jockey(騎手)は動詞だとネガティブな意味!?日常会話で使える競馬英語

今年も中央競馬の一年を締めくくる大レース、「有馬記念」の開催が近づいてきました。「ウマ娘 プリティーダービー」が2021年のネット流行語大賞に選ばれるなど、近年、競馬人気の高まりを感じている人もいるのでは?本記事では、日常会話でも使える競馬英語を競馬の豆知識と併せて一覧で紹介します。

※本記事はENGLISH JOURNAL 2020年1月号に掲載した内容を再構成したものです。

グローバル化が進む「競馬」

一年を締めくくる大レース「有馬記念」が今年は12月25日に開催されます。昨今では有名人を起用したCMや、日本競馬史の名馬をモチーフとした「ウマ娘」の流行などで、若い世代にも競馬が浸透してきました。

そんな競馬ですが、近年はグローバル化が進み、世界各国の主要なレースに遠征する日本人騎手や日本馬が増えています。海外競馬を見るにあたって、基本的な競馬英語は押さえておきたいものですね。

競馬英語には、実は普段私たちが気付かずに使っているものも多いことをご存じでしょうか?よく使う一般的な単語でも、競馬用語として使われる場合には全く意味が異なるものもあります。競馬の豆知識と併せてご紹介します。

競馬用語

stable 厩舎(きゅうしゃ)

安定した、不変の」という意味でよく知られるこの単語は、競馬用の馬を飼育・調教する厩舎を意味する。日本の中央競馬においては、茨城県と滋賀県の2カ所にある。

A stable family environment is essential for the nurture of children.
安定した家庭環境は、子供の養育に不可欠です。

homestretch ゴール前の直線コース

ゴール前の直線コースで競走馬が追い込みをかけることから転じて、普段の会話では「大詰め、ラストスパート」の意味で使われる。

The computer crashed while we were on the homestretch.
私たちが仕事の大詰めを迎えているときに、コンピューターがクラッシュした。

clockwise  右回りの

時計回り=右回り。左回りはanti-clockwise。競馬場によって右回りのコースと左回りのコースがあるが、日本では右回りが一般的。競馬以外の会話でもよく使われる。

The Yamanote Line’s trains that run clockwise are called “sotomawari.”
山手線の右回りの電車は「外回り」と呼ばれている。

form 過去の競走成績

一般的な「姿、体つき」の意味でも使うので、話の内容によって「馬が走る姿」か「過去の競走成績」かを判断しなければいけない。

This horse, which is famous for its beautiful running form, has been below form recently.
走る姿が美しいことで有名なこの馬は、最近成績が下がってきている。

dead heat 同着

激しい競り合い」の意味で使われることの多い単語だが、本来は「同時に決勝点に着くこと」を意味する。

With the progress of photo-finish technology, there has been a significant decrease in dead heats.
写真判定技術の向上により、同着判定が大幅に減っている。

draw 枠順

動詞では「~を描く、~(興味など)を引き付ける」、名詞では「引き分け」という意味で使われることの多い単語だが、競馬では出走する際の「枠順」を指す。枠順一つで勝ち馬がガラリと変わることもあるが、どの国でも枠順は抽選で決まるので、運任せである。

I would like to draw your attention to a very serious matter.
とても深刻な問題に注目してください。

jockey 騎手

馬に乗って馬を操縦する人。動詞では「~を操作する、~をだます」という意味があり、イディオムにはjockey to do(~しようと立ち回る)、jockey for position(有利な地位を得ようと画策する)などがある。

The politicians jockeyed for position in the new cabinet.
その政治家たちは、新内閣で有利な地位に就こうと画策した。

breezing 馬なり

馬の気に任せて走らせること。breezeは「風がそよそよと吹く、さっそうと歩く」という意味で知られている。競馬用語を知らない通訳者が「そよ風のように走らせる」と訳したそうだが、それはもちろん誤訳である。

Joe breezed past us without so much as saying a word.
ジョーは私たちに何も言わずにさっさと通り過ぎた。

groom 厩務員(きゅうむいん)

一般的には「新郎」の意味で使われることが多いが、競馬用語では厩務員(馬の面倒を見る係員)のこと。変わった名前の馬が多い競馬界だが、ヨーロッパにBlushing Groom(顔を赤らめる新郎)という名前の馬がいた。その馬の母親の名前はRunaway Bride(逃げる花嫁)。非常にユニークである。

The groom at this wedding is working as a groom at a local stable.
この結婚式の新郎は、地元の厩舎で厩務員として働いている。

odds オッズ

馬券が的中した場合の倍率のこと。一般的には「勝ち目、勝算」の意味で、The odds are for us.(勝算がある)のように使われる。atodds with ~(~との関係が悪化して)、against all odds(大きな困難にもかかわらず)など、oddsが使われたイディオムは多数ある。

He managed to develop his career against all odds.
彼は大きな困難を乗り越えて、なんとか出世することができた。

hood メンコ

競走時に馬が被る耳覆い付きのマスク。この馬具は日本で発祥し、武豊騎手がヨーロッパに逆輸入したことで海外に広く広まった。単語自体は「フード、頭巾」や「車のボンネット」を意味するが、そこからできたイディオムでlook under the hood of ~(~を念入りに調査する)がある。

We should look under the hood and find out more about its products and sales revenue before we invest in this company.
この会社に投資する前に、念入りに調べて商品や収益についてもっと知っておくべきだ。

dark horse 未知の力を持つ競走馬

選挙やスポーツにおいて、予想外の実力者のことを「ダークホース」と呼ぶが、元は競馬用語。それまでの記録がほとんど知られていない馬を指す。    

The candidate has gone from being a dark horse to the front-runner in the campaign for president.
その候補者は大統領選で、ダークホースから最有力候補になった。

outsider 穴馬(あなうま)

「部外者」という意味で知られる単語だが、競馬で使う場合は「人気のない馬、勝ち目のない馬」を指す。このような馬が勝って大穴をあける(番狂わせをする)ことをlong shot という。     

An outsider has the best perspective   
(利害関係のない)第三者が最も見通しが利く[ことわざ]      

馬を使ったイディオム     

straight from the horse’s mouth 確かな筋からの情報では

昔、馬の売主は馬を少しでも高く売ろうと年齢を偽ることがあったが、馬の口を開けて下顎の歯を見れば、本当の馬の年齢がわかることが語源とされる。    

I heard it straight from the horse’s mouth that Mary is going to quit her job.
メアリーが仕事を辞めるということを、確かな筋から聞いた。          

look a gift horse in the mouth 贈り物にけちをつける

こちらも贈られた馬の歯の状態を見て値踏みしたことに由来する。 

Don’t look a gift horse in the mouth.    
人の親切にけちをつけてはいけない。     

put the cart before the horse 間違った順序で物事を行う、本末転倒する

直訳すると「荷馬車を馬の前に付ける」ということから、間違った順序で物事を行うことや、非論理的な行動をとることに使える。

The government put the cart before the horse by raising the sales tax before turning the economy around.
政府は景気対策を行う前に消費税を上げ、本末転倒なことをしている。      

horse of a different color 全く別物、別の話

horse of another color も同じ意味。語源ははっきりしていないが、シェークスピアの『十二夜』に出てくるセリフ“My purpose is,indeed, a horse of that color.”(私の目的はまさにそのとおりである)から派生したといわれている。    

I’ve always found math to be easy, but calculus is a horse of a different color.
数学は簡単だと常々思っているが、微分積分についていうと話は別だ。

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平松さとし
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単語選定・解説:平松さとし 構成・文・翻訳:古川

平松さとし
平松さとし

競馬ライター。競馬専門紙を経てフリーランスに。日本馬の遠征を中心に精力的に海外取材を行う。『月刊優駿』『スポニチ』『東スポ』など多くの雑誌・新聞に寄稿するほか、テレビ番組でのリポートや解説でも活躍。著書に『泣ける競馬』(KADOKAWA)ほか多数。

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