世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは経営コンサルタントのロッシェル・カップさんに、グローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。
「資料を何回も直すの、不満です!」
あなたは日系企業のイギリス拠点に駐在しているマネージャーです。
あるイギリス人の部下にプレゼンテーションの資料の作成を依頼したところ、彼が提出してきたものは、文書のフォーマットや内容など、親会社が好んでいるスタイルとマッチしませんでした。
そのため、数回にわたって訂正を要請しましたが、まだ満足できる出来ではありません。
しかし彼は 、依頼された訂正はマージンやフォントなど書類のフォーマットだけの問題だと思っているようです。彼は、幾度にもわたる訂正に時間をかけることにフラストレーションを感じていると言いました。
そのような部下に対して、どのように対応すればよいでしょうか?
日本では、プロジェクトが進行中であるとき、マネージャーと部下が頻繁にやり取りするのはごく普通のことです。また、内容ではなくフォーマットなどの形式的な細かいところに対して上司が指摘をすることも、当たり前とされています。
そのため、指摘に対して部下が文句を言ってくると、日本人の上司は驚きます。その部下に何か問題があるに違いないと考えるかもしれません。そのため、日本人のマネージャーは、上記の【a】のような対応をすることがほとんどでしょう。
文化は仕事の進め方に大きく影響する
しかし、イギリス人部下の行動の背景には、文化的な違いがあるのです。なぜなら、文化は仕事の進め方に大きく影響するからです。下記のチャートを見てみましょう。
左の方にある文化ほど、過程を大事にします 。過程は最終的な結果と同じくらい大切だと思われています。
そのため、結果を達成するための手順を理解しようと努力し、それに従おうとします。物事には、「適切」または「正しい」やり方が必ずあるはずだと思っています。そして決まったやり方に従うのが重要だと感じています。
一方、 右の方に位置する文化ほど、過程を重視しない文化 だといえます。目標さえ達成すれば、それに至るまでの過程はどうでもいいと思っています。要は、結果主義なのです。
そのためプロジェクトに携わるときは、皆それぞれが自分の方法で行えば良いと思っています。決まったやり方に従うことにはあまり意味がないと考えます。
イギリスは右側の結果重視の文化ですが、日本は左側の過程重視の文化です。過程重視の文化では、上記の例のマネージャーのように、一見表面的とも思えるような部分(例えば形式や装飾)にたくさんの時間を費やすことは珍しくありません。
しかし、結果重視の文化であるイギリスの人からすれば、それは全く意味のない無駄なことのように思えるかもしれません。
「なぜ必要か」を説明し、具体例を示す
このような問題の対策としては、【b】 と【c】をお勧めします 。 依頼している訂正がなぜ必要なのか、そしてそれがなぜ最終結果に影響するのかを明確に説明 すれば、結果重視の相手を説得できるはずです。
さらに、 自分が期待しているプレゼン資料の見本を事前に示せば、部下はあなたが何を求めているのかを理解することができる ので、「どのようにすればよいか分からない」というフラストレーションを避けることができます。
同じ組織の中で働いてきた日本人は、何が良いプレゼンなのかを感覚的に理解しているかもしれませんが、外国人は必ずしもそうではありません。そのため、相手にあらかじめ具体的な例を示すことが効果的なのです。
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編集:GOTCHA!編集部執筆:ロッシェル・カップ
ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社 社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。日本語が堪能で、『 反省しないアメリカ人をあつかう方法34 』(アルク)、 『英語の品格』 (集英社) をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
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