「英語多読ニュース」(2月27日号)。今回取り上げるのは、アメリカの現地時間2月24日に開催された「アカデミー賞」に関する記事です。
映画界の世界最大イベント「アカデミー賞」が今年も開催されました。一般に人気が高かった映画に贈る新しいカテゴリー「ポピュラー賞(Popular Award )」を設けると発表したものの、世間からの 厳しい 意見を受けて撤回…。イベントの司会にコメディアンのケビン・ハート氏を選んだものの、過去の性差別発言が明るみになり司会なしのイベントとなったり…。
お騒がせな話題に事欠かない、第91回の開催となりました。
www.independent.co.uk www.townandcountrymag.comそんな中、個人的な注目作品は、アルフォンソ・キュアロン監督の『ローマ』でした。メキシコのとある中流家庭とその家政婦の日常を描いた映画を制作したのは、旧来の映画会社ではなく動画配信サービスの Netflix。すでにヴェネチア映画祭やゴールデングローブ賞で複数の賞を受賞し、アカデミー賞でも10部門にノミネート。新しい時代の幕開けを感じさせる作品でした。
そんな『ローマ』は作品賞こそ逃したものの、監督賞と撮影賞を史上初の同時受賞。キュアロン氏は壇上でこんなコメントを残しました。
Being here doesn’t get old.何度ここに立ってもいいものです。ここでの get old は「古くならない」ということで、Being here doesn’t get old. は「何度ここ(受賞の壇上)に立っても、新鮮な気持ちになる」といった感じ。前作『ゼロ・グラビティ』(2013)に続く2度目の受賞を受けての言葉でした。
個人的に最も気に入ったのは、スパイク・リー監督がバックステージで言ったという次のコメントです。
Every time somebody’s driving somebody, I lose.誰かが誰かを車に乗せると、俺は負けるんだ。どういうことかというと、実はリー監督の作品『ブラック・クランズマン』はノミネートされた作品賞を逃し、栄冠を手にしたのは『グリーンブック』という映画でした。
この映画は、黒人ミュージシャンと白人用心棒(兼運転手)が育む友情を扱ったものですが、実は1990年、リー監督の映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』が脚本賞にノミネートされるも、受賞ならずということがありました。その年に、作品賞を受賞した作品は、白人女性と黒人運転手の交流を描く『ドライビング Miss デイジー』だったのです。
先のリー監督のコメントは、あらかじめ仕込んであったものなんでしょうか。今回、彼の作品は脚色賞を受賞しているので、気分が良かったのかもしれません。周囲を笑いに巻き込むしゃれた発言です。
さて、レディー・ガガさんが主演した『アリー/ スター誕生』も大きな注目を集めていましたが、残念ながら主要な賞は逃してしまいました。しかし、主演のレディー・ガガさんは、挿入歌「シャロウ」で歌曲賞を受賞。次のように語りました。
This is hard work , I’ve worked hard for a long time and it’s not about winning, but what it’s about is not giving up. If you have a dream, fight for it.これは努力のたまものです。私は長い間努力してきました。勝ち負けではなく、あきらめないこと。夢があるなら、力を尽くしてそれを実現させましょう。何歳になっても夢に向かって進む。授賞式を見ている全ての人に勇気を与える言葉です。
このように、毎年、受賞者のコメントが話題になるアカデミー賞ですが、今回もさまざまな発言が話題となりました。例えば、コメディアンのトレバー・ノア氏は、美術賞や衣装デザイン賞などを受賞した黒人監督による黒人キャストの映画『ブラック・パンサー』を称賛する際、劇中のフレーズ Wakanda forever.(アフリカの架空の国のあいさつ)を使って、人種差別発言で非難を受けていた俳優のメル・ギブソン氏の名前を持ち出しました。
Even backstage, Mel Gibson came up to me and said: “Wakanda forever.”バックステージでも、メル・ギブソンが僕のところにやってきて「ワカンダ・フォーエバー」と言うほど(の盛り上がり)だったよ。『ボヘミアン・ラプソディ』で、イギリスのロックバンド、クイーンのフロントマン、フレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレック氏(主演男優賞を受賞)は、自分の人生をインド生まれのロックシンガーの人生になぞらえました。
I am the son of immigrants from Egypt. I’m a first-generation American. Part of my story is being written right now.私はエジプト移民の息子です。アメリカ生まれの一世です。私自身の物語は、今、ここで現在進行中です。映画に関わる人にとっては最高の晴れ舞台に違いないアカデミー賞。今年の受賞者たちが残したそのほかの注目コメントは、次の記事でお楽しみください。 www.theguardian.com www.timeslive.co.za
文:山本高裕(GOTCHA! 編集部)
高校の英語教師を経て、今は編集者として、ときに写真家として活動中。違いを認め、受け入れられる広い心を持つ人が増えるといいと思っています。