かき氷は英語でshaved ice。では、かつお節はshaved bonito?いえいえ、実は英語では一般的にbonito flakesと言います。日本語では「削り節」と言うのに、なぜshaved bonitoではないのでしょうか。ここには、英語と日本語の語感の違いだけでなく、食文化そのものの違いも隠れています。
目次
※この記事は、一般的な英語表現や日本食に関する情報をもとに、ENGLISH JOURNAL編集部が作成しています。
かつお節は英語でbonito flakes
削ったかつお節は、英語では一般的に、
bonito flakes
かつお節
と言います。
もう少し説明的に言うなら、
dried bonito flakes
乾燥カツオの削り節
です。
bonitoは「カツオ類の魚」、flakesは「薄片」「ひらひらした小片」を意味します。
海外向けの日本食スーパーや和食店でも、bonito flakesという表記がよく使われているようです。
shaved bonitoはなぜ不自然?
日本語では「削り節」と言うので、
- 削る → shaved
- カツオ → bonito
として、
shaved bonito
と言いたくなるかもしれません。
この表現、文法的に絶対に間違いというわけではありません。ただ、英語としては少し不自然に響く可能性があります。
理由の一つが、shavedには「毛をそる」というイメージも強いことです。
例えば、
- shaved head(そった頭、坊主頭)
- cleanshaven(ひげをそっている)
のように使われます。
そのため、shaved bonitoと聞くと、
「ひげをそったカツオ?」
のような、不思議な印象になることがあります。
同じ「削る」でも、英語では言い方が変わる
ただし、ここで注意したいのは、shaveという動詞そのものが使えないわけではない、ということです。
かつお節を実際に「削る」という動作を表すときは、shaveを使えます。
例えば、
The dried bonito is shaved into thin flakes.
乾燥したカツオを削って、薄い削り節にします。
のように言うことができます。
つまり、
- 「削る」という動作 → shave
- 完成品の名前 → bonito flakes
になっているわけです。
ここが英語の面白いところです。
日本語では「削り節」と、動作がそのまま名前に入っています。一方、英語では「削られた結果、どんな形になったか」に注目して、flakesと呼んでいます。
かき氷、コーヒー、ゴマと比べてみる
英語では、食材を細かくする表現が、仕上がりの形や状態によって変わります。
例えば、かき氷はshaved iceです。
これは、氷を薄く削って作るものなので、shavedが自然です。
一方、コーヒー豆をひく場合は、
grind coffee beans
コーヒー豆をひく
と言います。
そして、ひいた後のコーヒーは、
ground coffee
ひいたコーヒー
です。
ゴマをすりつぶした「すりごま」も、
ground sesame seeds
すりごま
と言えます。
つまり、コーヒーやゴマは「粉状、または細かく砕かれた状態」なので、groundが合います。
一方、かつお節は粉ではありません。薄く、軽く、ひらひらした形をしています。
だから、ground bonitoでもなく、shaved bonitoでもなく、完成品としてはbonito flakesが自然なのです。
flakesは「ひらひらした薄片」
flakeは、「薄片」「ひらひらした小片」という意味です。
例えば、
- snowflakes(雪片、雪の結晶)
- corn flakes(コーンフレーク)
にも同じflakesが使われています。
かつお節も、薄く削られた後の形に注目すると、まさにflakesです。
日本語の「削り節」が「削る」という動作に注目した言い方だとすれば、英語のbonito flakesは「削られた後の薄片の形」に注目した言い方だといえます。
「花かつお」という名前も面白い
日本語にも、見た目に注目した呼び方があります。
それが「花かつお」です。
薄く削られたかつお節が、花びらのように見えることから、この名前が付いているそうです。
つまり、
- 日本語:花びらのように見える
- 英語:薄片のように見える
と、同じものを別の角度から表現しているわけです。
こういう違いを見ると、言葉は単なる翻訳ではなく、その言語を使う人の感覚そのものだと感じます。
かつお節文化そのものがかなり特殊
さらに面白いのは、英語圏には、かつお節にかなり近い食文化があまりないことです。
もちろん、
- smoked salmon(燻製サーモン)
- dried cod(干しダラ)
- salted fish(塩漬け魚)
のような、魚を保存食にする文化はあります。
でも、かつお節のように、
魚を燻製・乾燥させて硬くし、それを削って使う
という文化はかなり珍しい存在といえます。
日本では見慣れたかつお節削り器も、海外の人から見ると、
「魚を木工みたいに削っている・・・?」
と驚きにつながることがあります。
たこ焼きの上で動く“謎の食べ物”
海外でよく話題になるのが、たこ焼きの上の花かつおです。
熱で揺れる様子を初めて見た人が、
Is it alive?
これ、生きてるの?
と驚くことがあります。
もちろん実際には、湯気で薄い削り節が揺れているだけです。でも、それくらい、かつお節は英語圏の人にとって見慣れない存在なのかもしれません。
bonito flakesの中に文化が見える
かつお節は英語で、
bonito flakes
と言います。
単なる英単語の違いに見えますが、その背景には、「削る行為」に注目する日本語と、「薄い破片の形」に注目する英語の違いがあります。さらに、魚を硬く加工し、それを削って使うという食文化そのもののあるなしもあります。
かき氷はshaved ice。コーヒーはground coffee。ゴマはground sesame seeds。そして、かつお節はbonito flakes。
普段何気なく使っている食べ物の名前も、英語から見直してみると、意外と奥が深いのかもしれません。
ちなみに、今回の「削る」とshaveの語感の違いを考えるきっかけになったのは、伊丹十三さんのエッセイ『女たちよ!』(新潮文庫)でした。作中では、鰹を削ったものをめぐる英語表現に触れられています。何気ない食べ物の名前にも、言葉の感覚の違いが表れる。その視点をヒントに、この記事ではbonito flakesという表現を考えてみました。
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