横山カズさん直伝!同時通訳者が実践する英語トレーニングとは?

同時通訳は、話者が話すのとほぼ 同時に 訳出を行う通訳形式。通訳の中でも花形とされ、高い外国語のスキルと共に話者の発言を 予測 する力も求められます。プロの同時通訳者はどんな英語トレーニングをしているのでしょうか。横山カズさんに伺いました。

同時通訳者も英語トレーニングが欠かせない

同時通訳者になって10年以上たちますが、今でもトレーニングは欠かせません。

私が実践しているのは、自分が気に入ったテーマの英文を音読することです。それも、気に入った人物の「話し言葉」に限ります。そして、繰り返し音読したくなるようないい英文がないか、常にアンテナを張って「宝探し」を続けているんです。

このトレーニングの 具体的な 進め方を紹介しましょう。

好きなテーマ、好きな人物をはっきりさせる

まず大切なのは、自分自身が何に興味あるのかをしっかりと 把握 しておくこと。昔から好きなこともあれば、最近興味を持つようになったことでもいいです。私の場合は、脳科学や心理学系、格闘技、ワークアウトなど。

そして、英字新聞や雑誌から、それらのトピックを取り上げたものを探します。

私の場合、TIME や NEWS WEEK、 Economist などで見出しを見て、「これだ!」と思ったら食らいつくようにして本文を読み、音読用の英文を探します。

ネットなら、TIME10 Questions がおすすめ。または、Google や YouTubeで、「興味のあるトピック名+インタビュー」や「人物名+インタビュー」で検索するといいですよ。

とにかくまずは、 好きな人、共感できる人、憧れの人のインタビューを探してみてください

その際に大切なのが、引用符の中の口語的な英文(話し言葉)を中心に選ぶことです。短い英文でかまいません。

「話し言葉」は英語的表現の宝庫

なぜ、わざわざ「し言葉」を選ぶのかわかりますか?

同時通訳をするには、英文、和文ともにたくさんの資料を読み込みますが、「読んで得た知識」が、実際にどんな話し言葉になるかを体で知っておく必要があります。

「書き言葉」で覚えておいても、実際に同時通をするときには使えないので、「話し言葉」を音読したほうがよいというわけです。

実際に話された言葉であるインタビューは、itで始まる文や、基本動詞や関係詞を使った文、無生物を主語にした文など、英語的な発想に基づく表現の宝庫 。同時通訳者のトレーニング素材にぴったりなのです。

もちろん、これは英語を話せるようになりたい一般の学習者にも言えることです。

音読したい英文を手書きでピックアップ

手元にある紙に手書きする

「音読したい」と思えるフレーズに出合ったら、必ず手書きで手元の紙に書き取ります。ノートや手帳があればそれに書きますし、とっさにレシートなどの裏に書くこともあります。

後ほどパソコンでWordのファイルにまとめるのですが、とにかく、 せっかく見つけたフレーズを逃がさないようにすることが大事 です。

スマホのアプリなどを利用して保存するのもいいと思いますが、私自身はいったん手書きすることで、よりしっかり覚えられるという気がしていますね。

手書きしてからデジタル化するまでの間、「いい英文を見つけた!」という興奮や感動がずっと続いているんです。このワクワク感が、後に英語を発話するときに役立ち、英文を「生きた記憶」にしてくれると思っています。

短い英文だから楽に音読できる

先ほど、短い英文を選ぶといいましたが、繰り返し何度も音読するには短いほうがいいのです。

また、前述したように、ここで音読するフレーズは「話し言葉」ですね。自分が興味を持っていることや感動したこととダイレクトに結びついた「話し言葉」だと、通訳するときに瞬間的に思い出して応用することができるんです。

英文が決まったら音読開始!

味わいながら音読しよう

音読したい英文が決まったら、まずは自分なりに音読してみます。回数にはこだわらず、1~3分間くらい、英文を味わいながら口に出すという感じですね。

すごく気に入ったらもっと長時間音読して、結果的に覚えてしまうこともあります。そのあと忘れても気にしません。「もっと深く、大事なところに落とし込まれた」と考えています。

人物像をつかむ

次に、その人物の人となりをつかみましょう。

ネットでその人の動画や音声を探してみてください。音読素材と同じインタビューでなくてもかまいません。 その人が喜んだときや驚いたときなど、感情の変化によってどんな表現をするのか をじっくり味わいます。

前段階で、その人物が話した英文を音読しましたね。ここでは、自分とその人との共通点や相違点をじっくり観察し、次に相手をまねて音読を繰り返します。

こうすることで、その人がよく使う話し方や表現のパターンを、自分に定着させることができます。

いろいろな人の英語を素材にこの練習を行うと、表現の幅がぐっと広がるので、ぜひやってみてください。

一生使える「宝物」を探そう

たくさんある英文の中から、音読用のフレーズを探すのは大変かもしれません。でも、続けていくうちに、 「これは一生、音読し続けたい!」と思える宝物が見つかる のです。

私にも、10年以上も音読に使っている、鉄板ともいえるフレーズがいくつかあります。不思議なもので何年たっても新たな発見があり、実際に同時通訳をしているときに、必ず応用して使えるのです。

さらに、こうして10年以上前のインタビューを持っていると、現在のその人物の意見や英語表現と比較することができます。同じ人物でも、時間が経てば話し方やよく使うフレーズも変わってきます。それを比較することが、表現力を養うことに役立つのです。

「やりたい!」と思ったタイミングを逃さない

音読用の英文をまとめたWord形式の文書は、プリントアウトして1冊のファイルに保存しています。これには、引用元の英字新聞の記事のコピーなども入れ、常に持ち歩いているんですよ。このファイルには、自分が一番役立つと思ったものを厳選して入れています。

基本的に、1日に1回はこのファイルに入れた英文を一通り音読するようにしていますが、仕事が立て込んできたときなどは週に1回くらいしかできないこともあります。

それでも、 不意に時間ができたときや、モチベーションが上がってきたときに、そのタイミングを逃さないことが大事 なんです。

「他に何もなければこれをやる」と決めたものが常に手元にあるというのは強いですよ。皆さんも、ぜひやってみてください。

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文:横山カズ  @KAZ_TheNatural
関西外国語大学・外国語学部スペイン語学科卒。同時通訳者(JAL)、翻訳家、英語講師。高田学苑英語科特別顧問。エスコラピオス学園 海星中・高等学校英語科特別顧問。学びエイド、リクルート・スタディサプリENGLISH講師。英語を日本国内で独学し、航空・IT・医療・環境・機械・国際関係・文学など多分野で同時通訳者として活躍中。JAL(日本航空)グループ、楽天株式会社では英語力向上と社内公用語化に貢献。「英語4技能」・英語スピーキングのエキスパートとして日本全国で授業と講演を行っている。『スピーキングのための音読総演習』(桐原書店)、『英語に好かれるとっておきの方法~4技能を身につける~』(岩波ジュニア新書)、『おもてなし純ジャパENGLISH』(講談社)、『最強の英語独習メソッド パワー音読入門』(アルク)など。ジパングマネジメント株式会社・文化人枠 所属

編集:川浦奈遠子

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語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発

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