『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』世界中で愛される4姉妹の物語が映画化

映画、舞台、アニメなどに、これまで何度も脚色されて世界中の人々に愛されてきたルイザ・メイ・オルコットの『若草物語』。この不朽の名作がグレタ・ガーウィグ監督により再びスクリーンによみがえり、6月12日(金)より公開されました。今回は、翻訳者の谷口由美子さんと映画ライターの辰巳 JUNK さんに、本作の魅力や注目の監督・キャストについて伺います。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』ついに公開!

新型コロナウイルス感染 拡大 を受けて公開を延期していた本作が、ようやく6月12日(金)に公開されました。19世紀を代表する?性作家 ルイザ・メイ・オルコットの世界的ベストセラー?説『若草物語』を、映画『レディ・バード』で映画界に新?を巻き起こしたグレタ・ガーウィグ監督が超豪華キャストを揃えて鮮やかに描き出す話題作です。ぜひ劇場でご覧ください!

Story

19世紀、アメリカ、マサチューセッツ州ボストン。マーチ家の四姉妹メグ、ジョー、ベス、エイミー。情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかってばかりの次女ジョー(シアーシャ・ローナン)は、小説家を目指し、執筆に励む日々。

自分とは正反対の控えめで美しい姉メグ(エマ・ワトソン)が大好きで、病弱な妹ベス(エリザ・スカレン)を我が子のように溺愛するが、オシャレにしか興味がない美人の妹エイミー(フローレンス・ピュー)とはケンカが絶えない。

この個性豊かな姉妹の中で、ジョーは小説家としての成功を夢見ている。ある日ジョーは、資産家のローレンス家の一人息子であるローリー(ティモシー・シャラメ)にダンス・パーティで出会う。ローリーの飾らない性格に、徐々に心惹かれていくジョー。

しかしローリーからプロポーズされるも、結婚をして家に入ることで小説家になる夢が消えてしまうと信じるジョーは、「私は結婚できない。あなたはいつかきっと、もっと素敵な人と出会う」とローリーに告げる。自分の選択でありながらも、心に一抹の寂しさを抱えながらジョーは小説家として自立するため、ニューヨークに渡る――。 

Cast

【主人公】次女:ジョー(シアーシャ・ローナン)

マーチ家の次女。活発で、自分をげられずに周りとぶつかりながらも子どもの頃からの夢である小説家を目指して執筆に励む。隣人のローリーと仲良くなりプロポーズを受けるが、彼女の出す答えとは・・・。

長女:メグ(エマ・ワトソン)

マーチ家の長女。控えめで美しく、周りからは女優の才能があると信じられているものの、メグが望むのは愛する人と結婚し、幸せな家庭を築くこと。

三女:ベス(エリザ・スカンレン)

姉妹の中で最も心優しいベスは、幼い頃からの病と懸命に闘う。内気な性格だが音楽の才能に秀でており、隣のローレンス家にピアノを弾きに行っている。

末っ子:エイミー(フローレンス・ピュー)

頑固で少々わがままなところがある末っ子エイミーは、次女ジョーとのけんかが絶えない。将来はお金持ちになって苦労しない生活を送ることが夢。

ローリー(ティモシー・シャラメ)

マーチ家の隣にある資産家ローレンス家の孫息子ローリーは年の近い4姉妹と仲良くなり、次女ジョーに想いを寄せる。

翻訳者が語る『若草物語』の色あせない魅力 

『若草物語Ⅰ&Ⅱ』を翻訳された谷口由美子さんに、出版から150年たった今も多くの人に愛される原作『若草物語』の魅力について伺います。

若草物語 1&2
 

原題Little Womenが邦題『若草物語』になった理由

『若草物語』は、1934年にジョージ・キューカー監督による映画が日本公開されたときに付けられた邦題で、原題はLittle Womenです。そのまま訳しても『若草物語』にはならないのですが、内容にぴったり合っているので、今に至るまでこの題が不動の地位を保っています。

作者はアメリカの女性作家ルイザ・メイ・オルコット。ルイザの父は、ルイザたち姉妹を子ども扱いせず、「Woman」として尊重し、それぞれの意志と個性を重んじ、姉妹を「Little Women」と呼んでいました。

そこでルイザは自分たち四姉妹を主人公にして、4人の個性を見事に描き分け、リアルな少女たちの物語を書いたのです。読者は好きなキャラクターに自分をなぞらえ、共に笑い、そして悩む。1868年の出版当時、少女たちはこの物語に熱狂しましたが、150年たった今も変わらずみずみずしい魅力で、現代の女性たちの心をつかんでいます。それこそ、この作品の「古典力」によるものでしょう。

『若草物語』第1巻は少女編、第2巻は青春ロマンス編です。ですから今回、映画のストーリーを1冊で読めるように『若草物語Ⅰ&Ⅱ』を出しました。ルイザは物語に登場するジョーと同じく、四姉妹の次女でした。ルイザは自分をジョーに投影して、自身の経験したこと、考えたことなどをふんだんに物語に盛り込みました。長女メグ、三女ベス、四女エイミーも、ルイザの本当の姉妹たちをモデルにしているので、リアルさに事欠きません。

最後に、四姉妹の暮らすマーチ家の隣人で、物語に深く関わってくるローリーについて触れておきましょう。ローリーはおてんばなジョーを女性として意識し愛し始めますが、ジョーにとってのローリーは最高の友人で、それ以上でもそれ以下でもありません。作者ルイザにも、ローリーのような相手がいなかったわけではありませんが、結局、独りで生きていくことを選択しました。それがいちばん自分に合っていると思ったからです。ジョーとルイザは同じようでいて、やっぱり違うところがあり、そこがまた面白いのでしょう。

映画ライターが語る監督×主演俳優の最強コンビ

映画ライターの辰巳 JUNK さんに、本作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でタッグを組んだグレタ・ガーウィグ監督と注目の若手俳優シアーシャ・ローナンの関係について、伺います。

観客が自分自身を見いだすことのできる新たな名作

グレタ・ガーウィグが監督し、シアーシャ・ローナンが主演した『レディ・バード』(2017)は、魔法のような映画でした。女子高生が都会の大学を夢見る大筋自体は、ハリウッドで培われた青春映画の王道と言えるでしょう。

しかしながら、リラックスしたテンポでガーウィグの郷愁が注がれたそのフィルムは、今までなかったような風格も携えていました。特に絶賛された存在は、時に自己中心的で時に寛大な、ローナン演じる主人公です。

女性表象として革新的だったことはもちろん、誰もが心のどこかでティーンエージャーの頃の自分を思い出してしまうようなキャラクターでした。伝統的でありながら、宝物のように新しかったのです。つまり、ガーウィグとローナンほど、比類なき名作『若草物語』の再映画化に適したコンビはいないといえます。

ガーウィグはまるで魔法使いのように、原作小説が持つ普遍的なパワーを翻案し、現代の観客の心に届けてみせました。『インタビュー(ENGLISH JOURNAL2020年5月号掲載)』で「これまで(の『若草物語』の映画化作品)は肖像画のように堅苦しい描写が多かった」と 指摘 するローナンは、本作の自然でリラックスした表現を称賛しています。

ほかにも、格別な熱意を持って参加したキャスト陣には、『レディー・バード』にてローナンと恋仲になる役を演じたティモシー・シャラメ、そしてエマ・ワトソンらが並びます。ジェンダー問題のアクティビストでもある彼女は、ロマンチストな長女メグを通して「結婚を望む女性もフェミニストであること」を表現したといいます。エマが語ったように、今を生きる私たちは、ジェンダーや世代に関係なく、この新たなる名作から自分自身を見いだし、前進の一歩を授かることでしょう。

映画キャスト陣の豪華インタビューは2020年5月号で!

『ENGLISH JOURNAL』2020年5月号の特別企画では、マーチ家の4人姉妹、次女ジョーを演じるシアーシャ・ローナン、長女メグを演じるエマ・ワトソン、マーチ家の隣人ローリーを演じるティモシー・シャラメが、ニューヨークプレミアで語った豪華インタビューを音声付きでお届けしています!こちらもぜひご覧ください。

※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

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