英語を読むのは楽しい。でも、楽しく読んでいるだけで英語力はしっかり身に付くのでしょうか?そんな疑問に、『 英語多読 すべての悩みは量が解決する! 』の著者、繁村一義さんにお答えいただきます。
原因 は?">多読を不安に感じる 原因 は?
多読のスタートを切ってしばらくは、楽しいとおっしゃる方が多いです。挿し絵を見ることが案外と楽しかったり、簡単な薄い本とはいえ、何冊もの本を読み切ることができることがうれしかったりするからだそうです。
ところが、しばらくすると「楽しくはあるけれど、これで英語力が付くのだろうか」と 改めて 不安を口にする方が増えてきます。読める本のレベル(難易度)が上がっている にもかかわらず 、この不安を持つ方はある程度いらっしゃいます。
その不安の 原因 を探ってみると、漠然とした不安を別にすれば、語彙(辞書)と文法に関わることが目立ちます。実際に質問として頂くものに限ると、辞書に関わることが一番多いと感じます。
そこで、今回は辞書と文法に絞ってお話ししたいと思います。
辞書を引かないことの意味
多読での読み方をまとめた「多読三原則」では、最初に「辞書を引かない」としています。これのおかげで気楽に読めるようになりますが、一方で不安も呼んでしまいます。
多読三原則
- 辞書は 捨てる (辞書は引かない)
- 分からないところは飛ばす
- 自分に合わないと思ったら投げる
(A)読むことを中断するので、楽しい読書の邪魔になる。
(B)頭が日本語の世界に戻ってしまう。
(C)ほとんどの英和辞典は、単語の意味を説明したり定義したりしていないので、誤解のもととなる。
まず(A)は、英和辞典を引くという行為自体の問題です。
「楽しい読書の邪魔」とは、多読の一番の目的・利点が英語に慣れ親しむことができることなのに、辞書を引くたびに英文を読むことを中断してしまい、 楽しい読書=英語に慣れることを邪魔する ということです。
続いて(B)は、英和辞典を引くことで誘発される問題です。
私たち日本人は英語に比べ日本語が圧倒的に得意ですので、せっかく多読で英語のモードに切り替わりつつあっても、 英和辞典の日本語を見た瞬間に日本語モードになって しまいます。
日本語モードに戻るのは一瞬でも、英語モードに入り直すのは一瞬とはいきません。これは、英語に慣れ親しむためには大きな障害です。
原因 になりやすい">英和辞書は誤解を生む 原因 になりやすい
最後に(C)は、英和辞典を引いた結果の問題です。
「ほとんどの英和辞典は単語の意味を説明していない」の部分は、驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。辞書というものは通常「言葉」の意味を説明したり定義したりしているものですから。
ところが多くの英和辞典は、単語の 意味を説明する代わりに、単語の訳として成立する 可能性 のある日本語を羅列 しています。羅列してある訳をすべて覚えるのは大変ですから、ついそのうちの1つから数個の訳を取り上げ、それを元の単語の意味だと思ってしまいがちです。
例えば「climb」を「登る」という意味だと思ってしまうことがあります。こうすると、「climb into a car」というような表現を目にすると、「大きな車に登るように乗る」といった意味しか思い付けなかったりします。
「climb」には、方向のイメージはほとんどなく、主に両手両足を使って多少苦労して進むといったイメージです。 従って 「climb into a car」は、小さな車に体を押し込むイメージもあり、実はこちらの方が当てはまる場面は多いかもしれません。「climb into a pair of jeans」なら、ピッタリとした細身のジーンズに足をねじ込むようにはく感じです。
このように、英和辞典は誤解を生むもとになりやすく、しかもその誤解は一見権威のあるものに裏付けられているため、解けにくいという問題があるのです。
(B)の「日本語の世界に戻ってしまう」と(C)の「誤解のもととなる」があるので、たとえ電子辞書などで素早く引けるとしても、できるだけ引かない方がよいと考えています。
なお、この(B)と(C)は英英辞典では問題になりません。もし英英辞典を「ストレスなく」引けるなら、こちらはどうぞお使いください。
多読だからこそ、自然に文法力が身に付く
多読でも、文法の力は付きます。「文法用語」は身に付かないので勘違いしがちですが、文法の力はごく自然に、よく使われる順に身に付きます。
多読では、 「英語を母語とする子供向けの本」から始める ことをお勧めしています。
「英語を外国語として勉強する方向けに段階別になっている本」もありますが、こちらは語彙レベルや文法を学習者向けに調整してあります。読みやすく感じる方も多いと思いますが、当然ながら低いレベルのものは、使われている語彙や文法がかなり限られていて、不自然さを感じることは否めません。
一方、英語を母語とする子ども向けの本の場合、子ども向けに調整されてはいるものの、あくまで英語を話したり聞いたりすることに十分に慣れている人向けのものですから、不自然さはありません。文法で言えば、学校英語で比較的あとに出てくるような仮定法や倒置法なども、ごく初期から当たり前に出てきます。
英語圏の子ども向けの本だけでは、もちろん文法用語は身に付きません。日本語の例で考えてみると、例えば主題を 提示する 際に「~が」や「~は」を比較し、よりしっくりくる方を感覚的に使いますね。なぜそうするのかを 文法用語を用いて説明することはできませんが、それでも正しく使えるようになる ものです。
文法の網羅性においては、文法書で学ぶより劣るところはあるかもしれません。しかし、英語を母語とする子ども向けの本から始めれば、文法も使用頻度の高いものから自然に身に付いてきます。
幼子のように
多読では、単語も文法も丸暗記したり理屈で理解したりしようとしません。ちょうど幼子が母語を身に付けるのに似た過程を経て、自然に身に付けていきます。
もちろん、大人が多読を行う場合は、既に十分身に付いた日本語という言語から類推できたり、いろいろな経験から想像できたりします。 従って 、母語より短い時間で身に付くケースが多いので、 安心 して多読してください。そうすれば、豊かな英語の世界に入っていけます。
多読では、自然に言語が身に付くだけでなく、英語を身に付ける過程も幼子のように楽しく過ごせますよ。
Happy reading!
おすすめの本
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- 出版社: アルク
- 発売日: 2018/07/17
- メディア: 単行本
文:繁村一義(しげむら かずよし)
NPO多言語多読理事。二十歳で英検3級に落ちたレベルから、多聴多読でTOEIC900点を超え、外国人ばかりのチームをリードできるようになった経験を生かし、エンジニアとして活躍するかたわら、各地で講演や指導を通して多読の普及に努める。NPO SSS英語多読研究会監事、日本英語多読学会監事。
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