連載「使いこなせる!英会話頻出ワード」。言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが、「英語のネイティブスピーカーがよく使うけれど、日本語では理解しづらい言葉」を徹底解説します。今回はhouseやhome、placeなど、「家」「居場所」の表現をアンちゃんの経験とともにご紹介します!
homeって奥深い
今年の9月、3年ぶりにアメリカに行きました。 「やっと帰れてよかったね!」と周りの人に言われましたが、私はいつも「帰る」ではなく、「行く」と言うようにしています。なぜかというと、私のhomeは日本だからです。
けれど、アメリカにいる母と兄弟はWhen are you coming home?とよく聞いてきます。このhomeは「アメリカ」を意味していて、「いつアメリカに帰ってくるの?」ということです。一時的に帰る意味もあるし、ずっと帰るという意味もあります。果たして私の母は、どちらの意味で言っているのでしょうか?きっと母は、日本生活に疲れたアンちゃんがいつかアメリカに帰国すると期待する一方で、すぐ帰ってくることはないと納得するしかない、 と思っているのかもしれません。
英語のhomeは奥深い単語です。物理的な意味も、情緒的な意味もあります。日本語ではぴったり当てはまる単語がなかなか見つからないので、今日は英語のhomeにまつわる、さまざまな意味について話したいと思います。
さて、始めましょう!
houseとは物理的な建物
houseとhomeの違い、わかりますか?
まず、辞書でhouseについてどう書かれているのか見ていきましょう。
A building that serves as living quarters for one or a few families. Merriam-Webster
A building that people, usually one family, live it. Cambridge Dictionary
どちらの定義にもbuilding (建物)という英単語が入っています。ですから、houseは物理的な意味しかありません。例文を見てみましょう。
Wanna come over and hang out at my house tomorrow?
明日、うちへ遊びにこない?
We are having a birthday party at my house next Friday.
来週の金曜日、うちで誕生日パーティーをする。
Do you live in a house, or an apartment?
一軒家とマンション、どちらに住んでいるの?
My house is the one over there with the blue roof.
あそこにある、屋根が青いのが私の家だよ。
I just moved into a new house in Tokyo.
東京にある新築の家へ引っ越したばかりだ。
My house was built in 1950s, so it is absolutely freezing.
私の家は1950年代に建てられたから、本当に寒い!
homeとは落ち着く、安全な、快適な場所
では、homeとはどういう意味でしょうか?
辞書を見ていきましょう。
a place of one’s residence, house merriam-webster.com
the house, apartment, etc, where you live, especially with your family dictionary.cambridge.org
houseよりhomeの方が物理的に幅広い意味があります。つまり、houseは「一軒家」そして、homeは「住まい」です。どちらも「住まい」という意味がありますが、homeにはhouseにない「情緒的」な意味もあります。つまり、自分にとって、homeは落ち着く場所、安全な場所、快適だと思う場所です。
英語では、Love makes a house a home.といういわれがあります。「愛情によって、house(単なる建物)はhome(落ち着く場所)になる」 という意味です。
日本語には、「マイホーム」という和製英語があります。和製英語の「マイ」は「自分の」という意味なので、英語に訳すと、「my own home」になります。
I want to buy my own home someday.
いつかマイホームを買いたいなあ。
My own houseという人はいるかもしれませんが、間違いなくここでは「home」の方がよく使われます。感情も入っているし、おしゃれ感もあります。では、上記の例文をもう一度見ていきましょう。
Wanna come over and hang out at my house tomorrow?(〇)
Wanna come over and hang out at my home tomorrow? (×)
明日、うちへ遊びにこない?
We are having a birthday party at my house next Friday. (〇)
We are having a birthday party at my home next Friday. (×)
来週の金曜日、うちで誕生日パーティーをする。
Do you live in a house or an apartment? (〇)
Do you live in a home or an apartment? (×)
一軒家とマンション、どちらに住んでいるの?
My house is the one over there with the blue roof. (〇)
My home is the one over there with the blue roof. (×)
あそこにある、屋根が青いのが私の家だよ。
I just moved into a new house in Tokyo. (〇)
I just moved into a new home in Tokyo. (×)
東京にある新築の家へ引っ越したばかりだ。
My house was built in the 1950s, so it is absolutely freezing. (〇)
My home was built in the 1950s, so it’s absolutely freezing. (×)
私の家は1950年代に建てられたから、本当に寒い!
ただ、これは私だけの意見です。もしかしたら、houseをhomeと言い換える人がいるかもしれません。そして、homeは、少しおしゃれ感が入っています。ですから、
I just moved into a new home in Tokyo.
My home was built in the 1950s, so it’s absolutely freezing.
という人はいるかもしれません。もう一つ似たような単語は、placeです。これは、houseとhomeの両方のニュアンスが入る、暖かい「うち」というカジュアルなニュアンスです。
Let’s have the Christmas party at my place. It’s much bigger.
クリスマスパーティーは、うちでしよう。めっちゃ広いし。
Do you want to have dinner at my place or yours?
晩ご飯、うちとあなたの家のどちらで食べたい?
次の文章では、come overが「家に来る」という意味を含むのでこの文では下の例文のようにmy placeを省略しても問題はありません。
Wanna come over to my place and watch the Super Bowl?
うちでスーパーボールを見ようよ!
Some friends are coming over for dinner tomorrow night.
明日の夜、何人かの友達がご飯を食べにくる。
My son’s girlfriend is coming over to watch a movie.
息子の彼女が映画を観にうちに来る。
You guys should come over sometime!
たまには遊びに来てよ!
「家族」という意味のhome
homeは、「家族」という意味もあります。家族がいない保護犬や保護猫について話しているときに使う単語です。
I hope we can find a home for him soon.
新しい家族が早く見つかるといいね。
ずっと施設に入ったり、一時的にいろいろな里親に育ててもらったりした子供が、やっと養子に行ける日が来ると、
He found his forever home.
彼は永遠の家族を見つけた。
という情緒的な表現を使い、ずっと愛してくれる家族の所にやっとたどり着いた喜びを表します。
また、「家族を探している」という日本語は、英語で「Looking for a home」と言います。
「実家、故郷」
アメリカ人はよく故郷や実家をhomeと言います。冒頭で話したエピソードはまさにそのケースです。私の母はよくWhen are you coming home?と聞いてきます。これが意味するところは、「いつ、生まれ育った故郷に帰るの?」です。
I wanna go home for the holidays.
クリスマス休暇のときに、実家に帰りたいなあ。
I am going home for summer vacation.
夏休みに故郷へ帰る。
I haven’t been home in more than five years.
私は5年以上実家に帰っていない。
「実家」は文脈によって、英語の表現が変わってきます。例えば、
I’m from Kyoto.
Kyoto is my hometown.
My parents live in Kyoto.
私の実家は京都です。
When are you coming home?
しかし、考えれば考えるほど、英語のhomeの使い方はすごく難しい!
例えば、When are you coming home?という表現には、二つの意味があります。ひとつは実家や故郷からしばらく離れている人とその家族や仲間が使う「実家」で、もう一つの意味は「帰宅」です。例文を見てみましょう。
Mom, when are you coming home? I’m hungry!
お母さん、いつ帰ってくるの?めっちゃおなかすいた!
What time are you coming home tonight?
今日は、何時に帰ってくるの?
帰ってくるは、come home、帰るは、go home。話し手がどこにいるかによって動詞が変わります。
I wish I could go to karaoke with you, but I gotta go home.
一緒にカラオケに行きたいけど、帰らないといけない。
I have to go home around 6 p.m.
6時ごろ帰らないと。
I have to go home and clean my room before the party tonight.
今日のパーティーの前に、一度帰って部屋を片付けないといけない。
家にいるときはI'm homeと言いますし、家にいないときはI'm not homeと言います。
I’m home, so you can come over whenever.
家にいるから、いつでも来ていいよ。
Are you home?
今、家にいる?
Sorry, he’s not home right now.
ごめん。今彼は家にいない。
「居場所、落ち着く所」
Japan is my home.
コロナ禍の3年間、いったいこのセリフを何回言ったでしょう?
2020年に、コロナ感染が広がり始めた頃、全ての外国人は一時的に日本に入ることができなくなりました。日本に入ろうとしていた新規入国者と、すでに日本に住んでいる外国籍の人が再入国停止になりました。
私の生活の基盤は日本なので、正直意味がわからなかったです。「ええ?なんで再入国ができないの?だってさ、Japan is my home!!!」と叫びたくなりました。この文では、homeは建物や物理的に住む場所ではなくて「居場所や落ち着く所」という意味で使っています。
2020年の3月に、私の父親が突然亡くなりましたが、厳しい水際対策とアメリカの感染状況によって、私はアメリカに戻ることができませんでした。同年の9月に日本在住の外国籍の人は再入国ができるようになりましたが、もう一度同じことになると考えると怖くて仕方なかったです。もし、日本に戻れなくなったらどうしよう?と考えるだけで泣きそうになりました。母親はズームで話すたびに、
When are you coming home?
と聞いてきました。母はどうしても父親の葬儀をしたかったのですが、私なしでは執り行わないことに決めました。ずっと、アンちゃんの「帰国」を待ち望んでいました。私の気持ちはすごく複雑でした。
If I go home, I might not be able to come home. ( もし生まれ育った場所に行ったら、居場所になっている日本に帰れなくなる可能性はある)という複雑な気持ちがありました。
上記の文を見ると、homeはどれだけ奥義深い単語であるかがわかります。homeの意味は、言っている人の気持ちによって変わります。自分の居場所、自分の落ち着く場所は人によって違うし、本人しかhomeがどこにあるかを決めることはできません。私の場合、もちろん生まれ育った場所、母が住んでいるバージニア州の田舎町は、ある意味で私のhomeです。でも、正直に言うと、そこは感情があふれているhomeより、物理的なhometownの方が近い気がします。なぜなら今、心の絆があまりないからです。
ただ、英語でI am going to my hometown.とはあまり言いません。
I am going home for Christmas. (〇)
I am going to my hometown for Christmas. (×)
クリスマスに故郷に帰る。
I am going home for my Dad’s funeral. (〇)
I am going to my hometown for my Dad’s funeral. (×)
父の葬儀のために、故郷に帰る。
私は建前ではアメリカにgoing homeと言いますが、心の中の本物のhomeは日本です。ただ、この気持ちを表す日本語はなかなかないので、勝手にカタカナを使っています。
Japan is my home.
日本は、私のホームだ。
カタカナの「ホーム」は、日本人にとってなじみがある単語だと思います。前述した「マイホーム」だけではなくて、「アットホーム」というカタカナ語もよく使われています。この使い方は、「落ち着く場所、温かい場所」という意味に近いと思います。
That place is wonderful because it has a really at-home feel about it.
I love that place because it really makes me feel at home.
That place has a warm and cozy atmosphere about it, so I love it.
あのお店はアットホームな雰囲気があるので、とてもすてきです。
このような、さまざまな言い方があります。
この記事の冒頭で話しましたが、私は今年の9月にやっとアメリカに戻ることができました。
I was finally able to go home for my Dad’s funeral.
Then I was able to come home to Japan.
日本は、私の居場所。日本は、私の落ち着くところ。私のホームは日本です。
まとめ
今日は、英語のhomeにまつわる、さまざまな表現について話しました。非常に幅広い意味があって、非常に感情が入るような単語です。
物理的なhomeは、建物や生まれ育った場所。情緒的なhomeは、居場所や落ち着く所。
私の好きな英語の慣用句は、Home is where the heart is.です。人のホームは、心があるところです。
皆さんのホームはどこですか?私のホームは、間違いなく福岡県にある、のどかな田舎町宗像市です。生まれ育った場所ではないけれど、間違いなく私のホームです。
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