英語の「比較」:-er、-estへの変化だけじゃない!細かい法則もマスターできるクイズ5問【大竹保幹の英文法パラダイス】

現役高校英語教師、大竹保幹さんの連載「英文法パラダイス」。英文法で多くの人が間違えたり苦手とするポイントを、楽しく丁寧に解説していただきます。今回のトピックは「比較」。-er や -est の形に変化させて表現する、と学校で学びますよね。シンプルな文法に見えますが・・・細かいミスをする人も少なくないとのこと。一体どこでつまずいてしまうのか、5問のクイズに挑戦し、解説を読みながら「比較」についてマスターしましょう!

パラダイス行き切符を手に入れる問題

英文中の(   )に当てはまる語句を4つの選択肢から選ぶ、というのは英文法の勉強としては基本中の基本です。でも、それだけで文法がしっかりと頭に入るなんてことはありません。次は並べ替え問題、そしていずれは英文の間違い探しに挑戦することで段々と知識が定着したり、自信になったりするものです。

英文法パラダイスでは英文に下線部などありません。正しい英文なのか、どこか間違っているのか。自分の文法知識を総動員して挑戦してみてください。

問題

次の (1) ~ (5) の英文について、正しいかどうかを判断してください。
・ 正しい:〇
・ 間違っている:×
・ ちょっと怪しい:△

(1)

I like curry 100 times as much as my father.

(2)

She was disappointed because no more than eight people came to her birthday party.

(3)

The more we study English, the more we will be interested in English.

(4)

Be careful. This river is the deepest around here.

(5)

I think this is the better guitar of these two.

今回は、覚えなくてはいけない形が多い「比較」がテーマです。形容詞や副詞を -er や -estに変化させることで「〜よりも」「一番〜」などの意味を表すことができるのでした。比較は形の変化だけを見ればとてもシンプルな文法なのですが、学習が進むにつれて細かいところでミスが多くなってきます。

学習者を苦しめているのは一体どんなところなのでしょうか。解説でしっかりと確認していきましょう。


解答と解説

(1)

【答え:△】
I like curry 100 times as much as my father.
   ↓
I like curry 100 times as much as my father does.
私はお父さんの100倍カレーが好きよ。

(1) の英文は文法的に間違っているわけではないのですが、このままだとお父さんがあまりにもかわいそうなことになるかもしれません。

日本語訳をじっくりと読んでみましょう。意味が2通りに解釈できることに気がつきましたか? 実はこれ、英語も日本語も2通りに解釈できてしまう曖昧な文なのです。

比較の基本は「比べるものの形をそろえること」です。次の例文を見てください。

Yuri is much smarter than Naoto.
ユリナオトよりはるかに頭がいい。

YuriとNaotoを比べているのは明らかですが、それは比べる対象がどちらも名詞(ここでは人の名前)でそろえられているからです。

❖ 比較するものの形をきちんとそろえる

では次の場合はどうでしょうか。

The population of Norway is almost as large as that of Hokkaido.
ノルウェーの人口北海道(の人口)とほとんど同じくらいです。

この例文では、下線部のthe population of Norway(ノルウェーの人口)とthat of Hokkaido(北海道の人口)を比べています。ちなみに、このthatはthe populationという語の繰り返しを避けるために使っているので、どちらも「the population of 名詞」の形と言えますね。

日本語では「ノルウェーの人口は北海道と同じくらい」と言っても大きな違和感はありませんが、英語では形をそろえる。そういう作法なのです。

ここで本題の英文 (1) について考えてみましょう。

I like curry 100 times as much as my father.

回比べているのは何と何でしょうか? as以下がmy fatherという名詞だけであることから、比べている対象の候補は・・・なんと2つもあります。

もしお父さんをcurry(カレー)と比べているのだとしたら、「お父さんなんか嫌い。カレーの方が100倍好き」という具合で、親としてはただただ悲しくなる話になってしまいます。

そうならないために、I(私)と比べるようにしなくてはなりません。「私がカレーを好き」な気持ちと「お父さんがカレーを好き」な気持ちを比べるのですから、文頭のI likeに合わせてas以下をmy father doesとすると、どちらも「SV」の形で同じになりますね。

I like curry 100 times as much as my father does.
私はお父さんのカレー愛よりも100倍カレーが好きなの。

比べるものの形が異なるだけで思わぬ誤解を生むことがあります。形は慎重に整えましょう。

そしてもう一度、元の英文と解答を確認してしっかり定着させてくださいね。

解答(再掲)
【答え:△】
I like curry 100 times as much as my father.
   ↓
I like curry 100 times as much as my father does.
私はお父さんの100倍カレーが好きよ。

(2)

【答え:〇】
She was disappointed because no more than three people came to her birthday party.
彼女は、自分の誕生日会に3人しか来なかったのでがっかりした。

比較を使った熟語は似たようなものが多く、出てくるたびに「これどんな意味だっけ」と急に不安になったりするものです。今回のno more than ~(~だけ、たった~)はnot more than ~(~より多くない)とかno less than ~(~も、~ほど多くの)などと混同してしまうことがあるのではないでしょうか。

最終には「覚えるしかない」ということになるのかもしれませんが、no more系だけでも整理をしてみましょう。

❖ 比較級の前に much / a little / no が付くとそれぞれどうなる?

まず知っておいてほしいのは、比較表現の直前にmuch(はるかに)などを入れることでどのくらい差があるのかを表すことができるということです。

Your room is larger than mine.
君の部屋は僕のよりも広いよ。

Your room is much larger than mine.
君の部屋は僕のよりもずっと広いよ。

どちらの英文もyour roomのほうが広いことを伝えていますが、muchがあるとその差が強調されます。もちろん、差がほんの少しのときも同じ位置に他の語を入れることになります。

Your room is a little larger than mine.
君の部屋は僕のよりも少しだけ広いね。

Your room is no larger than mine.
君の部屋は僕のより広いって言うか、むしろ同じだよ。

a littleは差が「少しだけある」ときに使い、noは「差がまったくない」ときに使われます。面白いのは、noには否定的な意味が加わるので「広いどころかむしろ僕の部屋と同じくらい狭いだろ」くらいになるという点です。なるほど、noが付くと形容詞の意味合いが否定的に解釈されるのですね。

He is no better than a thief.
彼は泥棒同然だよ。

I have no more money than you have.
僕は君と同じくらいのお金しか持ってないよ。

彼のことを「泥棒よりも良い人どころか、むしろ同じようなものだ」と言ってみたり、持ち合わせのお金について「君よりも持っているどころか、むしろ同じくらい少ない」と伝えてみたり、と表現の幅がぐっと広がりそうです。

熟語として覚えてもいいのですが、このように理屈から整理すると覚えやすさは変わりますね。

(3)

【答え:×】
The more we study English, the more we will be interested in English.
   ↓
The more we study English, the more interested we will be in English.
英語を勉強すればするほど、ますます英語に興味を持つようになるだろう。

嫌々始めた英語も分かってくると「結構楽しいじゃん」と思えてくるものです。それでも、興味を持ってくれて「英語の勉強自体が趣味です」というレベルになるまでは時間がかかりますよね。英語教師が日々悩んでいることです。

比較を使った構文で「~するほどますます…」というものがあります。形は「The 比較級 ~, the 比較級 …」であるというのは知っている人も多いはずです。

❖ 「The 比較級 ~, the 比較級 …」のときは“離れていないか”要注意

ただ、この表現は比較級になる形容詞や副詞が長いときには注意が必要です。

We will be interested in English.
私たちは英語に興味を持つようになるだろう。

We will be more interested in English.
私たちは英語にもっと興味を持つようになるだろう。

非常に基本的なことですが、長めの形容詞や副詞は -er ではなくmoreを加えることで比較級になります。そのため、「the 比較級」の形は the more interestedとなり、moreとinterestedが離れることはありません。これ、当たり前のことなのですが、いざこの構文を使おうとすると間違えることの多いポイントなんです。

他にも形容詞が名詞とつながっているときも注意してくださいね。

(〇)
The more books you read, the more you will understand the world.
本を読めば読むほど、世界のことをもっとよく分かるようになるでしょう。

(×)
The more you read books, the more you will understand the world.

many books(たくさんの本)という形容詞と名詞の組み合わせが「the 比較級」によって the more booksとなったわけですから、これらが離れ離れになることはありません。どの表現から変化したのかをイメージすることが大切です。

では、もう一度問題文と解答を振り返っておきましょう。moreとinterestedは離れることはない、でしたね。

解答(再掲)
【答え:×】
The more we study English, the more we will be interested in English.
   ↓
The more we study English, the more interested we will be in English.
英語を勉強すればするほど、ますます英語に興味を持つようになるだろう。

(4)

【答え:×】
Be careful. This river is the deepest around here.
   ↓
Be careful. This river is deepest around here.
気を付けて。この川はこの辺りが一番深いから。

「一番~」なら最上級を使って「the ~est」という形にする。だからthe deepestで良いはずだ。――たしかに普通ならそれで全く問題ないのですが、今回は違います。やや上級者向けな使い分けですが、最上級には注意しなくてはいけない形があるのです。

一般的に最上級は、ある範囲や集団の中で一番であることを伝える形です。

Naoto is the happiest man in the school.
ナオトは学校で一番幸せな男だ。

Naoto is the happiest man of the five.
ナオトはこの5人の中では一番幸せな男だ。

「一番幸せ」だけだと「世界で一番の幸せ者」という思い切った表現に思われかねないので、in the school(学校で)やof the five(5人の中で)のように範囲や集団を付けるのが普通です。いずれにしても、これらは「他の人たちと比べている表現」です。

❖ 最上級でも the を付けないケース

しかし、幸せの度合い比べは他人とは関係ないこともあります。「こんなことをしているときが私は一番幸せ」と言うときです。

Naoto looks happiest when he hangs out with Ken.
ナオトはケンと遊びに行くとき一番幸せそうに見える。

「本を読んでいるときでもなく、ご飯を食べているときでもなく、ケンという友人と遊びに行くときが一番幸せそうだ」と、ナオトのいろいろな場面を比べています。

このように同一人物の内面で比べているときには最上級であってもtheを付けることはありません。

(4)の英文は、この川のいろいろな場所同士を比べて、「このあたりが一番深い」と言っているので最上級であってもtheは付けません。

This river is deepest around here.
この川はこのあたりが一番深いぞ。

This river is the deepest (one) in this area.
この川はこの地域では一番深い(川)だぞ。

theは特定できる名詞に付くのが基本ですから、最上級と使うときはその後ろに名詞の存在が匂わされていると考えましょう。

では復習しましょう。複数の違う川の比較ではなく、同一の川のいろいろな場所を比べているので、最上級でもtheは付けないのが正解です。

解答(再掲)
【答え:×】
Be careful. This river is the deepest around here.
   ↓
Be careful. This river is deepest around here.
気を付けて。この川はこの辺りが一番深いから。

(5)

【答え:〇】
I think this is the better guitar of these two.
2つのうちだと、こっちのほうが良いギターだと思うよ。

普通、2つのものを比べるときには比較級を使って「-er than ~(~よりも…)」という言い方をしますが、この英文ではof the two(2つの中で)という集団を表す語句が使われています。

しかし、いつもと違う形であっても慌てる必要はありません。2つのものを比べるのが比較級(-er)で、3つ以上のものを比べるのが最上級(-est)という基本は変わらないからです。だから(5)の英文はこのままでいいのです。

❖ 比較級 -er で the が付くケース

ただ、一つ注意しておきたいのはtheの存在です。

I think this is the better guitar of these two.
この2本のうちだと、こっちのほうが良いギターだと思うよ。

I think this is the best guitar of these five.
この5本のうちだと、これが一番良いギターだと思うよ。

比べる対象を2本のギターに限定しているので、優れている方は当然特定できます。そのため最上級を使うときと同様に名詞にtheを付けることになるのです。

このような比較級を使った言い方のバリエーションが少しでも増えると、それだけ会話も豊かになりますね。

まとめ

比較は熟語や構文の種類が多く、すべてを覚えるのが大変な分野です。同じような意味を表す熟語も多いので、誰しも一度は「同じ意味ならこんな表現いらないじゃん」と投げ出しそうになったこともあるでしょう。

もちろん、はじめのうちは自分の使いやすい形だけを使えばいいのです。ただ、それに満足できなくなってきたら、「同じような表現」をたくさん覚えるときです。「同じような表現」は決して「同じ表現」ではありません。言い回しをわずかに変えることで、微妙なニュアンスを伝えているからです。

比較表現を身に付けて、英語のレベルを一段階上げてみませんか?


大竹保幹
大竹保幹

明治大学文学部文学科卒業。神奈川県立多摩高等学校教諭。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。著書に『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』『まんがでわかる「have」の本』(いずれもアルク)『APPLAUSE LOGIC AND EXPRESSION Ⅰ~Ⅲ』(開隆堂出版)など。


大竹保幹さんの本

『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』では、「仮定法」をはじめとする、子どもが抱きそうな疑問・質問に対して、ある程度答えられるように英文法の基礎を学ぶことができます。英語を学ぶ面白さに触れられる雑学的な小話も随所にあり、楽しみながら英文法を復習できます。

●画素材:from canva

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