「連れていく」はtake?bring?“視点”で決まる英語の使い分け【ニュアンス英語】

似ているからこそ使い方がわかりづらい!そんな英語のニュアンスを言語学者クレシーニ・アンさんと一緒に解きほぐします。今回のテーマは take と bring。「連れていく/持っていく」「連れてくる/持ってくる」は 、どう区別して使い分ければいいの?そのカギは“視点”にあるんです。

今回のテーマ:take と bring

数年前、友人がホームパーティーを計画したときのこと。食事は持ち寄り制とのことで、もちろん「何か」を持っていくつもりだった。そして一緒に「誰か」、つまり私の友達も連れていきたかったので友人に聞いてみた。当時、私はまだ日本語がそこまで上手じゃなくて――

友達を持っていっていい?」と。

友人は爆笑してから、「友達は物かい?」と返事をした。

外国語学習者は、よくこのような違いをする。自分の母語にある表現を直訳すると、笑える、いや、笑われる間違いになることが結構ある。

私の娘は日本生まれ・日本育ちで、英語も日本語もネイティブ。ただ、たまに英語がおかしい。ある日のこと、「Mama, can you send me to the station?」と聞かれて、「ああ、娘の英語はかわいいな」と私は思った。日本語の「ママ、駅まで送ってくれる?」の「送る」をそのまま send にしたわけだ。この場合、「Mama, can you take me to the station?」というのが正しいです。

似たような“直訳ミス”が、日本語の「薬を飲む」と英語の「take medicine」。わが子は drink medicine と言ってしまったことが何回もある。今高3の娘は中国語も勉強していて、中国語では「薬を食べる」と言うらしいから、さらに混乱しそう!

take と bring の基本:人も物も「連れていく/持っていく」は take

というわけで、回は日本語の「連れていく・持っていく」「連れてくる・持ってくる」、英語の「take」「bring」の使い方について見ていこう。

まず、英語だと人であれ物であれ、「連れていく・持っていく」ときは基本的に take を使う。さっそく例文を見てみよう。

Who are you going to take to the party?
パーティーに誰を連れていくんですか?

I am going to take some homemade cookies to the party.
私は手作りのクッキーをホームパーティーに持っていくつもりだ。

bring になるのはいつ?ポイントは「誰の視点か」

ただし、次のように bring を使うケースもある。

【ホームパーティーの件で、主催者と参加者が電話で話し合う場面】
参加者:Can I bring my friend with me to the party?(パーティーに私の友達を連れていってもいいですか?)
主催者:Sure, bring her along!(もちろん、一緒に連れてきて!)

なぜこうなるのかというと、ホームパーティー主催者の所まで連れていくから。主催者の視点では、参加者が友達を連れてくる = bring になる。参加者もその視点で話しているので、bring のほうが自然で良い、というわけだ。

  • 主催者ではない人(=ホームパーティーの開催場所にいない人)に、「パーティーに誰を連れていく?」と尋ねる場合:
    「Who are you going to take to the party?」が自然。
  • 主催者(=ホームパーティーの開催場所にいる人)に、「パーティーに友達を連れていってもいい?」と尋ねる場合:
    「Can I bring my friend with me to the party?」が自然。

つまり、誰の視点で話すかによって、take / bring のどちらを使うのが自然なのかが変わってくるわけです。

come / go も同じ:英語は“相手側の視点”で動く

似たような使い方をするのが、 come / go だ。日本語と英語では言い方が“逆”になる場合がある。

例えば、自分が2階の寝室にいて、1階の台所にいる母から「ねえ、ご飯だよ!」と呼ばれたら、皆さんはどう答えますか?

日本語だと「はーい!すぐ行くよ!」と答えるのが自然だよね。一方、英語だと「OK, I’m going!」じゃなくて、「OK, I’m coming!」が普通なんです。(←お母さんの所に子どもが「来る」)

でも、同じ寝室にいる弟に「下に行こう、夕飯できたってさ」と言うなら「Let’s go downstairs. Dinner’s ready.」となる。(←弟と一緒にお母さんのいる所に「行く」)

日本語はどちらの場合も「行く」を使うけれど、英語は「話す相手の視点が中心」になるということなんだね。

「すぐ家に帰る」
・バイト仲間に対して:I gotta go home soon.(←仲間から離れて家に「行く」)
・家にいる母親に対して:Mom, I’m coming home soon.(←母親の所に子どもが「来る」)

「クリスマスは実家に帰るよ」
・大学の友達に対して:I’m going home for Christmas.(←同級生から離れて実家に「行く」)
・実家の母親に対して:Mom, I’m coming home for Christmas.(←母親の所に子どもが「来る」)

英語で「実家」「故郷」はなんて言う?

ちなみに、「実家」「故郷」の意味で hometown を使う日本人が多いけれど、これはちょっと不自然な表現だ。英語では I’m going back to my hometown. とはあまり言わない。

英語で「実家に帰る」と言いたい場合、次のように表現すると自然です。

  • I’m going home.
  • I am going to my parents’ house.
  • I am going to visit my parents.
  • I am going to see my family.

クリスマスや年末年始の休暇に帰省する、と言うならこんな感じ。

  • I am going home for the holidays.
  • I’m going to see my parents at Christmas.
  • I am going to stay at my parents’ house during the holidays.

ちょっとノスタルジア(郷愁)のある表現をしたければ、childhood home を使っても大丈夫。

  • Last week, I went back to see my childhood home for the first time in twenty years.
    先週、私は20年ぶりに故郷の実家に戻った。

「take」「bring」を使った例文

では、take と bring のに戻ろう。

  • take:(物を)持っていく、(人やペットを)連れていく
  • bring:(物を)持ってくる、(人やペットを)連れてくる

take と bring の基本な意味は上記の通り。「誰の視点」で話しているかを意識しながら例文を読んでみてね。

【物】を持っていく・持ってくる

What are you going to take to the party?
パーティーに何を持っていくの?

Can you bring some snacks to the party?
パーティーにお菓子を持ってきてくれる?

I need to take my passport when I visit the embassy.
大使館に行くとき、パスポートを持っていかないと。

Please bring your passport with you when you come to the embassy.
大使館に来るときはパスポートを持ってくるのを忘れないでください。

パーティーの場所や大使館に着いた後で「お菓子/パスポートを忘れた!」と気付いた場合は、take じゃなくて bring を使ってそれを表現する。

I can’t believe it. I forgot to bring the snacks you asked me to get.
しまった。君に頼まれたお菓子を持ってくるのを忘れた。

I can’t believe I forgot to bring my passport!
パスポートを持ってくるのを忘れちゃうなんて(信じられない)!

A:Mom! I forgot my lunch! Can you bring it to me?
お母さん!お弁当忘れちゃった!持ってきてくれる?

B:You are always forgetting your lunch! This is the third time I’ve had to take it to you this month!
もう、あんたはいつも忘れるんだから!今月、届けに行くのはこれで3回目よ!

【人やペット】を連れていく・連れてくる

A:Can I take/bring my wife with me to your wedding?
妻をあなたの結婚式に連れていってもいいですか。
(⇒自分視点なら take/相手視点なら bring)

B:Sure, please bring her along!
もちろん、連れてきてね!

A:How about my dog? Can I take/bring him too?
うちの犬も連れて行っていい?
(⇒自分視点なら take/相手視点なら bring)

B:Nah, please don’t bring the dog.
いや、ワンちゃんはやめましょう。

人を「送る」ときには take

最初の方で少し触れたように、人をどこかに「送る」ときにも take を使う。

  • Mom, can you take me to the station?
    お母さん、駅まで送ってくれる?

  • I need to take my kids to school.
    子どもを学校に連れていかないと。

  • My wife takes me to work every day.
    毎日、妻が職場に送ってくれています。

  • My coach took me home today.
    今日はコーチが家まで送ってくれた。

  • Want me to take you?
    送ろうか?

スポーツで使われる bring やその他の表現

余談だけど、スポーツや何かの大会で「かかってこい!」と言いたいとき、英語で Bring it on! とか bring it! という表現がよく使われる。特にバスケットボールでは、trash talk(挑発的発言、煽りプレイ)が相手を精神的に動揺させるために用いられている。

  • You got cooked, son. Go sit down!
    やられたな、坊や。座ってろ!

  • Your defense is weaker than my grandma’s Wi-Fi.
    お前のディフェンス、ばあちゃん家のWi-Fiより弱ぇ!

  • You are so not my level.
    レベチなんだよ。(=あんたじゃ俺には全然かなわない)

  • Man, you are SLOW!
    あんた、マジで遅ぇ!

まとめ

外国語を学ぶ全ての人は、勉強の際に母語に影響を受けている。私は25年以上も日本語を勉強しているけど、未だにそう。直訳したり、英語で話すときの語順で日本語の文章を口にしてしまうのがなかなか治らない癖だ。

けれど、一気に直すんじゃなく、ちょっとずつ乗り越えていけばいいと思う。1カ月で30キロもやせるのは無理なのと同じように、1年間で完璧に外国語を使いこなすなんてことはできない。コツコツと頑張ることが一番大事です。

私の一番好きなことわざは、「継続は力なり」。あきらめずに、ちょっとずつ英語と日本語をマスターしようぜー!Bring it on!


クレシーニ・アン
クレシーニ・アン

アメリカ・バージニア州生まれの日本の言語学者(海外語学研修・言語学)。学位は応用言語学修士(オールド・ドミニオン大学・2002年)。北九州市立大学基盤教育センターひびきの分室准教授。和製英語と外来語について研究している。作家、コラムニスト、ブロガー、コメンテーター、YouTuber、むなかた応援大使、3人の娘を持つ母。(写真:リズ・クレシーニ)

●ブログ:「アンちゃんから見るニッポン
●Instagram:@annechan521
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