SNSでドミノ・ピザが炎上した「Karen」って何者?【ニュースな英語】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の 拡大 に歯止めがかからない中、猛威を振るっているものがあります。それがKaren(カレン)です。Karenとは一体、何者なのでしょうか?今回は、話題のKarenさんについて詳しくご紹介します。

今回のニュースな英語

Karen
7月下旬、ニュージーランドのドミノ・ピザが、「すてきなKarenにピザを無料でプレゼント」というキャンペーンを 展開 したところ、炎上したためにドミノ・ピザは謝罪に追い込まれ、キャンペーンは中止となりました。

ここのところ、「Karen」という女性の名前がメディアをにぎわせています。でもこのKarenさん、一体誰なのでしょう?ドミノ・ピザはなぜ炎上したのでしょうか?

Karenの意味とは

実はこの「Karen」という女性の名前は、ソーシャルメディア(SNS)でよく描かれているインターネット・ミーム 1 で、特定の個人を指すものではありません。7月31日付のBBCによると、 Karenの特徴は、中流階級の中年白人女性で、その白人特権に由来すると思われる振る舞いをする* 、とされています。

具体的に は、有色人種に対して攻撃的で、サービス業の従業員を見下し、気に入らないと すぐに 「マネージャーを出して」と言う――が、Karenの人物像です。こういう行動を取る女性が、「Karen」とニックネームを付けられるのです。

なぜ最近この「Karen」が話題になっているかというと、新型コロナウイルスの感染症予防でマスク着用が求められる中、かたくなに着用を拒否する白人女性や、何も悪いことをしていない黒人男性のことを警察に通報する白人女性の姿がスマートフォンで撮影され、KarenだとしてSNSに投稿されるケースが相次いだからなのです。

どんなふうに使われている?

アメリカのオンライン・メディア「インサイダー」は、Karenがこれだけ話題になっている 原因 について、次のように説明しています。

the twin factors of the COVID-19 pandemic and the conversation around race and police brutality following the death of George Floyd have turned "Karen"-spotting into something of a national pastime .

「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の世界的大流行」と、ジョージ・フロイドさん死亡事件を受けての「人種や警察の暴力性に関する対話」という2つの要素が 原因 で、全国的にみんな「Karen探し」をして楽しむようになった。

「Karen」に付いている「-spotting」は、「見つける」という意味の動詞「spot」の動名詞です。

ところで、Karenという呼び名の出どころには、諸説あります。

ニューヨーク・タイムズ紙は、2004年の映画『ミーン・ガールズ』か、2005年にリリースされたアメリカのコメディアン、デイン・クックのコメディCDアルバムだとしています。

▼『ミーン・ガールズ』のKaren登場シーン

Karenは人の名前ですが、一般的に記事の中では、1人のKarenのときは「a Karen」、複数のKarenの場合は「Karens」と表現され、可算名詞として扱われています。

インサイダーは、白人男性が同じ行動を取ってもこんな扱いにはならないとして、性差別的だという意見が多いことも紹介しています。

また、Karenだとして動画が拡散されることで、その女性が個人情報を特定されたりハラスメントを受けたりし、人生が台無しにされてしまう 可能性がある懸念 する声もあります。

www.insider.com

まとめ

冒頭で紹介したドミノ・ピザのキャンペーンですが、イギリスの公共放送BBCによると、ドミノ・ピザは、汚名を着せられているKarenという名前の人をかわいそうに思い、「よいKaren」によい思いをさせてあげたかったと、キャンペーンの意図を説明しているそうです。

とはいえ、「 そもそも Karenと呼ばれるような行動を取る側に問題がある」という 指摘 や、「特権を持っている人にさらなる特権(無料のピザ)を与えるとは何事か」という意見もあったようです。

ドミノ・ピザは、自分たちが意図したものとは違う解釈をされた、と説明しています。一方で、同じキャンペーンを 展開 したオーストラリアのドミノ・ピザでは、ほとんどの人が楽しんで受け止めてくれ、無事にキャンペーンを終えたそうです。

Karenという言葉は、「pejorative」(軽蔑的)な表現だとする媒体もある上、侮辱的だと 主張する 人もおり、議論になっています。ということで、今英語圏で話題になっているニュースな言葉ではありますが、積極的に使うことはあまりおすすめしません。

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文:松丸さとみ
フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
Twitter: https://twitter.com/sugarbeat_jp

記事中画像: PhotoAC からの画像
*1 :インターネットを通じて人から人へ広がってゆく文化・行動のこと。

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