
英語講師とげまるさんが、TOEIC満点や国連英検特A級合格を達成するまでの日々を詳細に追った連載もいよいよ最終回。スコアの低下や不合格を経験しながらも、とげまるさんが歩みを止めること決してありませんでした。今回も実際に活用した教材や具体的なトレーニング方法など、今日から実践できる情報が満載です。
目次
TOEIC満点という頂上へのルート
皆さん、こんにちは。とげまるです。いよいよこの連載も最終回。今回は、TOEIC900点突破から990点満点までの道のりをお届けします。
振り返ってみれば、900点越えは「山の5合目」。一気に頂上へ駆け上がったわけではなく、長い足踏みがあり、時に道を外れもしました。でも、その過程で私の英語学習の旅は、より豊かで厚みのあるものになったと言えます。
【足踏みの2017年】社会人生活の壁とスランプ
2017年、私は東京の学習塾に講師として就職。「教える仕事なら自分の学習時間も確保できるのではないか」と考えたのですが・・・すぐに「甘かった」と気づきます。
授業は夜の4時間だけとはいえ、準備が必要で、日中にはチラシ配りなどの仕事もあり、1日12時間労働になる日もザラ。TOEICの勉強も学生時代のようにはいかず、スコアは一時期、840点まで下がってしまったのです。

2017年から、2021年9月にTOEICで満点獲得
するまで長い足踏み期間となった。
(*編集部注:第1回掲載の推移表に追記して補足)
不調を立て直すため「多解き」に再着手
この時は、学生時代にやっていた「模試の多解き」(第3回参照)で、態勢を立て直しました。社会人となり自分で稼げるようになったので、公式問題集も新刊が出るたびに購入し、レベルの高い「韓国模試」にも取り組みました。
【「メガ模試」シリーズ】
とげまるさんが実際に使ったのが、スリーエーネットワークから刊行されている「メガ模試」シリーズ。
TOEICテストを知り尽くした、韓国で絶大な人気を誇るカリスマ講師キム・デギュン氏が精選した模擬試験。リーディングとリスニングが1冊に収録されている。訳と正答根拠の表示(Part 3・4・7)のみで、解説はゼロ。「とにかく大量の問題を解いて高得点を狙いたい」人のためのシリーズ。(参照:スリーエーネットワーク「メガ模試」ページ)
(*編集部注:下段のVOL. 1は現在「品切れ」状態となっているため、入手方法についてはスリーエーネットワークにお問い合わせください。Amazonでは購入可能となっていますが、価格が定価よりも高くなっているためご注意ください)
神崎正哉先生に“アクセス”して情報収集
教材情報などは、神崎正哉先生(神田外語大学准教授)のネットラジオや、熱心なTOEIC受験者のSNSで得ていました。このころTOEICは大ブームで、受験者のコミュニティーがとても盛り上がっていたのです。私も学習仲間を求めて、TOEIC対策専門学校のセミナーや、TOEIC愛好家の自主勉強会に参加するようになりました。
【神崎正哉先生について】
1967年神奈川県生まれ。神田外語大学外国語学部准教授。東京水産大学(現東京海洋大学)海洋環境工学科卒。24歳から6年間ロンドンで英語・英文学を学ぶ。2008年8月、テンプル大学大学院修士課程(英語教授法専攻)修了。・YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@KUIS_TOEIC
(このYouTubeチャンネルで、TOEIC公開テストの振り返り番組を配信している)
・ブログ:TOEIC Blitz Blog
・神崎先生の近刊:
『英語で読む スティーブ・ジョブズ[新版]』(神崎先生は編集協力・TOEIC英語対策、トム・クリスティアン/著、山久瀬洋二/キーワード解説、カール・ロズボルド/TOEIC英語対策)
『TOEIC L&R TEST パート5特急 基本の150 (TOEIC TEST 特急シリーズ)』(Daniel Warriner氏との共著)
そうして、スコアはコンスタントに900点台を出せるようになり、2017年9月には955点、11月にはIPテストで975点に到達。
【IPテストとは?】
「Institutional Programテスト」の略。大学や企業などの団体が主催し、所属する学生や社員を対象に実施される。個人で申し込む公開テストとは異なり、団体が日程や会場を設定。
過去の公開テスト問題を使うので、最新の傾向や難問が出にくいとされている。そのため、IPテストは公開テストより“格下”でIPテストの満点は本物の満点ではない、とみなす向きもあるものの、難易度は公開テストと同等で、スコアの信頼性も保証されている。・IPテストに関する情報:団体特別受験制度(IPテスト)|IIBC「TOEIC Program 団体受験のご案内」
大きな挑戦への決意もTOEICがきっかけだった
スコアが復調するにつれ、私はTOEICという試験自体の面白さに魅了され、「大学院で試験と学習モチベーションの関係を研究したい」と考えるようになりました。そこで2018年3月、大学院受験を目指すために学習塾を退職。
振り返ってみても、「思い切ったものだな」という言葉がぴったりです。先にお伝えしておくと、結果として大学院に進むことはできませんでした。けれど、退路を断って挑戦して良かったと思っています。
しかし、そこから再就職する2020年までは、精神的にも経済的にも苦しい時期でした。アルバイトはしていたものの生活はかつかつで、節約のために1日1食にして体重が50キロを割ってしまったほど。
それでもTOEICの受験料はなんとか捻出し、受け続けていました。むしろ、この時期が一番TOEICに熱中していたかもしれません。ただ、スコアは930点~950点台で停滞。
ここで私は予定外の「回り道」を選択します。しかし、結果的にそれが近道だったことがのちに分かりました。
【回り道の2018年】時事英語素材で「地力(じりき)」を上げる
前々回の記事でも触れたように、私が講師の仕事を志したのは、TOEIC界のレジェンド・神崎正哉先生と森田鉄也(モリテツ)先生への憧れからです。ネットラジオで聞くお二人の英語に感動し、「自分もいつかこんなふうに英語を操れるようになりたい」と強く思いました。
【森田鉄也(モリテツ)先生】について
武田塾英語課課長、武田塾国立校、豊洲校、鷺沼校オーナー。慶應大学文学部英米文学専攻卒。東京大学大学院言語学修士課程修了。TOEIC満点は110回以上。他にも、国連英検特A級、英検1級、Cambridge CPE、TOEFL iBT115点、IELTS 8.0など多数の資格を持つ。・YouTube:Morite2 English Channel
・X:Morite2(もりてつ) @morite2toeic
・森田先生の新刊・近刊:
『1カ月で攻略! 英検準1級』『1カ月で攻略! 英検2級』(どちらも2025年7月30日発売。 岡崎修平氏、斉藤健一氏との共著)
『TOEIC L&R TEST 言い換え超特急 正解の決め手77』(清田将吾氏、あ~る氏との共著)
神崎先生と森田先生、このお二人が共通して持っていた英語資格が、TOEIC990点、ケンブリッジ英検CPE、そして国連英検特A級。
そこで2018年の春、大学院入試とTOEIC満点を目指す一方で、国連英検へのチャレンジも始めたのです。
【国連英検とは?】
正式名称は「国際連合公用語英語検定試験」。公益財団法人日本国際連合協会が主催し、国際社会で活躍できる英語力と国連の知識を測ることを目的とした英語資格試験で、年2回、全国の主要都市で実施されている。
特A級、A級、B級、C級、D級、E級の6つの級があり、最難関の特A級では英語による論文作成や面接(口述試験)が課され、英語で国際問題について論理的に議論し、自分の意見を明確に述べる力が要求される。
特A級の合格率は例年5%前後。合格者は国際会議や国連の現場で即戦力となるレベルとされる。
(参照:国連英検 : 日本国際連合協会主催 国際連合公用語英語検定試験
特訓① 英字新聞・雑誌はコツコツと「内容を英語でまとめる」
具体的な勉強法を挙げるなら、次の2点を学習の中心に据えたと言えます。
- The EconomistやForeign Affairs、Japan Timesといった英字新聞・雑誌の記事を日々読む
- CNNやBBCなどのニュース英語を精聴する
教材の英語よりも、生の英語にできるだけ多く触れることを意識したのです。
目安としていた読む量は、「平日は7記事、休日は10記事以上」。ただ読むだけではなく、段落ごとに要約を英語で説明し、読み終えた後に記事全体の概要を英語でまとめるようにしました。最初は知らない英単語ばかりで苦戦し、The Economistの1記事を読むのに3時間はかかっていました。
・【The Economist】WEBサイト
https://www.economist.com/・【Foreign Affairs】WEBサイト
https://www.foreignaffairs.com/
しかし、知らない単語を潰していき、一文一文をしっかりと把握する ―― これを地道に毎日続けることで、徐々に分かることが増えていきました。そして、読むこと自体も「楽しい」と感じられるようになったのです。
最終的には、内容を頭に保持しながら読む力がつき、ほとんど返り読みせずに英文を理解できるようになりました。
特訓② 英語ニュースは「シャドーイングとオーバーラッピング」
ニュース英語については、月刊誌『CNN English Express』を活用。ニュースを1日4本、シャドーイングとオーバーラッピングするようにしました。
【シャドーイングとオーバーラッピングの違い】
- シャドーイング:手本となる音声を聞きながら、少し遅れて追いかけるように発話するトレーニング。スクリプトは見ない。
- オーバーラッピング:手本となる音声と同時に、スクリプトを見ながら発話するトレーニング。
また、YouTubeで「BBC News」も利用。提供されているニュース動画の多くは3~5分程度の長さです。「1日5本視聴」することを自分に課していました。
これが効いたのがTOEIC。というのも、まとまった分量の英語を耳から脳に入れて即時に処理する良い練習になり、Part 7(長文読解)を解くスピードの向上にもつながったのです。
【月刊誌『CNN English Express』】
・WEBサイト:https://ee.asahipress.com/
・最新号:https://ee.asahipress.com/latest-issue/【「BBC News」】YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@BBCNews/videos
(*上記は、2025年7月4日時点での最新号)
こうしたトレーニングの結果、TOEICでも、2018年後半からは980点台がコンスタントに取れるようになり、2019年3月には満点まであと一歩の985点に達しました。
【頂上到達の2021年】TOEIC満点達成、国連英検特A級合格
スコア推移表で線が途切れている2020年は、コロナ禍でTOEICが定員制になった時期です。この年は、就活生など本当にスコアを必要としている人に受験の権利を譲るため、TOEICを受験しませんでした。
それから、2月に再就職した予備校での授業を抱えていたこともあり、「今は実力を蓄える時期だ」と割り切って、英文記事・英語ニュースを使った学習ルーティンを続けることにしたのです。
また、英検1級勉強会、語彙研究会、リーディング勉強会など、さまざまな勉強会を立ち上げてSNSで知り合った方たちと共に学んだことも、自分にとって大きかったと言えます。バックグラウンドはさまざまでも、同じ目標を持つ仲間を得たことで、人とのつながりの大切さを再認識できましたから。
そうして、いつしか、英語で誰かを見返したいという気持ちも消え、純粋に英語を楽しめるようになっていました。
その後、TOEIC受験は2021年1月に再開。数回のアップダウンを経て、9月、ついに990点満点に到達できたのです。その1カ月前の8月には、2度目の挑戦で国連英検特A級にも合格。

英語学習を本格的に開始して約6年、積み上げてきたものは間違っていなかったと確信できた瞬間でした。
英語を学ぶ人に伝えたい大切なこと
「英語の山」を踏破できた4つの理由
私は決して頭が良くも、器用でもありません。精神的・肉体的に弱くなるときもあります。それでも、6年でTOEIC満点と国連英検特A級の山を制覇できた要因は、以下の4つに集約されると思います。
明確な目標設定と動機の維持
「なぜやるのか」「どこを目指すのか」を常に意識し、目標を具体的に設定したこと。挫折しそうなときはこの原点に立ち返り、学習のモチベーションを維持するようにしました。学習プロセスの工夫 + PDCAを回す
先人の学習法を、自分に合う形にアレンジして実践。スコア分析や復習を通じて弱点を見付け、克服していきました。方法の選択、実行、振り返り、改善というPDCAを常に回していました。学習量の確保と習慣化
学習内容をルーティン化し、さらに日々SNSでその実行を宣言・報告すること。生活の一部として習慣化させることで、社会人になっても学習時間を確保しました。アウトプットとコミュニティーの活用
ブログで学習記録をつけたり、SNSで学習仲間と交流したり、勉強会へ参加したりすることで、新しい情報や学習に向かう刺激を得ることができました。
学び続けながら、今度は誰かの力にもなりたい
ただ、SNSには闇もあります。私は2018年に「とげまる」として、当時のTwitter(現X)で発信を始めたのですが、TOEICで高得点が取れるようになり、フォロワーが増えるにつれ、応援だけでなく、「これだけ勉強しているのに満点が取れないなんて大したことないですね」「スピーチの声や発音が気持ち悪い」「資格しか誇れるものがないなんて空虚」といった、心ない誹謗中傷も届くようになりました。
そうしたメッセージは今でもたまに届くので多少心は揺れますが、いつも通りの学習ルーティンを崩さないようにしています。だって、人の人生をのぞき込んで干渉してくる行為こそ、空虚です。そんな人たちの声を気にして歩みを止めるなんて、もったいないですよね。
私は、夢に向かって努力する人を応援したい。講師として受験生を合格に導くだけでなく、自分自身がチャレンジする姿、失敗しながら前に進む姿を発信し続けることで、誰かひとりにでも「自分も頑張ろう」と思ってもらえたらいいなと思っています。
TOEIC990点はゴールではなく、一つの通過点でした。この過程で得た経験や、支えてくれる人たちとのつながりこそが、何よりの財産です。
私はこれからも自分のペースで、英語学習を楽しみながら歩み続けたいと思います。EJ読者の皆さん、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
あなたの英語学習の道のりも、きっと豊かなものになりますように。
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