世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは経営コンサルタントのロッシェル・カップさんに、グローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。
自分の貢献が評価されていない!
あなたは日系企業の中国にある子会社で働いています。
あなたの部下の馬さんは突然に会社を辞めることにしました。あなたは馬さんに「皆で力を合わせてここまで頑張ってきたのに、なぜ辞めるのですか。とても残念です」と理由を尋ねました。
馬さんは少し考えてから、「私のアイデアを製品化して会社は成功を収めたのに、私自身が評価されなかったからです」と答えました。あなたは、「アイデアは確かに馬さんのものですが、皆の 協力 があってこそ製品化が成功したのだと思います」と答えました。
それに対する馬さんの返答は次のようなものでした。
「それこそが辞める理由ですよ。いくら自分が頑張っても、結局はチーム全員の成果になってしまう。自分の貢献が評価されなければ、仕事にやりがいが持てません」
このような状況に直面したとき、あなたならどのように対応しますか?
中国人は日本人より個人主義的
日本人からすると、馬さんのように急に仕事を辞めることは理解しがたいことです。チームや会社に迷惑をかけてまで自分の利益を 優先する 人は、日本では冷やかな目で見られてしまいます。
日本人は【a】のように、馬さん個人に非があると解釈する 傾向 が強いでしょう。しかし違う見方もあります。それは、文化的背景を考慮したものです。
このチャートで左の方にある文化は個人主義です。
個人主義の文化では、自主性、独立独歩、個人の自由、個人の選択が重視 されます。 そのような文化に属する人は目立つことをいとわず、自分の上げた実績で個人として認められることを好みます。
対照的に、右の方にある文化は集団主義です。
集団主義の文化に属する人は、自分優先ではなく、他の人にとって何が良いか をまず考えます。個人として突出しないように心がけ、グループで仕事をすることが大切だと思っています。また、グループ内の和を重視します。
より良い結果のために文化を尊重する
このチャートでは、日本は右寄りに位置しています。
一方中国は、欧米ほどではありませんが、日本より左です。そのため、中国人が日本人より個人として認識されることを重視するのは驚くべきことではありません。
したがって 、【a】のように個人主義的な行動に対して「悪い」というレッテルを貼るのは、あまり効果的ではありません。
【b】も一つの方法ですが、そうすることで採用の 候補 者が限られてしまうだけでなく、中国の文化的特徴を否定することになりかねません。そのため、中国で事業を行う日系企業にとって、持続的な解決法にはなりません。
最も適切な対処法は【c】です。中国人にとって、自分個人の貢献が評価されていると感じることは非常に大切なことなので、それを積極的に生かすのが効果的な管理法です。
チーム全体の努力を評価しつつ、個人の貢献に対して十分な評価や報酬を与える ことをおすすめします。
このように相手の文化に合った管理方法を取り入れることは、文化的ギャップの克服だけではなく、ビジネスでのより良い結果を収めることにつながるでしょう。
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編集:GOTCHA!編集部執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『 反省しないアメリカ人をあつかう方法34 』(アルク)、 『英語の品格』 (集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。