8月29日の午後、日本で「安倍首相が辞任」という大きなニュースが流れました。海外メディアはこれをどのように報じたのでしょうか?英語圏のメディアではさまざまな表現で「辞任」という言葉が使われていました。詳しくご紹介します。
今回のニュースな英語
Resign / Resignation先週、安倍晋三首相が辞任の意向を表明というニュースが世界を駆け巡りました。今回の「ニュースな英語」は「見出し」に注目して、各国のメディアではどんな言葉で 「辞任」 を表現したかを取り上げます。
背景
2012年12月に第2次安倍内閣が発足して以来、安倍首相は約7年半という長期にわたり政権のかじ取りをしてきましたが、8月28日に記者会見を行い、辞意を表明しました。
記録的な長期政権となった日本の首相の辞任ということで、英語メディアも、同時通訳を入れて記者会見を放送したり、ウェブ媒体では字幕付きの動画にしてサイトに掲載したりするなど、大きく報じました。
こちらのビデオは、イギリスの大手新聞 ガーディアンの電子サイト およびYouTubeチャンネルに掲載されているものです。どんなふうに使われている?
日本のメディアでは、「安倍首相辞任表明」という見出しが圧倒的に多かったようですが(「 毎日ことば 」より)、英語メディアは実にさまざまな表現で「辞任」を報じました。
いちばん多いのはやはり、 ストレートに resign という動詞 を使ったものです。日本語の見出しはこういうとき名詞になりますが(「辞任」「辞意表明」など)、英語では辞任を意味する 名詞resignationよりも動詞での表現が圧倒的に多くなります 。
例えば、イギリス公共放送 BBC の見出しはこうなっています。
Japan's PM resigns for health reasons日本の首相、体調不良を理由に辞任
PMは prime ministerの略で、見出しだけでなく本文でもよく使われます。
そこで、前述のBBCのように現在形で表現するほか、見出しにwillを使ったメディアもあれば、 to resign (「 to +動詞」で、これから起こることを表現します)または set to resign (「 set to +動詞」で「~することになっている」という意味になります)などとし、まだ実際に辞任していないことを表現したメディアもありました。
resign 以外にも、イギリスの フィナンシャル・タイムズ のように、step downを使った見出しも多くありました。
Shinzo Abe to step down as Japan’s prime minister安倍晋三氏、日本の首相を辞任へ
step downは一歩下に降りる言葉のイメージのとおり、「身を引く」「引退する」などの意味があります。当然ながらここでは、「辞任する」という意味で使われています。
ほかにも、 ロイター通信 は 「辞意を表明」 を忠実にこんなふうに表現しました。
Abe told ruling party officials of intent to resign 安倍氏、与党幹部に辞意を伝える
少し変わったところで、quitというとても一般的な動詞を使ったメディアもありました。イギリスの ガーディアン です。
Japan PM Shinzo Abe quits over health concerns日本の安倍晋三首相、体調不安で辞任体調不良については、ガーディアンがこの記事の見出しで「 over health concerns」と表現しているほか、別の記事では、「 due to ill-health」という表現を使っていました。またほかのメディアでは、「resigns because of illness」( ニューヨーク・タイムズ )、「citing his health」( ウォールストリート・ジャーナル )などが見出しに使われていました。
これらはどれも少しフォーマルな表現ですが、ビジネス・シーンなら、誰かが体調不良で会社を休んでいる、または仕事を辞めた、というときに理由を伝える表現として使えそうです。
まとめ
このように、見出しだけを見ても、さまざまな表現で「首相辞任」が報じられているのが、英語の報道の面白いところです。
今回のように日本の話題が英語メディアで取り上げられたときは、自分にとって馴染み深い話を英語で読めるチャンスです。ぜひ活用して、語彙を増やしていきましょう。
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松丸さとみ フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。訳書に 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』 (日経BP)、 『限界を乗り超える最強の心身』 (CCCメディアハウス)、 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 (サンマーク出版)などがある。
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