組織運営というのは容易ではありません。ころころと 施策 が変わることは、よくあります。
たとえば処遇制度。つい数年前に、チーム業績よりも個人業績に重きを置いた制度を作ったかと思えば、またチーム業績重視に戻った。
組織もころころと変わります。事業本部制からカンパニー制に移行したかと思えば、また事業本部制に戻ってきた、などなどです。
人事制度や組織は振り子のように変化する
働いている者にとっては、組織や人事制度が変わるとストレスが溜まるものですが、どうして、このようなことが起こるのでしょうか?
まず、人事制度でいうと、チームワーク主体の処遇制度をしばらくやっていると会社の中のコミュニケーションや仲間意識が高まります。たとえば、自分や自部門の業績が悪くても会社の業績がそこそこ良いならば、自分もそれなりの賞与をもらうことができ、昇進もほぼ同じレベルで行けるなどです。ぎすぎすしない、和気あいあいとした風土が醸成されます。
しかし、これがしばらく続くと、経営陣は「もっと競争心に富んだ風土が欲しい」と考えはじめ、成果主義重視の処遇制度が導入されます。そして、その後しばらくたつと、今度は社内がぎすぎすして 協力 関係が希薄になり、顧客にも迷惑がかかりそうになって、元に戻るわけです。
カンパニー制のメリット、デメリット
組織 体制 でいえば、多いのは例えば、事業本部制からカンパニー制への移行です。カンパニーのトップは社長ですから呼称的にも緊張感は高まり、与えられる権限も事業本部よりも大きく、例えば資産管理まで任されるケースも多いです。
これにより、カンパニー長である社長は、一企業の社長のような権限をもち、その分大きな責任を行使するのです。
しかし、しばらくすると効率が低下してきます。たとえば、自社の業績を重視するために人材が必要だとしたら、早く採用するために人事スタッフまで各カンパニーで増員するかもしれません。また、短期的な経営のために資産を購入したり、売却したりするようになるわけです。
会社全体の利益からすれば、人材採用はまとめてやった方が効率的だとしても、日々の 厳しい 業績追及をされるカンパニー長からすれば、 すぐに 動ける自前のスタッフが欲しいのは当たり前です。
資産についても、苦しい時には売却して帳尻を合わせようとするのも理解できますが、一方で、会社全体としては他で流用したり保有したりしておく方がベターということもあるでしょう。
つまり、カンパニー制では、「やるべきでない採用」や「部分最適の資産売却」などの非効率が発生しやすいのです。
「振り子」をストレスにしないのがプロの働き方
それにしても、なぜ数年 単位 で、制度や組織が変わったり戻ったりするのでしょうか?
丁度いいところに最初から制度設計したり、組織 体制 を組んでおいたりしていればいいのに、という疑問が出ます。
実は、こういったものは丁度いいポイントで設計するのは非常に難しいのです。その理由は、まず設計時に最適点がなかなかわからないこと、そして、組織には抵抗力が働くのでどうしても強めに設計するから、というのがあります。会社は、ある程度の混乱を 予想 して、振り子を意図的に大きめに揺らすわけです。
社長が社内の隅々まで見られる規模、たとえば立ち上げ期の会社であれば制度というよりも社長の朝令暮改という形でこの現象が現れます。ある程度の規模になるからこそ、制度変更や組織変更といった形で見えてくるのです。
ちょうどいいポイントである分水嶺の分かれ目のところに留まるのは非常に難しいのです。
ですからこれらの「振り子」のような行ったり来たりは、やむを得ないことだ、と認識しておけばいいのです。そうすれば、無用なストレスから離れることが可能です。組織の動かされ方を知っている、これはプロのサラリーマンとして非常に重要なことです。
村上賀厚(むらかみ・のりあつ)
同志社大学商学部卒業、イェール大学経営大学院経営管理学修士(MBA)
マーケティングエージェンシーで市場調査 分析 や 売上 モデル作成など、一般消費財メーカーの販促活動をサポート。その後、住友ビジネスコンサルティング等で、大手ゼネコン、電機メーカー、不動産開発会社および石油精製企業などへの処遇制度、人材開発制度、ホワイトカラーの生産性 分析 などの人事組織コンサルティングに従事。
イェール大学卒業後は、フォードジャパン人事課長、日本JDエドワーズ人事部長、日本モンサント人事総務本部長、ロイタージャパン人事本部長、GEコンシューマーファイナンス日本で人事本部ディレクターを務める。独立後はノリ・コーポレーション代表取締役として、エグゼクティブコーチおよび人事・組織関連コンサルティングを行うとともに、収益不動産開発も手掛ける。
著書に 『元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人』 (東洋経済新報社)がある。
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