多くの人がつまずいたり苦手とする英文法のポイントを、現役高校英語教師・大竹保幹さんが分かりやすく&丁寧に解説する連載。今回取り上げるのは「接続詞」です。まずは and / but / because といった単語が浮かぶのではないでしょうか。文字通り語句や英文を「つなぐ」ものですが、どのように使いこなせばよいのか見ていきましょう!
パラダイス行き切符を手に入れる問題
英文法といえば名詞や動詞、形容詞といった文法用語がすぐに思い浮かびますが、今回の主役は単語や文のつなぎ役である「接続詞」です。「使い方にどこか難しいところがあったかな」と思った人は、まずは間違い探しに挑戦してみましょう。意外なところで抜けている知識が見つかるかもしれませんよ。
問題
次の (1) ~ (5) の英文について、正しいかどうかを判断してください。
・ 正しい:〇
・ 間違っている:×
・ ちょっと怪しい:△
(1)
I can’t come to the party tonight. Because my wife says no.
(2)
For I have known her for over ten years, you can trust her.
(3)
Global warming is quite a big problem, however we should try to solve it.
(4)
The children were swimming in the pool even if it was rainy.
(5)
Our teacher told us once again we should study hard to enter the university.
単語や文をつなぐことのできる接続詞は、「一つの文に複数の情報を加えたいとき」や「話の流れを変えたいとき」に非常に役に立ちます。例えば、and なら「AとB」のように二つの要素を並べることができますし、but を使えば「でも、本当は~なんだ」という具合に話の流れを逆転させることだってできます。接続詞を多く知っているだけ、お話上手になれるというわけです。
しかし、他の文法ほど複雑ではないにしても、接続詞にだって知っておかなくてはならない使い方があります。接続詞と似たような意味を持つ副詞との違いについても知らないといけません。日本語訳では意味が同じように感じる but と however などについて、正確に使い分ける自信はありますか?
基本的なことから少し応用的なことまで、一緒に確認していきましょう。
解答と解説
(1)
【答え:△】
I can’t come to the party tonight. Because my wife says no.
↓
I can’t come to the party tonight, because my wife says no.
今夜はパーティーには行けないよ。だって妻がダメだって言ってるから。
because(なぜなら~)は物事の理由を説明するときに使うとても便利な語です。なぜこの人の妻がダメだと言っているのかまでは分かりませんが、そういうこともあります。
実はこの英文、このままでも良いと言えば良いのですが、それはあくまでも「話し言葉」のときだけ。「書き言葉」としては直さなくてはいけないところがあります。
❖ 複数の要素を並べる「等位接続詞」
とても基本的なことですが、接続詞には語句や文などを並べて情報を付け加える役割があります。
You and I are friends.
君と僕は友達じゃないか。Naoto drank too much, but he went back home safely.
ナオトは飲み過ぎたが、無事に家に帰った。
上の例文では名詞を並べて主語を二つにし、下の例文では文と文をつなげて一つにまとめています。A and B(AとB)は情報を並列しますが、A but B(AだがB)ではただ並べるだけでなくBの方を強く伝えているような印象ですね。
このように複数の要素を並べる接続詞を「等位接続詞」といいます。似たもの同士を並べるので、beer and wine(ビールとワイン)は良くても beer and delicious(ビールと美味しい)はいけません。つなげるものの品詞は揃えるのが基本だからです。ちなみに3つ以上の要素をつなげるときは「A, B and C」のように、最後にだけ接続詞を使います。
❖ メインの文にぶら下げて使う「従属接続詞」
接続詞にはもう一つ知らなくてはいけない種類があります。
If it rains tomorrow, we will stay home.
もし明日雨が降ったら、私たちは家の中にいようかな。
And や but のときと違って、if ~(もし~なら)はつなげたい文の前で使われます。「if it rains tomorrow(もし明日雨が降ったら)」が一つのパーツになっているので、次のように前後を入れ替えても意味はほとんど変わりません。
We will stay home if it rains tomorrow.
このような使い方をする接続詞を「従属接続詞」と言って、主文にぶら下がる形で使われます。あくまでも主文がメインとなっているというのが大切なところです。
そのため、同じく従属接続詞であるwhen ~(~のとき)は、主文がなくなるとモヤっとした意味になってしまいます。
My mother was cooking dinner when I came home.
私が家に着いたとき、お母さんは晩御飯を作っていました。When I came home.
私が家に着いたとき。
比べてみるとよく分かりますが、主文がないだけで「家に着いたときに何があったんだ?」と聞き手に疑問が残る不思議な文になってしまいます。もちろん、「お母さんはいつ料理していたの?」と誰かに聞かれたのであれば、「家に着いたとき」とだけ答えても問題はありません。しかし、それはあくまでも会話のときだけなのです。
前置きが長くなりましたが、(1) の問題文を見ていきます。「I can’t come to the party tonight. Because my wife says no.」でしたね。because ~(~なので)は理由を表す従属接続詞です。そのため、使うときは if や when と同じように二つの文をつなげて書きます。問題文のように2文に分けて書かれていることがあるとすれば、それは会話の「やや長めの空白」を表現するためだと考えましょう。
解答(再掲)
【答え:△】
I can’t come to the party tonight. Because my wife says no.
↓
I can’t come to the party tonight, because my wife says no.
今夜はパーティーには行けないよ。だって妻がダメだって言ってるから。
(2)
【答え:×】
For I have known her for over ten years, you can trust her.
↓
You can trust her, for I have known her for over ten years.
彼女のことは信用しても大丈夫です。というのも、私とは10年以上の付き合いがありますので。
理由を表すときに使う接続詞は because ~(~なので)が代表的ですが、他にも since や for なども使われることがあります。どれも似たような意味を持つ語ですが、それぞれの違いをどこまでご存じでしょうか。
❖ because / since / for の違い
Saori is absent today because she has a fever.
熱があるので、サオリさんは今日はお休みです。
出来事の因果関係をはっきりと示したいときは because の出番です。「サオリさんが休んでいること」が「熱があること」に関係していると、ちゃんと伝えられていますよね。Because she has a fever, ... のように文頭で使うこともできます。ただし、そもそも because は「なんでこうなったのか」という理由や原因を相手に強く伝えたいときに使われるので、普通は例文のように文の後ろに置かれます。英語では、相手に伝えたい情報は文の最後に置くのが基本だからです。
Since she has a fever, Saori is absent today.
(ご存じのように)熱があるので、サオリさんは今日はお休みです。
since も理由や原因を表すときによく使われますが、because と違って「相手がすでに知っていること」であることが原則です。きっとサオリさんは、昨日発熱して早めに帰宅したのでしょう。聞き手はそのことを知っているので、「まだ熱が続いているから、今日は休みだってよ」と言っている感じです。理由の部分は相手にとって新しい情報ではないので、文頭で使われることが多くなります。
Naoto was drunk, for he missed his stop.
ナオトは酔っぱらっていたんだよ。だって、降りる駅を乗り過ごしちゃったんだから。
この例文では、「乗り過ごすこと」が「酔っぱらっていること」の理由とは言い切れないので、前後に因果関係があるわけではありません。こういうときに使われるのが for ~(というのも~だからだ)です。
for は自分の考えや主張の根拠を補足的に付け加えます。そのため、必ず文の後ろで、しかも「,(カンマ)」で区切ってから使わなくてはいけません。because も同じように使うことができますが、この意味合いでは for と同じように文末に置かれます。これは上級者向けの知識ですね。
(2) の問題文「For I have known her for over ten years, you can trust her.」は for が文頭にあるので、順番を入れ替えなくてはいけません。資格試験などのための文法知識としては「for は文末で使う」くらいで十分ですが、どうして文末でなくてはいけないのかまで知っておくと、理屈から文法知識を固めていくことができますね。
解答(再掲)
【答え:×】
For I have known her for over ten years, you can trust her.
↓
You can trust her, for I have known her for over ten years.
彼女のことは信用しても大丈夫です。というのも、私とは10年以上の付き合いがありますので。
(3)
【答え:×】
Global warming is quite a big problem, however we should try to solve it.
↓
Global warming is quite a big problem, but we should try to solve it.
地球温暖化はかなり大きな問題だが、解決に向け努力をするべきだ。
「~だが・・・だ」のような「逆接」を表す語は but 、however 、though などたくさんあります。ただ、今ここに挙げた3語だけでも品詞や使い方が違うため注意が必要です。
❖ but / however / though の違い・使い方
- Some people say English is easy to learn, but I don’t think so.
- Some people say English is easy to learn. However, I don’t think so.
英語は学びやすいと言う人がいるけれど、私はそうは思いません。
どちらも同じことを伝えている英文ですが、品詞の違いによって使われ方が異なります。but は接続詞なので二つの文をしっかりとつないでいますが、however は副詞なので文と文をつなぐことはできません。そのため、however は文頭で使われているのです。
ちなみに、But I don’t think so. のように but を文頭で使うこともあるのですが、これは正式な書き言葉では避けられます。and 、but 、so などの接続詞は、やはり何かと何かを結ぶのが本来の役割だからです。
Though some people say English is easy to learn, I don’t think so.
英語は学びやすいと言う人がいるけれど、私はそうは思いません。
逆接を表す接続詞に though ~(~だけれども)や although ~(~だけれども)がありますが、こちらは従属接続詞なので when や if と同じ使われ方をします。though の後ろには「自分が反論したい事実」が示されることになります。
(3) の問題文「Global warming is quite a big problem, however we should try to solve it.」では however が接続詞のように使われてしまっています。一番簡単な直し方は but に変えることでしょう。それか、一度文をピリオドで区切って、However, we should try to solve it. としても大丈夫です。
解答(再掲)
【答え:×】
Global warming is quite a big problem, however we should try to solve it.
↓
Global warming is quite a big problem, but we should try to solve it.
地球温暖化はかなり大きな問題だが、解決に向け努力をするべきだ。
(4)
【答え:×】
The children were swimming in the pool even if it was rainy.
↓
The children were swimming in the pool even though it was rainy.
たとえ雨が降っていても、子どもたちはプールで泳いでいた。
「たとえ~でも」という日本語に対して、 even if ~ や even though ~ などの表現が使われることがあります。しかし、日本語訳こそ似ていますが二つの意味はだいぶ違っているので、ちゃんと使い分けなくてはいけません。
❖ even if / even though を使い分ける鍵
ここでポイントになるのは even です。even にはそばにある語の意味合いを強調する役割があるので、「~でさえ」とか「~すら」など色々な訳語が与えられますが、なくなっても英文として困ることはあまりありません。
つまり、even if と even though の使い分けに迷ったときは、if と though の意味で考えるとすっきりするということです。
【×】The children were swimming in the pool if it was rainy.
もし雨が降っていたら、子どもたちはプールで泳いでいた。(?)
「泳いでいた」というのは実際に起こった出来事なので、仮定を表す if だとうまく理解できません。
【〇】The children were swimming in the pool though it was rainy.
雨が降っていたが、子どもたちはプールで泳いでいた。
事実を元にして「~だが」という逆接を作るのは though の得意とするところでしたね(問題 (3) 参照)。だから、(4) の英文「The children were swimming in the pool even if it was rainy.」は even though にしなくてはいけないのです。though だけだと「雨が降っていたが・・・」と淡々と伝えている感じですが、even though なら「たとえ雨が降っていても・・・」くらい少し大げさに話をすることができますよ。
解答(再掲)
【答え:×】
The children were swimming in the pool even if it was rainy.
↓
The children were swimming in the pool even though it was rainy.
たとえ雨が降っていても、子どもたちはプールで泳いでいた。
(5)
【答え:△】
Our teacher told us once again we should study hard to enter the university.
↓
Our teacher told us once again that we should study hard to enter the university.
大学へ行くために頑張って勉強しなさい、と先生は私たちにもう一度言った。
大学受験は高校生にとって重要な目標の一つになっています。人にもよりますが、毎日休むことなく何時間も勉強することになるので、体力的にも精神的にも大変です。だから、そんな受験勉強をもう一度することになるのは困ります。先生、お願いなので that を入れてください!
tell(言う)やthink(考える)などの動詞は that ~(~ということ)と組み合わせることで「~と言う」「~と考える」という意味を表すことができます。that の後ろに主語と動詞を伴うので、この固まりを that節と言います。
He told me that he belonged to the American football team.
彼はアメフトのチームに所属していると言った。I think that he is a nice teacher.
彼は良い先生だと私は思う。
上の例文は「彼が私に言ったこと」の内容を、下の例文は「私が思っていること」の内容を下線部の that節で表しています。文と文をつなげているので、この that も従属接続詞です。便利なのは、この that は話し言葉などでは省略することができることです。
He told me he belonged to the American football team.
I think he is a nice teacher.
He told me 、I think の後に少し間を入れて話すことで意味の区切りが分かるので、わざわざ that を入れなくても十分に理解することができるというわけです。
❖ that節であいまいさを解消
それでは、書き言葉のときはどうでしょうか? 読み手にとって誤解がないように伝えることはできるでしょうか?
実は、(5) の問題文「Our teacher told us once again we should study hard to enter the university.」は意味があいまいで二つの解釈が存在します。that を補って意味の区切りを表してみましょう。
Our teacher told us once again (that) we should study hard to enter the university.
大学へ行くために頑張って勉強しなさい、と先生は私たちにもう一度言った。Our teacher told us (that) once again we should study hard to enter the university.
大学へ行くためにもう一度頑張って勉強しなさい、と先生は私たちに言った。
that を入れる位置によって、once again(もう一度)の捉え方がずいぶんと変わってきます。私たちがあまりにも勉強しないから先生がもう一度言ったのか、それとも、大学にもう一度行くよう言ったのか・・・。常識的には前者ですが、このようなあいまいさを避けるためにも、書き言葉では that を省略しないのが鉄則です。yesterday(昨日)、last year(昨年)といった副詞表現と一緒に使うときにはよく注意をしましょう。
解答(再掲)
【答え:△】
Our teacher told us once again we should study hard to enter the university.
↓
Our teacher told us once again that we should study hard to enter the university.
大学へ行くために頑張って勉強しなさい、と先生は私たちにもう一度言った。
まとめ
「接続表現」は単語の意味を覚えれば使えるようになる、という印象が強い分野です。文頭の but を避けるとか、because と since を使い分けるなど、正直どっちでもいいではないかと思ってしまうかもしれませんが、英文法上級者を目指すみなさんはここで適当になってはいけません。細かいところまで意識して、素敵な英語を使えるようになりましょう。
大竹保幹さんの本
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