なものの方が理にかなっているみたい?
My daughter really wants those designer shoes for her birthday. I'm sure she won't mind if I get her a dupe.
(娘が誕生日にあのブランドの靴をすごく欲しがってるんだけど…デュープを買ってあげてもおそらく問題ないよね。)
- design theft:デザインの盗用。ファストファッション大手が若手デザイナーに訴えられる事例が相次いでいる。
- tween:9~12歳の(主に女性の)消費者層を指す言葉。
sober curious
【ソバーキュリアス】
お酒は飲めるが、あえて飲まないか微量に控えるライフスタイル。soberは「しらふの状態の」、curiousは「好奇心が強い」の意味。健康や身体的パフォーマンスへの意識の高まりとともに、若者を中心に広がっている。
《Nikki's opinion》
お酒を飲まなくても楽しい時間を過ごせる人が増えています。私自身はお酒は嗜む程度に好きですが、周囲に流されてつい飲み過ぎてしまい、地獄のような頭痛で迎えた朝は数知れず…。お茶やジュースじゃ物足りない人でも満足できる喉ごしや味わいが楽しめるノンアル・微アルの新商品も続々出ているので、二日酔いや健康の心配をせずに楽しめそうですね!
I couldn’t imagine a weekend without alcohol, until a visit to the doctor pushed me to become sober curious.
(お酒を飲まずに週末を過ごすなんて考えられなかったけど、医者の診療を受けてからソバーキュリアスになると決めた。)
- peer pressure:ピアプレッシャー。同調圧力。
- accountability partner:目標を達成する前に脱落しないために伴奏してくれる人。
digital divide
【デジタルディバイド・デジタル情報格差】
インターネットなどの情報通信技術、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器を利用できる人とできない人との間で生じる格差。主に発展途上国に見られる問題だが、経済大国でもコロナ禍のオンライン学習で浮き彫りになった。
《Nikki's opinion》
少し前まではスマホやネットは「あると便利」なものだったけど、今ではもはや「ないと不便」な世の中に。そんな現在も、世界人口のおよそ3割(約26億人)が経済的困窮やインフラ不足などで安定したネット環境にアクセスできていないそうです。情報を得る機会の損失が教育や職業の選択肢に影響し、さらに格差を広げてしまわないよう、企業や国際機関の援助が必要です。
The digital divide puts students without access to personal computers or reliable internet at a great disadvantage.
(デジタル情報格差はパソコンや安定したネット接続を使用できない学生を非常に不利な立場に追いやる。)
- digital inclusion:全ての人がデジタルテクノロジーにアクセスできる状態。
- digital sweatshop:SNS投稿監視などの作業を低賃金で請け負う職場環境。