日本では「新語・流行語大賞」や「JC・JK流行語大賞」などで今年を彩った流行語が発表されますが、海外でも「Word of the year」として、その年を代表する言葉が選ばれていることをご存じでしょうか。毎年さまざまな媒体が流行語を発表していますが、本記事ではOxford dictionaryとMerriam-Websterが選んだ2022年のWorld of the yearについて詳しく紹介します。
Word of the yearとは?
毎年日本のみならず世界中で「今年の新語・流行語」が選ばれ、話題になります。イギリスのOxford dictionaryやアメリカのMerriam-Websterなどの各媒体が、その年のWord of the yearを発表するのが恒例です。本記事では、その2大辞書が選んだ2022年のWord of the yearについてご紹介します。
Oxfordが選んだword of the yearは「goblin mode」
Oxford dictionaryが選んだ2022年のWord of the Yearは・・・
goblin mode
ゴブリンモード
「goblin mode」は俗語で、「in goblin mode」や「to go goblin mode」という表現でよく使われます。言葉の意味は「社会規範や期待を否定する形で、堂々かつ自己中心的、怠惰、ずぼらで強欲である行動のタイプ」です。2009年にTwitterで初めて見られ始めましたが、コロナ禍の2022年2月にSNSで流行し、多くの人々にツイートされた後、すぐに新聞や雑誌に掲載されました。
その後、多くの国で新型コロナウイルスのロックダウン規制が緩和され、人々がより定期的に家から出るようになったことから、この言葉は数カ月の間に人気になったことが選定された理由です。
goblin modeは、普通の生活に戻ることを拒否する人々や、SNS上で表現される達成不可能な美的基準や持続不可能な生活に反抗する人々の、一般的な雰囲気を捉えたものといえるでしょう。最近では、『The Times』紙の意見記事において「あまりにも多くの人が困難な年に反応してgoblin modeになってしまっている 」とも述べられました。
『The Guardian』のオンライン記事には、goblin modeをよく表すイラストと詳しい説明が載っているので、気になる人はぜひ読んでみてください。
Websterが選んだword of the yearは「gaslighting」
Merriam-Websterが選んだ2022年のWord of the Yearは・・・
gaslighting
ガスライティング
gaslightingとは、「些細な嫌がらせをしたり、故意に誤った情報を提示し続けたりすることにより、被害者が自身の知覚、記憶、正気などを疑うように仕掛ける心理的虐待の手法」を指す言葉です。
この言葉は、1938年の戯曲とそれを原作とした映画の題名『ガス燈』に由来しています。この物語では、夫の屋根裏部屋での謎の行動により、家のガス灯が暗くなるのですが、夫は妻に「照明は暗くなっていない」「自分の知覚を信じるな」と言い張ります。20世紀半ばにガス燈、つまりgaslightingが使われ始めた頃は、この映画のように欺瞞(ぎまん)を指していました。
しかし、近年におけるgaslightingの意味はより単純で広いものを指すこともあり、特に「個人的な利益を得るために、誰かをひどく惑わす行為や習慣」の意味で使われます。そして、この言葉はフェイクニュース、ディープフェイク、人工知能など、現代の欺瞞や操作に関連する他の用語となじんでいるようです。
他にも、誤解を招く意図的な陰謀という意味を含んでいるため、gaslightingはより大きな嘘を表現する際に有効です。また、個人間で行われることが多い嘘や、組織が関与することが多い詐欺とは異なり、gaslightingは個人と政治の両方の文脈で用いられます。口語だけでなく、フォーマルな文章や技術文書にも適しているといえるでしょう。
その他にはどんな言葉がノミネートされた?
metaverse(メタバース)
Oxford dictionaryでは第2位に「metaverse」がノミネートされました。metaverseは、ユーザーが互いのアバターや周囲の環境と没入型で相互作用する仮想現実環境であり、インターネット、ワールドワイドウェブ、SNSなどの拡張または代替となり得るものとして想定されることもあるといわれています。オックスフォード英語辞典に初めて「metaverse」が記録されたのは1992年で、アメリカの小説家、ニール・スティーヴンスンのSF小説『スノウ・クラッシュ』で扱われたことで辞典に載ったという経緯があります。
oligarch(オリガルヒ)
Merriam-Websterにノミネートされたoligarchという言葉は、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、アメリカやイギリスなどの国々がロシアの新興財閥であるoligarchと、その家族に制裁を加えたことで広がりました。oligarchの語源はギリシャ語であり、「少数者による支配」を意味します。英語でも同じ意味を持ちますが、ロシアなどソ連を継承した国特有の意味もあります。英語の音は「オリガーク」に近いので、発音するときは要注意です。
Omicron(オミクロン)
こちらもMerriam-Websterにノミネートされました。Omicronは日本でもよく聞く言葉でしょう。世界保健機関は新型コロナウイルスの亜種を指定するためにギリシャ文字(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタなど)を使用しており、2021年11月にギリシャ語のアルファベットの15文字目であるOmicronを使って、ウイルスの最も新しいバージョンを命名したことで一般的にも使われるようになりました。Omicronは、2022年に新型コロナウイルスで最も普及した形態の一つになったので、Word of the yearにノミネートされるのも納得といえるでしょう。
LGBTQIA
Merriam-Websterでノミネートされた「LGBTQIA」も、日本で聞く機会が増えました。「LGBTQIA」という略語は、昔からよく使われているLGBTQにIとAのアルファベットを加えたものであり、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア(自分の性的・性的アイデンティティーに疑問を持つ)、インターセックス(性器、染色体などが男性型・女性型の一方に統一されていない)、アセクシャル(他者に性的欲求や恋愛感情を抱かない)、アロマンティック(他者に恋愛感情を抱かない)、エイジェンダー(性差の枠組みにとらわれない)を表します。多様な性のあり方に適応するために生まれた言葉といえるでしょう。
日本とは全く異なる世界の流行語
今回はイギリスとアメリカのWord of the yearについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。海外の流行語は、日本の流行語とは大きく違うといえます。日本の新語流行語については、下の記事がおすすめです。皆さんも2022年の言葉として選ばれた「goblin mode」や「gaslighting」、その他にノミネートされた言葉を、ぜひ活用してみてください。
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