皆さんの思い出の1曲はなんですか?そんなテーマで、前・中・後編に分けて10名の方に「この1曲」を語っていただきます。後編にご登場いただくのは、通訳者の川合亮平さん、The Japan Times Alpha 編集長の高橋敏之さん、「1000時間ヒアリングマラソン」主任コーチの松岡 昇さん、そして通訳者のパンサー戸川さんです。
by Sheryl Crow">If It Makes You Happy (1996) by Sheryl Crow
選者:川合亮平(通訳者)
19歳のときです。日本の工場でバイトをして貯めたお金の分だけ、オーストラリアに10 週間語学留学をしました。そのときに現地で親しくなった韓国人の仲間たちと、洋楽スタディーグループを作ったんです。休みの日や放課後に誰かの部屋に集まって、一つの楽曲の歌詞を勉強する、という至極軽いタッチのものです。僕がそのグループに参加した動機はほかでもなく、気になっていたある女の子に少しでも接近するため、だったんですが。
その最初の課題曲が確かこの曲でした。アメリカのフォークロックシンガー、シェリル・クロウが1996年に発表した2枚目のアルバム『Shery l Crow』から最初にシングルカットされた「If It Makes You Happy」。当時、歌詞を辞書で引きながら解読していったことは覚えていますが、それが頭に残っているか、英語力アップに役立ったか、というと正直よくわかりません。僕の気持ちはほかの部分に注がれていましたので・・・。
とはいえ、この曲のタイトルでサビの部分の歌詞でもある「 make +人+形容詞」という日常の頻出構文を僕が今、普通に使えるのは(学校や文法書で頭に入れた覚えはないので)、シェリル・クロウさんのおかげかもしれません。
by LeAnn Rimes">We Can (2003) by LeAnn Rimes
選者:高橋敏之(The Japan Times Alpha 編集長)
誰しも「人生の応援歌」と呼べるような曲がいくつかあるはずだ。僕自身も、悪いことが続いたときはシャナイア・トゥエインの「Up!」、自信を失いそうなときはマライア・キャリーの「Hero」など、さまざまな歌に元気をもらってきた。中でも特に励まされた一曲を挙げるとしたら、リアン・ライムスの「We Can」を選ぶだろう。「どんなに困難があっても、できるんだ」という力強いメッセージが込められた歌だ。
この曲に出合ったのは2003年。オーストラリアでの約1年間の生活を終えて日本に帰国した頃だった。「自分を変えたい」という思いで渡豪したものの、その後のことを一切考えていなかった僕は帰国後、仕事を探す際に悩んだ。「結局自分には何ができるのだろうか?」と。そんなとき、この曲の
With one voiceという一節に勇気をもらい、以前から興味のあった英語教材の編集に挑戦することを決意。そして今に至る。One heart
Two hands
We can
一つの声、一つの心、二つの手があれば私たちは変えられる
以来、何度聞いてもこの歌は元気をくれるし、僕のように管理職に就いている者は、
So let them say we can’t do it無理だと言わせておけばいい
Put up a road block道がふさがれたっていい
We’ll just run right through itという歌詞を引用して、部下を鼓舞することもできる。曲のメッセージに負けないくらい、彼女の歌声もパワフルだ。ぜひ聞いてみてほしい。私たちは切り抜けて進んでいくだけ
Take My Eyes Off You (1967) by Frankie Valli">Can’t Take My Eyes Off You (1967) by Frankie Valli
選者:松岡 昇(「1000時間ヒアリングマラソン」主任コーチ)
私が大学に入学し、ジャズオーケストラに入部し、初めて演奏したのがこの曲でした。3年生の女性ボーカルがまぶしかったものの、私はCouldn’t take my eyes off the score(譜面から目が離せなかった)。繰り返し練習するうちに、彼女の歌う歌詞が耳に入ってきました。まずはサビの部分で、I love you, baby / And if it’s quite all right / I need な求愛メッセージ。次に耳が覚えたのは、曲の最初、
You’re just too good to be true君は信じられないほどすてきだ
Can’t take my eyes off of you辞書を引き、「なるほど、こんなセリフを覚えておけば、いざというときに・・・」などと思いつつ。君から目が離せない
後に、教員になってから歌詞を振り返ると、「使える表現」がいくつもあることに気付きます。
take one’s eyes off ~~から目をそらす
too ~ to be true信じられないほど~
And if it’s all rightと前置きのフレーズ。また、曲のタイトルは ~ off you となっているが、歌詞では ~ off of you とof が入っている。前置詞of は「分離(~から)」を表すので、off of とダブルで言っても問題はない、などなど。皆さんも青春の洋楽を振り返ってみてください。今だからできる発見がたくさんありますよ。そしてもしよかったら
by Kenny Loggins">Danger Zone (1986) by Kenny Loggins
選者:パンサー戸川(通訳者)
僕の青春を代表する洋楽はこの曲です。トム・クルーズ主演の映画『トップガン』に使われていた曲で、もう何百回と聞いています。20代前半、オーストラリア留学中に何度も聞き、日々の英語学習の心の支えになっていました。この曲で好きな歌詞パートは、Highway to the danger zone / Ride into the danger zone というところです。
歌詞を訳すと(意訳が入りますが)、「スリル満点の舞台へのハイウェイ/スリル満点の舞台へ乗り込むんだ」という意味になります。直訳では「危険地帯」となり、もちろん危険は危険なのですが、それと 同時に スリルもありますよね。気持ちもわくわくする。そう考えると、当時オーストラリアという場所はDanger Zoneだったのかもしれません。オーストラリアは私にとって「わくわくする場所」でもあり、その環境に身を置くことで大きく成長できました。
Danger Zoneを単なる「危険地帯」ではなく、「スリル満点の場所、わくわくする場所」として捉え、自分はそういう場所に身を置くことができているだろうか、わくわくしているだろうか?と、ぜひ問い掛けてみてください。自分が成長できる場所、環境が見つかる きっかけ となるかもしれません。
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