コロナ禍でエンタメ分野以外にも「VR」技術導入の機運が高まっています。VRなら、遠隔地にいる相手とでも、現実に会っているかのようなコミュニケーションが取れます。VR技術はこれから、英語学習にどのような変化をもたらすのでしょうか。VRスタートアップのImmerse Inc.に取材した内容を、前編・後編に分けてご紹介します。
「バーチャル・リアリティー(VR)なら、日本にいながらにして、あたかも海外にいるかのような没入感を得ることができます。ヘッドセットをかぶれば、日常から一時切り離されて、英語学習に集中できる環境へと入り込めるのです」。こう語るのは、Immerse Inc.の澤田和信さん。
大学などの教育機関や英会話教室向けに、VR技術を用いた英語学習プラットフォームを提供するImmerse Inc.は、今注目されているEdTech企業の一つです。2019年にVR英語レッスンサービスをローンチしてから、日本の教育機関へのVR導入サポートを 推進 してきました。
新型コロナウイルスの感染 拡大 によって、海外留学が難しくなり、また国内においても「3密」の回避が求められる今、バーチャル空間を活用した新たな英会話学習に期待が集まっています。 今後 、英会話学習の「ニューノーマル」はどのようになっていくのでしょうか。「英会話のこれから」について話を聞きました。
世界から注目される日本のVR市場
米フェイスブックは、昨年秋の「Oculus Quest 2」の発売に合わせて、日本をVR関連の「Tier 1=最優先市場」と位置付けています。
近年は「キズナアイ」など、日本発のVTuber文化がメディアでもしばしば取り上げられていますが、優秀なクリエイターが数多くいる日本のVR市場は、世界からも注目の的であり、 今後も さらに 拡大 を続けることが期待されています。
ところで、VR市場として注目を集めているのは、ゲームやアニメ分野だけに限りません。実は、最先端の 教育現場でも、VRデバイスの活用が模索されている のです。シミュレーションによって、いつでもどこでもリスクなしに練習が行えるVRは、英会話学習にも多大な好 影響 をもたらす 可能性がある と言われています。
「紙とペンを使った昔ながらの英語学習は集中力が持たなくて苦手だと感じている人に、VR学習は特におすすめです」と語る澤田さん。ヘッドセットを使用し、外部から遮断され、シミュレーションの世界へと 「没入」 することで、現実を気にすることなく英会話に集中できます。「英会話の能力を高めるには、恥ずかしがらずにどんどん話すことが重要だとは言われますが、現実だと周りの人の目を気にしたり、失敗を恐れて消極的になってしまいがちです。 とくに日本人は、シャイな性格が英会話への障壁となっていると言われますよね。しかし、 アバターを使って行うVR英会話なら、生徒と先生の顔が直接は見えません。 失敗しても恥ずかしいことはないので、どんな人でも英会話に積極的になれるはずです」
TOEIC高得点でも英語が話せない人に効果的
TOEICの点数を上げる努力をしているのに、英語がなかなか話せるようにならないという悩みを抱えている人にも、VR英会話はおススメです。
「知っているはずなのに、伝えようと思っているのに、言葉が出てこない」という状態に陥ってしまうのは、表現を知っているだけでそれを実際に使ったことがないからだと言えます。VRでのトレーニングは、リアルな日常生活にひもづいたシチュエーションで英語力を鍛える事できるので、 とっさに話したい英語を話す練習に効果的 だと言えます。
また、自分がどんな場面でなら英語で対応できるのか、 具体的に イメージできるようになるため、スコアで測るだけでは 把握 できなかった、自分の実践力を正しく知ることができます。
「テキストを使った従来の勉強法では、どうしてもフレーズの丸暗記のようになってしまい、実際にその英語を使用している場面を、リアルにイメージすることが難しいと思います。一方VRなら、生徒はバーチャル空間上で英語を使って何らかのミッションをクリアしていかなければならないので、 現実にかなり近い英語体験 が可能です」
Immerse Inc.が提供しているプラットフォームでは、英会話の練習を効果的に行うためのシチュエーションが アニメーションと360度パノラマ写真合わせて約80種類 用意されています。「カフェでの注文は余裕でできるけど、病院で診察を受けたり、車を購入するために英語で交渉したりすることはまだ難しい」など、 VRなら現実の場面に即して、自分の実践的な英語力を知り、苦手な部分を重点的に練習できます。
留学の「代わり」だけではないVRの魅力
実際にVR英会話学習を体験した人々からの反響について尋ねると、「英語を話す習慣がなかったので緊張したが、VRなら初めの一歩を踏み出す勇気が出た」といった感想など、苦手意識があった英語学習にも前向きになれたという意見が多く寄せられているといいます。
VRを使った英語学習というと、留学に近い環境で英語を学習できるという部分にまず目がいきがちですが、実はそれだけではなく、ゲームのように楽しめる部分もVRの大きな魅力の一つであり、「勉強」があまり好きではない人にとってはうれしい特徴です。
「VRで体験できるシチュエーションのなかには、 魔法学校のようなゲーム性が高い楽しい環境 も含まれています。『英語の勉強はつまらない』と感じていた人も、VRならではの機能で楽しみながら学習できます」
また、「英会話を本格的に学びたい」と思っても、英語に自信がなく、留学はハードルが高いと感じている人々には、まずはVRを使って体験してみるのがおすすめです。英語力をネックに海外留学に消極的になっている人にこそ、VRでのトレーニングには大きなメリットがあると、澤田さんは言います。
「日本で留学というと、まず語学留学をイメージする方も多いと思いますが、留学には本来、国際性を身につけるであったりだとか、海外で学位を取るだとか、語学以外の目的というものもあるはずです。
留学で必要になる語学的スキルをVRでしっかりと準備しておけば、いざ実際に留学したときに、 現地の学生と同等にコミュニケーションできる ようになり、単なる語学留学に留まらない充実した体験ができるはずです。VRを使った英会話学習で自信を付けて、留学に積極的にチャレンジする人が増えてくれればよいなと考えています」
英語に苦手意識がある人も、もっと英会話を上達させたい人も、VR英語学習を活用すれば、さまざまな 可能性 が開けそうですね。
ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部 「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
- スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
- 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
- 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。