良い点数なのに「ショック」?surprised と shocked の違いに迫る【ニュアンス英語】

「英単語、ややこしい!」と叫びたくなったこと、ありませんか? see / watch / look、near / nearby / close、say / tell、already / yet / stillなどなど・・・。日本人にとっては混乱の宝庫かも!?そこでこの連載では、そうした「似ているけど違う」英単語のニュアンスを徹底解剖します!担当するのは、言語学者であり、大学で学生に日々英語を教えているクレシーニ・アンさん。“言葉が大好き過ぎる”アンちゃんと一緒に、微妙な違いを楽しみましょう!

今回のテーマ:surprisedとshocked

ヤッホー!!福岡県在住アメリカ系日本人のアンちゃんです。2年前、私は日本国籍を取得し、日本人であることが誇りです。私は人生の半分をアメリカで、もう半分を日本で暮らしている。英語も日本語も流暢に話せる、と言いたいところだけど、英語は最近ちょっと怪しいかな……。

このENGLISH JOURNALでは8年間、さまざまなテーマの連載を持ち、記事を書いてきた。和製英語、日本語に訳しにくい英語、英語に訳しにくい日本語、オノマトペ、医療用語、死語などなど。直近の連載では「日本人になる旅」について書いた。

そして今回、私の本業は大学の英語教員なので、自身のルーツに戻ってみることにした。取り上げるのは、「日本人がよく混乱する、似たような英語の単語」についてだ。

  • see / watch / lookは結局、どう違うの?
  • speak / talkはそれぞれどういう時に使えばいい?
  • angry / upset / annoyed、意味はなんとなく分かるけど、やっぱりよく分からん!

こんな風に、日本人が振り回されている単語はたくさんあると思う。それをこの連載で解決していくバイ!

記念すべきトップバッターは、surprisedとshocked です。日本語と英語では使い方が微妙に異なるこの2つについて、アンちゃんと一緒に違いを楽しもう!

「ショック」は英語だとポジティブにも使える?

去年、当時高3の娘が学校から帰ってきた後、「ね、ママ。日本語と英語の面白い違いに気づいた!」と言った。私はいつも日本語と英語の面白い違いを探しているから、「なになに?」と興味深く聞き返した

娘曰く、「今日さ、テストが返ってきた。自信がなかったけん、絶対に落ちたと思ったけど、びっくりしたことにめっちゃ良い点数が取れた。それで友達に『え!?めっちゃ良い!ショック!』と言ったら、友達が混乱した顔で『ええ?なんで良い点数なのに“ショック”?』って聞いてきた。英語だと I’m so shocked I got a good score. と言うけど、日本語だとここで「ショック」とは言わないことに気づいたんだ」って。

ああ、確かに!日本語の「ショック」は悪い時しか使わないのに対して、英語で I’m so shocked は、良い驚きにも悪い驚きにも、そしてどちらでもない驚きにも使う

surprised も shocked も「驚いた」という意味だけど、shocked の方が「めっちゃ驚いた」というニュアンスを持つ。要は、 shocked は surprised のレベルアップ版です。

それぞれ日本語で表すなら、

  • surprised = 驚いた、びっくりした
  • shocked = ガチで・マジでびっくり、信じられない、とても大きな衝撃を受けた

こんな感じかな。

驚きの程度は違うけれど、surprised も shocked も、良い驚きのとき、悪い驚きのとき、そしてどちらでもない驚きのいずれにも使える。(強いて言うなら surprised の方がポジティブなイメージがあるくらい)

surprised と shocked の使い方【基礎編】

それでは、surprised と shocked のいろいろな使い方を見ていこう!

surprise と shock はどちらも名詞でもあり動詞でもあり、「驚いた」ことを伝える表現としてよく使われる。

What a big surprise!
驚いた!(=なんて大きな驚きだ!)

You really surprised me!
本当に驚いたよ!(=あなたに驚かされたよ!)

What a big shock!
めっちゃ衝撃だ!

It totally shocked me.
まったくもって驚いた。

surprised / shocked どちらも、シーンに応じて良い意味・悪い意味の両方で使えるけれど、shocked の方が驚きが大きい、レベルアップ版だと書いたよね。それを意識しながら例文を読んでみてね。

まずは、うれしいときなど、良い意味での驚いた場合の使い方です。

あの会社の内定をもらえたなんて本当にびっくりした。絶対に無理だと思ってたから。
I was really surprised that I got the job. I didn’t think I had a chance.

あの会社の内定をもらえたなんてもうガチで衝撃だった。絶対に無理だと思ってたから。
I’m totally shocked that I got the job. I didn’t think I had a chance.

My son surprised me by coming home from college on my birthday.
息子が私の誕生日にこっそり大学から帰ってきて、めっちゃ嬉しかった。

次に、悲しい・不快なときなど、悪い意味で驚いた場合の使い方。

あなたがそんな意地悪なことを言うなんて、本当にびっくりしたわ。
I’m really surprised that you would say such a mean thing.

あなたがそんな意地悪なことを言うなんて、信じられない(ほどショックだよ)。
I am totally shocked that you would say such a mean thing.

続いて、どちらでもなく、ただ「驚いた!」という場合はこんな例文になる。

I’m so surprised they broke up. I was sure they would get married.
あの2人が別れたなんてめっちゃびっくり。絶対に結婚すると思ってた。

I’m shocked that they broke up. I was sure that they would get married.
あの2人が別れたなんてマジで信じられない(ほど驚いた)。絶対に結婚すると思ってた。

surprised と shocked の使い方【発展編】

次は発展編として、驚きを表すためのさまざまなフレーズを見ていこう。

例えば、pleasantly surprised は「うれしい[心地良い]驚きだ」という意味で、こんな風に使える。

I was pleasantly surprised when my boss praised my work.
上司が仕事を褒めてくれて、思いがけずうれしかった。

他にも、次のような表現があるよ。

  • shock ~ to the core:(人)を心底驚かせる
  • shock ~ to death:(人)を死ぬほど驚かせる
  • shock the hell out of ~:(人)をめちゃくちゃびっくりさせる(※要注意)

His confession shocked me to the core.
彼の告白は私を心底驚かせた。

I was shocked to the core by how unfair the system was.
その制度の不公平さに私は心底驚いた。

I was almost shocked to death.
死ぬほど驚いた。

That horror movie shocked me to death.
あのホラー映画には死ぬほど驚かされたよ。

※スラングで、ちょっと下品だから使うのは要注意!フォーマルな場面では決して使わないこと。
It shocked the hell out of me.
ガチでびっくりしたわ。

また、knock という単語を使った「knock someone’s socks off:(人)をとても驚かせる、仰天させる/〔良い事をして〕(人)をとても感動・感心させる」という表現があり、これも結構カジュアルな表現なので、使うときは気を付けてね。

It knocked my socks off.
本当にびっくり仰天した。

surprised と shocked を超える驚きは「stunned」

surprised / shocked よりももっと「驚いた!!!」レベルのときには、stunned を使うといいかも。stun には「気絶させる、呆然とさせる」という意味があって、stunned はびっくりし過ぎて動けない、言葉が出ないくらいのレベルだということ。

surprised / shocked / stunned それぞれのレベルや意味をまとめるなら・・・

驚きの
レベル
英語ニュアンスや
意味
surprised最も一般的。「へえ~!」
「えっ!」くらいの感情。
驚いた、びっくりした
shockedsurprised よりも強い驚き。
ガチ・マジでびっくり、
信じられない
特大stunned驚き過ぎて言葉を失うレベル。
驚いて頭が真っ白、
呆然とする

stunned を使った例文

I was stunned when he told me he doesn’t love me.
彼が私を愛していないと告げた時、私は呆然とした。

I was stunned by the events of September 11.
9月11日の出来事に私は呆然とした。

I was stunned by his admission of guilt.
彼の罪の自白に私は死ぬほどびっくりした。

surprising / shocking / stunning の例文

-ed ではなく -ing のついた形(surprising / shocking / stunning)の文も見ていこう。

My daughter made the surprising decision to not go to college.
娘が大学に行かないという驚くべき決断をした。

It was the most shocking thing to ever happen to me.
それは私にとってこれまでで最も衝撃的な出来事だった。

It was a stunning turn of events.
それは驚くべき展開だった。

surprisingly / shockingly / stunningly の例文

続いて、-ly がついて副詞になると、次のように使える。

His reaction was surprisingly calm.
彼の反応は驚くほど冷静だった。

It was a shockingly cold-blooded crime.
それは驚くほど冷酷な犯罪だった。

She is stunningly beautiful.
彼女は驚くほどきれいだ。

まとめ:違いを知ればもっと楽しい

こんな風に、英語には surprise、shock、さらには stun を使った表現がたくさんある。意味は似ているが、驚きの程度やニュアンスに違いがある。一方で、日本語の「ショック」はほぼいつもネガティブな意味で使われる。

「テスト落ちちゃった・・・ショック!」
「マジで雨なの?ショック!」
「ええ?行けなくなったの?ショック!」
みたいな感じだ。

いずれにせよ、「言葉って面白い!」と思わない?冒頭で話したように、日本生まれ・日本育ちのわが娘でさえ、英語と日本語で混乱することがある。娘があの時言うべきだった日本語は、「ええっ、良い点取れた!ショック!」ではなく、「ええっ、良い点取れた!ガチびっくり!」だったのだ。

人間は外国語どころか、自分の母語でもわけ分からん時がある。でも、「いくら勉強してもずっと学ぶことがある」という現実は、決してがっかりすることではない。むしろ、喜ぶべき!死ぬまで言葉の魅力に触れることができる私たちは、本当にラッキーだ

そういえば、日本語の「ラッキー」と英語の「lucky」の使い方が違うことは知ってる?このまま話したいけど、字数オーバーになるとヤバいから、次回を楽しみに待っててね!


クレシーニ・アン
クレシーニ・アン

アメリカ・バージニア州生まれの日本の言語学者(海外語学研修・言語学)。学位は応用言語学修士(オールド・ドミニオン大学・2002年)。北九州市立大学基盤教育センターひびきの分室准教授。和製英語と外来語について研究している。作家、コラムニスト、ブロガー、コメンテーター、YouTuber、むなかた応援大使、3人の娘を持つ母。(写真:リズ・クレシーニ)

●ブログ:「アンちゃんから見るニッポン
●Instagram:@annechan521
●X:@annecrescini


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