英単語を「好きなだけ楽に」覚えられるようになるには?【英語お悩み処方箋】

頑張って英語学習を続けているのに、一向に英語力の上達が感じられない!と思ったことはありませんか?本連載では、イングリッシュ・ドクターの異名を持ち、1万人以上の英語学習者を見てきた西澤ロイさんが、あなたの英語の悩み「英語病」の解決方法を処方します。第2回は、英単語を覚えたいだけ覚えられるようになるノウハウについて紹介します。

「私は記憶力が悪い」というのは単なる勘違い!?

英語は「暗記科目」だとよく思われがちですが、英語の勉強で苦しくなりやすい最大のポイントは恐らく、英単語をたくさん覚えなければならないところでしょう。

「なかなか覚えられないから英語は嫌い」「自分は記憶力が悪いから、英語なんて無理」などと思っている人も少なくないと思います。

しかし、イングリッシュ・ドクターである私が全ての英語学習者の方にお伝えしたいのは、脳を仕組み通りにうまく使えば、覚えたい単語は誰でも覚えられるということです。

うまく覚えられないとしたら、「覚えにくいものを覚えようとしている」という対象(WHAT)の問題か、もしくは、「覚え方がよくない」という方法論(HOW)の問題のどちらか、もしくはその両方というだけです。

そのような「つまずき」のことを私は「英語病」と呼んでおり、拙著『英語学習のつまずき50の処方箋』では英語学習を全七つの分野に分けて、さまざまな英語病の診断を行なっております。

今回の記事では、『英語学習のつまずき50の処方箋』の第2章「ボキャブラリー科」に登場する8種類の英語病について診断できるチャートをご紹介します。

英語病診断チャートに挑戦してみよう

以下のチャートで、質問に対して「はい」「いいえ」を選んでください。行きついた英語病に関して、罹っている恐れがあることが判定できます(「罹っている」と断定するものではありません)。

『英語学習のつまずき50の処方箋』P45より引用

各英語病に関する概要と改善ポイントは以下の通りです。

【英語病】 09. ウノミー(暗記病)
【概要】英語を「暗記科目」だと考えてしまうことにより、理解を求めずに丸暗記をしてしまう英語病
【改善ポイント】丸暗記は、どうやっても理解できない場合の「最後の手段」。しっかりと理解を積み重ねていくことが大切です。

【英語病】 10. イメージ欠乏症
【概要】特に基本的な英単語に関して、それが指し示す視覚的なイメージをつかむことなく、日本語訳を覚えてしまう英語病
【改善ポイント】日本語訳を暗記するのではなく、その単語が示すイメージ(絵や映像)をつかむことを心掛けてください。

【英語病】 11. 単語コレク症ン
【概要】特に基本的な英単語に関して、使い方や例文などを抜かして覚えてしまうことにより、英語運用力が伸びづらい英語病
【改善ポイント】特に基本的な単語を覚える際には、使い方や例文も一緒に押さえることを忘れないで。

【英語病】 12. 知識肥満症
【概要】英単語や文法に関する知識はたくさんあるものの、それが会話では逆に足を引っ張ってしまう英語病
【改善ポイント】新たに単語や文法を覚えようとするのではなく、既に持っているたくさんの知識を使えるようにしていきましょう。

【英語病】 13. 記憶オンチ症
【概要】脳の性能をうまく発揮できておらず、「自分は頭/記憶力が悪い」と誤解してしまう英語病
【改善ポイント】あなたの脳はものすごい性能を持っています。脳/記憶の仕組みを理解することで、その力をどんどん生かしていきましょう。

【英語病】 14. メモリバース症
【概要】記憶の仕組みを誤解しているために、本来の記憶力をうまく発揮できない英語病
【改善ポイント】単語を「覚えよう」とするのではなく、忘れてしまう前に何度も「思い出そう」とすることが大切です。

【英語病】 15. ノーレビュー症
【概要】せっかく覚えた英単語などを、復習を全然しないためにすぐに忘れてしまう英語病
【改善ポイント】学んだ英単語の復習を20分~1時間以内に行なうことから始めましょう。

【英語病】 16. レイトレビュー症
【概要】復習はするものの、忘れてしまってから手遅れで行なうために、学習効果が薄くなってしまう英語病
【改善ポイント】覚えられないのではなく、すぐに忘れてしまうだけ。忘れる前に何度も復習を繰り返すことが重要です。

今回は、特に13~16の英語病(この四つは全て「記憶の方法論(HOW)」に関連しています)を改善することで、覚えたい単語を覚えたいだけ覚えられるようになるノウハウをお伝えします。

記憶の仕組みを知らないから覚えられないだけ

まず、絶対に押さえておくべきものは「記憶の仕組み」です。人間の脳は、高性能のパソコンのようなもの――。その仕組みを理解して使いこなせればものすごい性能を発揮できますが、反対に「宝の持ち腐れ」にしてしまうことも簡単です。

「自分は記憶力/頭が悪い」などと思い込んでしまう「記憶オンチ症」はまさに、脳のせっかくの性能を無駄にしてしまいかねない危険な英語病だと言えます。実際には、記憶の仕組みをよく分かっていないために、脳をうまく使えていない・・・というのが真実なのです。

脳の性能自体を疑ってしまうことにより、「自分の脳の性能をうまく生かそう」という発想にはなりづらくなります。そして結果的に脳をうまく使うことができず、「記憶力/頭が悪い」という思い込みが、現実のものになってしまうのです。

そこから抜け出していただくために、記憶の仕組みについて簡単に説明したいと思います。英語が苦手な人にも分かりやすいように英単語ではなく数字を例にします。例えば

「591」
「1386519453」

という二つの数字を目にしたときに、覚えやすいのはどちらでしょうか?

明らかに前者の「591」の方でしょう。後者の「1386519453」は桁が多過ぎて、すぐに記憶から“こぼれて落ちていく”ような感覚があるかもしれません。記憶に留めておくには「長過ぎる」のです。

一般的に2~4文字くらいの短さであれば、楽に頭に入ります。実は先ほどの10桁の数字も「138-651-9453」のように区切ってあげると、それだけで記憶に残りやすくなるのです。

短ければ「楽に頭に入る」と言いましたが、つまり「覚えよう」という努力は一切不要だというところが重要なポイントです。

もちろん、その後でまたすぐ忘れてしまうかもしれません。しかし、それは「覚えられなかった」のでは決してありません。「楽に覚えられるが、すぐに忘れてしまう」ということであり、「覚えられない」のとは全く違うのです。

しかし、多くの人が「覚えよう、覚えよう・・・」という間違った努力をしてしまうため、私はこれを「メモリバース症」と呼んでいます(メモリー[記憶]+リバース[反対]から命名)。多くの人が、記憶の仕組みを誤解し、ボタンを大きく掛け違えているのです。

多くの人が長過ぎるまま(たくさんの情報のまま)覚えようとします。そして、なかなか頭に入らないからと、「覚えよう」と繰り返し努力をします。そして、努力の末に覚えられたと思ったらそこで安心して、放置してしまいます。結果として、復習が足りなくて忘れてしまう・・・という結果になりがちなのです。

復習を行なわない英語病が「ノーレビュー症」であり、復習が足りない(遅過ぎる)のが「レイトレビュー症」です。どちらにせよ、忘れてしまうという結果となります。

本当は、覚えるためには努力は特に必要なく、短く区切ることで楽に記憶に入ります。そして、努力を(少しだけ)すべきポイントは「思い出す」ことであり、「忘れる前に思い出す」という努力を何度も繰り返せばよいだけ――

そうやって繰り返し思い出す事柄を、いわば「大事な情報」だと脳が判断するとお考えください。そのような大事な情報が自然と記憶に残るような、脳の仕組みになっているのです。

最強の記憶ツールは、実は「単語カード」

さて、効率的に記憶できるためのツールとして、私は「単語カード(フラッシュカード)」をよくお勧めしています。ただし、学生時代の思い込みで、つい「覚えよう」としてカードを使ってしまう人がほとんどです。しかも、別に覚えたいわけでもない英単語をたくさん覚えさせられた(そして覚えられなかった)という苦い経験から、次第に気が進まなくなり、挫折してしまう人が後を絶ちません。

しかし、それも単なる勘違いです。単語カードは、そもそも「思い出す」ために使うべきです。例えば表に「日本語訳」を書き、裏に「英単語/フレーズ」などを書きます。そして表の日本語を見て、対応する英語をパッと口で言う――という形で、思い出す練習をするのが効果的な使い方なのです。

また、単語カードに書く単語やフレーズなども、自分で「これは覚えたい」「これが言えたら嬉しい」などと思えるものだけに絞ったほうが良いでしょう。そうすると、自分が覚えたい/言いたいと思える言葉だけが記載された、自分専用の単語カードが誕生しますから、練習へのやる気も大きく違ってくるはずです。そして、記憶の仕組みに則って「思い出す」練習を繰り返せば、間違いなく高い成果が上がりますから、ぜひ単語カードを活用することをお勧めします。

英単語は誰でも好きなだけ覚えられる

英語学習が難しい一つの大きな理由は、やっていることやその成果が「目には見えない」からだと言えます。

全く同じように単語学習をしているように見えても、「脳にとって長過ぎる情報を“覚えよう”と繰り返す」のと、「楽に記憶できる長さに情報を区切り、“忘れる前に思い出そう”と繰り返す」のとでは、雲泥の差が生まれてしまうのです。

単なる方法論(HOW)の差でしかありませんが、やっていることは目には見えないですし、そのような脳の効果的な使い方はなかなか教えてもらえません。その結果、まるで性能や才能の差に大きな開きがあるかのような、つまり「自分は記憶力が悪い」という誤解が生まれてしまうのです。

本来の性能から考えると、数千個程度の英単語を覚えることなど、あなたの脳にとっては造作もないことだと言えます。記憶の仕組みをきちんと知り、その仕組みに則って脳を使うことで、覚えたい単語をどんどん覚えて使えるようになっていただければと思います。

西澤ロイ
西澤ロイ

イングリッシュ・ドクター TM。英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんなふうに英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など計11冊で累計17万部を突破。コミュニティFMラジオにて冠コーナー「西澤ロイの頑張らない英語」が好評オンエア中の他、メディア出演多数。「日本人が英語ができない時代を終わらせる」をモットーに、日本人が英語を使って国内外で活躍することを応援している。
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