東京・根津エリアを散策するデイビッド・セインさん
「どっちの英語ショー」第6回は「冠詞」の使い分けです。冠詞には「不定冠詞(a/an)」「定冠詞(the)」「無冠詞(a/an や the が付かない)」があります。日本語には存在しない概念ですが、英語は冠詞の有無で文の持つ意味やニュアンスが変わるため、とても重要な品詞です。「不定冠詞」「定冠詞」が持つ基本的なイメージを確認し、そこから派生するそれぞれの冠詞のニュアンスをとらえましょう。
不定冠詞(a/an)の基本イメージ
- 初めて話題に出た(もしくは話し手のみが理解している)単数名詞に付く
- 不特定なものを表す
- (物や人など)1つの個体を表す
Q. cakeとa cake、入るのはどっち?
There’s( ① )in this box.
この箱の中に(ホールの)ケーキがあります。
There’s( ② )in this box.
この箱の中に(食べかけの)ケーキがあります。
A. ① a cake、② cake
a/anは「かたまり、輪郭、形」を強調する
There’s a cake in this box. という英文でネイティブが思い浮かべるのは、箱の中に入った1つのホールケーキです。a/anは文脈によって「1つのかたまり、まるごと」というニュアンスを表現します。例えば I ate a pizza. と言ったら、相手には「私はピザをまるまる1枚食べた」という意味で伝わります。
また、a/anは「輪郭や形がはっきりする」という意味合いも含んでいるため、a cakeは「手つかずのホールケーキ」を表します。一方、無冠詞のcakeは「形を成さないケーキ=食べかけのケーキ、切った1ピースのケーキ、ぐちゃぐちゃになったケーキ」という意味になります。
There’s a sandwich in my bag.
カバンの中にサンドイッチが1つあるんだ。
There are bits of sandwich in my bag.
カバンの中にサンドイッチのパンくずが入っている。
Q. dinner と a dinner、入るのはどっち?
Let’s have( ① )!
夕食にしましょう!
Let’s have( ② )!
夕食会をしましょう!
A. ① dinner、② a dinner
a/anは「特別感」を表す
ふだんの生活で家族や同僚に対して「晩ご飯にしましょう」「夕食にしましょう」と言う場合に使うのは、無冠詞のdinnerです。冠詞がないdinnerは総称としての「夕食」を表し、不可算名詞として扱います。これはlunch(昼食)の場合も同様です。How about having lunch? なら、「ランチはどう?」「昼食を食べない?」という意味になります。
一方、aを付けてa dinnerにすると「特別な夕食会、格式ばった夕食会」というニュアンスになります。食事を取りながらの交流会や講演会を表す場合は、こちらを使いましょう。2人ではなく、複数名でテーブルを囲むオフィシャルな食事会のイメージです。
I had a lunch at ABC hotel yesterday. It was a great opportunity to meet people from various countries.
昨日、ABCホテルで食事会をした。各国から来た人々に出会える素晴らしい機会だった。
I had lunch at a cafe yesterday. It had a really cozy atmosphere.
昨日、カフェで昼食を取った。とても居心地の良い雰囲気のお店だった。
不定冠詞のその他の例文もチェック!
いろいろな例文で意味の違いを確認し、不定冠詞を感覚的に身に付けましょう!
There’s a little water left.
まだ少し水が残っています。
There’s little water left.
水がほとんど残っていません。
I have a blue and white sweater.
私は青と白のボーダー柄のセーターを持っています。
I have a blue and a white sweater.
私は青いセーターと白いセーターを1枚ずつ持っています。
Could you bring me a paper?
新聞を持ってきてくれる?
Could you bring me paper ?
紙を持ってきてくれる?
定冠詞の基本イメージ
- すでに話題に出た(もしくは話し手と聞き手の共通認識がある)名詞に付く
- 特定されたものを表す
- (月や太陽など)1つしかないものを表す
- 最上級を表す
Q. members と the members、入るのはどっち?
We’re( ① )of the project team.
私たちはプロジェクトチームの(全)メンバーです。
We’re( ② )of the project team.
私たちはプロジェクトチームの(一部の)メンバーです。
A. ① the members、② members
theは「集合名詞」を表す
membersやactorsのように、人を表す複数名詞にtheを付けることで「全員」を表します。the+複数名詞+of で「~の中の全メンバー」という意味です。一方、無冠詞の複数名詞+of は全員ではなく「~の中の一部のメンバー」を指します。この場合、どのメンバーなのか、また何名なのかまでは特定されていません。
また、the Simpsons(シンプソン一家)のようにthe+名字+sで「~一家、~夫妻」を表すことができます。
They’re the actors of a theatrical company.
彼らは劇団に所属する(全ての)俳優です。
They're actors of a theatrical company.
彼らは劇団に所属する(一部の)俳優です。
Q. time と the time、入るのはどっち?
Do you have( ① )?
時間はありますか?
Do you have( ② )?
何時ですか?
A. ① time、② the time
the+timeで「特定の時間」を表す
the を付けずに Do you have time? とたずねた場合は、「今、時間はありますか?」という意味です。会社で上司や同僚に質問したいときはもちろん、友人に対してカジュアルに「今、暇?」と聞きたいきにも使えます。
定冠詞の the を付けた the time は「 特定の時間、時刻 」を表します。そのため、Do you have the time? は「今、何時ですか?」と時刻をたずねるフレーズ。the があるかないかで意味が異なるので、聞きたい内容に合わせて使い分けましょう。
Do you have the time? I don’t have a watch.
何時ですか?時計を持っていないんです。
Do you have time? I’d like to ask you something.
今、時間ありますか?ちょっと伺いたいことがあるのですが。
定冠詞のその他の例文もチェック!
いろいろな例文で意味の違いを確認し、定冠詞を感覚的に身に付けましょう!
She left the office.
彼女は会社を出ました。
She left office.
彼女は退職しました。
For the moment, we're fully staffed.
今のところ、職員は充足しております。
Wait for a moment while I transfer your call.
電話をおつなぎする間、少々お待ちください。
I almost agree with his speech in a way.
ある意味では彼のスピーチにほぼ同意する。
I tried to answer the door, but my dog was in the way.
来客の応対をしようとしたが、犬が邪魔をした。
まとめ
冠詞は「聞く・読む」よりも「話す・書く」ときに使い方を迷う、という声を多く聞きます。
ほかの品詞のようにはっきりと訳されることがないことも、学習者が難しいと感じるポイントかもしれません。冠詞が持つ意味やニュアンスは非常に多岐にわたっており、今回ご紹介したのはほんの一部です。
いろいろな英語に触れて、ネイティブの使い方・解釈に対する理解を深めていってください。
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