連載「日本酒オタクのおもてなし英語」では、国際唎酒師や日本酒学講師の資格を持つあゆみせんせいが、日本酒の知識や日本酒にまつわる英語表現を紹介します。第5回は「国際唎酒師のお仕事」についてです。
目次
英語を活かせる日本酒の資格
「日本酒オタクのあゆみせんせい」こと、日本酒サービス研究会・酒匠研究連合会(SSI)公認の国際唎酒師および日本酒学講師の藤代あゆみです。
英語の勉強のために「ENGLISH JOURNAL ONLINE」を読んでいる方が多い中、なぜ私のようなただの大酒飲みのオタクが連載を持っているのか、私も不思議です(笑)しかし!国際唎酒師や日本酒学講師という資格を持っていることで、いろいろな国で英語を使って日本酒を紹介しながら、世界中の人と乾杯する機会をいただいています。
この経験が、皆さんの日々の暮らしや、キャリアに活かすヒントになればとてもうれしいので、今日は国際唎酒師についてお話しようと思います。
唎酒師って何してるの?
日本酒のソムリエともいわれる唎酒師。英語では“Sake Sommelier”といいます。ソムリエや唎酒師と聞くと、あなたはどんなイメージが浮かびますか?「日本酒に詳しそう!」「ラベルを見なくても飲んだだけで日本酒を当てられそう!」「舌が肥えてそう!」「話が長そう!」・・・最後のはさておき、まあそんなところかと思います。
実際に唎酒師と話したり、飲んだりしたことがある人は少ないかもしれませんが、資格を持っている人はなんと3万人以上もいるんだそうです。じゃあ、この3万人もいる唎酒師たちって実際には何をしているんでしょうか。飲食店や酒販店にお勤めの方も多くいますが、日本酒にまったく関係のない業界にいる方もしばしば。
実は、日本酒の知識を基に、「いかに日本酒を楽しむか」を日々追求しているのが唎酒師なんです。ですから、「ラベルを見なくても飲んだだけで日本酒を当てられる」スキルはほとんど求められません。また、日本酒を楽しむと聞くと「飲むだけじゃん!」と思われがちですが、日本酒を自分だけが楽しむのではなく、みんなにも楽しんでもらうことを大事にしています。ですから唎酒師は「おもてなしのプロ」なのです!
唎酒師は日本酒用語の通訳!
日本酒を選ぶとき、難しい言葉がやたら並んでいませんか?「無濾過(むろか)生原酒」だったり、「山廃純米」だったり、日本酒の酒蔵さんたちがこだわっているらしいことは伝わるけど、日本酒をカジュアルに楽しむ人たちには、なにがなんだかサッパリ。日本語なのに、まるで外国語。
知らない外国語を話す人たちに囲まれて、何を言っているのかわからず、会話の輪に入れなくて、ひとり取り残されてしまったときの心細さといったらありません・・・が!そこに、唎酒師が登場するんですね!難解な専門用語を、日本酒に詳しくない人でもわかるように伝えることができる、そんな資格です。
国際唎酒師はダブルの通訳!
では、「国際」唎酒師はどうでしょう?唎酒師は3万人もいる一方で、国際唎酒師はたったの4千人程度。しかも、唎酒師は日本語の試験なのでほとんどが日本人ですが、国際唎酒師は英語・中国語・フランス語と多岐に渡るので、日本人以外の方もたくさんいらっしゃいます。
日本人であれば、日本酒の知識やスキルに加えて、科学や歴史にまつわる語学力も必要ですし、日本人以外の方にとっては、日本語の専門用語を覚える必要があるので、いずれにしても語学の壁が立ちはだかります。
たとえば、よく見る生酒も、日本酒の知識がないと、生肉を“raw meat”と言うように“raw sake”と訳してしまっているのを見掛けますが、本当は“unpasteurized(低温殺菌されていない) sake”というやたら長い英単語に訳さないといけないのです。
さらに、言葉というのは一筋縄ではいかないもので、英語が母国語の人でも、お酒に詳しくない限りは「お酒が“unpasteurized”ってどういうこと?」と疑問に疑問が重なっていきます。日本語を英語に訳せるだけでなく、その背景にある用語まで理解しないといけない。語学と用語のダブルで通訳をできる存在、それが「国際唎酒師」なんです。
日本酒学講師ってなに?
私は、日本酒学講師という資格も持っていますが、それは唎酒師や国際唎酒師になりたい人に講座をしたり、日本酒に興味がある人に日本酒の面白さを伝えるのがお仕事です。だから、ただのオタクが偉そうに「あゆみせんせい」なんて言っちゃってるわけです!
今は、新型コロナウイルスの影響で、海外出張はおろか、外出も控えなければいけないような状況ですが、インターネットがある時代。英語を使って、シンガポール人やマレーシア人、ベトナム人に向けてオンラインで国際唎酒師の講座を開催し、おもてなしのプロとして、日本酒を一緒に広めてくれる仲間を増やしています。
日本酒学講師は世界で300名ほどしかおらず、さらに英語を話せる講師は1割にすら満たないそうですから、時間や場所にとらわれず、英語を使った仕事に興味がある方は、ぜひ国際唎酒師から始めてみてくださいね。
国際唎酒師が英語の質問に答える!
今回は国際唎酒師についてご紹介しているので、英語でいただいた質問にお答えしようと思います。
[質問ブロック:元原稿から復活]
Answer
Yes, there is vintage Sake like wine, but I guess it is not so popular yet, especially in overseas markets. As Japanese people love Sushi, one of our cultures appreciates freshness! Or maybe Japanese love to drink so we cannot wait for so long! ...Just kidding. The meaning of “vintage” is the year and place of making wine, and normally people use this word as old and good quality wine. As for Sake, it would be blended like whisky so the Sake bottle usually shows “the number of years of aging” instead of “which year.” You could find a 3 years old Sake, or maybe older. The oldest Sake I have tried is 25 years old. If you would like to try, you may Google “aged Sake” to find it.
回答
はい、日本酒にもワインのようにヴィンテージがあります。でも、特に海外ではそうですが、まだそこまで大人気ではないんですよね。
日本人はお寿司が大好きですが、新鮮さに価値を見いだすのが日本の文化のひとつ。日本人はお酒を飲むのが好きだから、待っていられない!なんて冗談を言ってみたり(笑)。
「ヴィンテージ」はワインを作った年と場所を意味していますが、年数が経っていてクオリティが高いワインという意味で使うことも多いですよね。日本酒はウイスキーのようにブレンドすることもあるため、「いつ造られたか」ではなく、「〇年熟成」や「〇年古酒」という表記が一般的です。
3年寝かせた日本酒もあれば、私がこれまでで飲んだ日本酒でいちばん古いものは25年物!飲んでみたいときは「古酒」や「熟成酒」などで調べると見つかると思いますよ。
日本酒を学ぶ!
国際唎酒師は日本酒も英語も好きな人におすすめ
こんなことを言ったら、唎酒師の協会の方々に怒られちゃうかもしれないですが、十分に日本酒の知識があって、英語もペラペラだったら、別に資格なんて取らなくてもいいと私は思います。
なぜならば、資格を取得することはゴールではないからです。しかし、連載で何度も繰り返していますが、日本酒はまだまだ世界に広まっていない飲み物。英語がペラペラな日本人が日本酒を説明するよりも、“Sake Sommelier”の日本人が英語で日本酒を説明してくれる方が、信用されやすいのは事実です。
TOEICで高得点を取っていなくても英語がペラペラな人はたくさんいらっしゃいますが、やはりTOEICである程度の得点を取っていると聞けば「この人は英語ができるんだ」と思えるのと同じです。
でも、いきなり日本酒で資格を目指すのはちょっと・・・そんな方にぜひおすすめの漫画を紹介させてください!
漫画『白熱日本酒教室』で日本酒を学ぶ


講師のむむ先生と助手さんの可愛い二人(むむ先生が講師なのに、助手さんより背が低いというキャラ設定が最高 ※個人の感想です)が日本酒を解説してくれ、日本酒のことをもっと気軽に知りたい方にぴったりの漫画です。
日本酒愛好家をターゲットにした本や、資格取得のための教材は、本をめくった途端に難しい言葉がたくさん出てきますが、こちらの漫画は日本酒初心者の助手さんの目線で進んでいくので、とてもわかりやすいんです。
日本酒に限らず、お酒を飲む人にとって超重要な「悪酔をしない飲み方」まで学べちゃいます!

ちなみに、この「酔う」ことについては、唎酒師や国際唎酒師の教材にも出てきて、試験に出ることもあります。漫画を読みながら資格試験に出題されるような内容についても勉強できるので、副教材としても役に立ちます。また、実際に販売されている日本酒もたくさん出てくるので、読みながら飲んでみるなんていう楽しみ方もおすすめですよ〜!

おすすめの本
おわりに
日本酒がスキ!英語がスキ!どちらの「スキ」も諦めずに、仕事にできちゃうのが国際唎酒師のいいところ。私は、シンガポールで開催されている国際唎酒師の試験監督も務めていますが、試験なのに、受験生の皆さんって本当に生き生きとしているんです。英検やTOEICのピリピリとした試験会場とは別世界です(笑)
ちなみに、「国際唎酒師に興味があるけど、たくさん飲めないよ〜」なんて方もご安心ください!テイスティングは基本的に飲み込まないので、酔っ払いすぎる心配もありません。私は、毎回飲み込んじゃうけど。えへ。
国際唎酒師についてもっと知りたい方はこちら
国際唎酒師になるには?試験対策はどうすればいいの?などについて、藤代あゆみさんが教えてくれています!
「国際唎酒師」になるには?世界でたったの4000人!英語で日本酒文化を伝えるお仕事
藤代さんの書籍
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