日本で暮らし、博多弁を操る言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが出会った「間違いやすい日本語」をご紹介します。音が似ていたり、発音しづらかったり、私たちが英語を話すときに困った経験を、海外の方は日本語で感じているかもしれません。今回はささいなようで大きな違い?になってしまう発音の間違いをご紹介します。
目次
間違いに感謝!
外国人を悩ませる日本語はたくさんあります。私みたいに、「こんにゃく」と「婚約」を言い間違えた人も、きっと山ほどいると思います。
もちろん、そのときは恥ずかしいのだけれど、間違えたら勉強になるし、こういう記事のネタにもなるから、私はすべての失敗に感謝しています。
「婚約」と「こんにゃく」みたいな間違いやすいペアはたくさんあるから、この記事では、それについて書きたいと思います。さて、始めよう!
かわいい日本語?
「病院」「美容院」
この二つを間違える外国人はたくさんいます。
英語には「びょう」「きょう」「ぎょう」みたいな音がないから、なかなか発音ができないんです。だから、英語圏の方は、「きょうと」や「とうきょう」ではなくて、「きよと」や「ときお」とよく言います。
バンドの「TOKIO」はきっと喜ぶけれど、日本語をマスターするのなら「とうきょう」とはっきり言えるようにならないといけないですね。まあ、「ときお」と言っても、通じないわけじゃないけれど、「日本語がかわいいね!」と言われるかもしれません。
実は、私は「日本語がかわいい!」とはあまり言われたくない方です(笑)。そう言ってくる相手はたぶん、褒め言葉として言っているけれど、私の中では「かわいい=ネイティブじゃない」と感じます。そして、日本語ネイティブを目指している私は、かわいい日本語を使いたくないんです。
ただ、どう見ても私の漢字はかわいい。やっぱり、日本の子どもと同じように小さいときから勉強しないと、なかなかネイティブっぽくうまく書けるようにはなれないです。何回も練習することは大事ですね。私は、適当に覚えてしまったから、字のバランスはおかしいし、大きさも変。これはやっぱり、かわいい。
美容院と病院、どっちに行く?
なんの話だったっけ?かなりテーマから脱線してしまいました。そうそう、 難しい発音 でした。
私は、今「病院」と「美容院」の違いが聞き取れるし、正しく言えるけれど、それができるようになるまでかなり時間がかかりました。
これを間違えたら、かなりヤバい。
「ヘアカットをしに行く!」という意味で「美容院に行く!」と言ったつもりだったけれど、ちょっとだけ発音を間違えると、友達をかなり心配させてしまいます。
「ええ?大丈夫?なんで病院に行くの?」
解決方法は二つあります。まず、 頑張って発音できるようになること です。
もう一つは、「美容院」と言うのをやめて、シャレとる「サロン」に言い換えることです。よかろう?
ちなみに、私が初めて日本で一人で美容院に行ったとき、日本語がまだよくわかりませんでした。「今日はどうしましょうか?」と聞かれたので、「なんでもいい」と答えてしまいました・・・危ないなぁ。変な髪型にされなくてよかったです!
アメリカではあまり使わない「病院に行く」
アメリカではあまり「病院(hospital)に行く」とは言いません。hospitalは大きな病気をしたときなど、本当に大変な場合しか行かないところだから、風邪などで少し調子が悪いときならば、doctorとよく言います。例えば、以下のような表現を確認してみましょう。
I have a really bad cold, so I am going to go to the doctor to get some medicine.
ひどい風邪を引いちゃったから、薬をもらうために病院に行く。
You should go to the doctor.
病院に行った方がいいよ。
I was in a bad car accident, so I was in the hospital for two weeks.
交通事故に遭ったから、2週間入院しました。
I am going to the hospital for a CT scan next week.
来週CTスキャンをするために、病院に行く。
日本語では、「病院」「医院」「クリニック」などは全部まとめて「病院」と言えるけれど、 英語では、病気の程度によって使い分けられています 。
全然違う!「囚人」と「主人」
じゃ、次に間違いやすいペアを紹介しましょう。それは、「囚人」と「主人」です。
これも今までよく間違えました。これを間違えると、意味がおかしくなるから、きっと笑われます。でも実際はたいてい、言いたいことは通じると思います。ほとんどの人は「囚人」の話はあまりしないからさ。
lord、road、load?3つの「ロード」に注意
ところで、教会ではよく「主」の話をする。私は何回、間違えて「囚を褒めよう」と言ったことでしょうか。でも大丈夫。うれしいことに、神様はなんでも知っているから、言いたいことはわかってくれます!
以前に大ヒットした映画「ロード・オブ・ザ・リング」を見たことがありますか?この「ロード」ってどういう意味だと思いますか?多くの日本人はroad(道)だと思っているようですが、それは違います。
英語の題名をちゃんとつづると、Lord of the Ringsです。このLordは「主」という意味です。つまり「指輪の持ち主」というタイトルなんですね。面白いでしょう?
英語のroad(道)、load(重荷)、lordはすべてカタカナにすると、「ロード」になってしまいます。注意が必要ですね!
ちなみに、「難しい」より可能性がないのは、「厳しい」です。「それは厳しいなぁ」と言われたら、もはや可能性はゼロより低いことに気付きました。
食べられる?食べられない?「ツナ」と「砂」
私がいつも悩むもう一つの音のペアがあります。それは、「つ」と「す」です。
英語でも、単語の最後に「つ」みたいな音がくることはあります。例えば、itsの最後の音は、日本語の「つ」に近いと思うんです。ところが、単語の最初に「つ」がくることはないので、なかなかうまく言えません。
だから意識し過ぎるのか、私はなぜかよく、海岸にある「砂」を「ツナ」と言ってしまいます。
普通、人生でそこまでたくさん「砂」の話をする機会はないけれど、私は結構、「砂」のことを話す人なんです。それはビーチが好きだからじゃなくて、講演会でよくこの話題を持ち出すからです。
オチを台無しにしないために・・・
日本人はよく「サンドイッチ」を「サンド」と略しますよね。そうすると、英語ではsand(砂)になってしまいます。だから、もしI like to eat sand.と英語で言ったら、「砂を食べることが好きだ」という意味になります。
私はこの話を講演会でよくしています。このとき、私が「砂」をうまく言えずに「ツナ」と言ってしまったら、どうなるでしょうか?奇跡的に普通の文ができてしまって、私のジョークが全然通じない!
「『私はツナを食べることが好きだ』という意味になります」
この話をしたとき、何回かウケがあまりよくなかったことがありました。そのときはきっとこんなふうに「ツナ」と言ってしまっていたのでしょう。
今、かなり意識して「砂」と言うようにしていますが、念のために「海岸にある砂」と加えるようにしました。そうすると、聞いている人は爆笑です。
まだまだある、小さな言い間違い
「月」と「好き」もなかなか上手には言えないペアです。意識していうと大丈夫だけれど、気を付けないと、「好きが月!」と言ってしまいそうです。
ちょっと似たようなミスで、私の友達はある日、奥さんを紹介したときに、「こちらは、妻です」と言いたかったけど、「こちらは、罪です」と言ってしまったそうです。笑っちゃだめだけれど、やっぱり、笑う。
ほんのちょっとの発音の間違いが、結構ヤバいミスになる可能性があります。
ある日、私の学生はflying panについて話をしていました。すぐに「フライパン」のことだとわかったけれど、「鍋が飛んでいたら危ないから気を付けて」と言いたくなりました。正しくはfry(油で揚げる、いためる)ためのpan(鍋)なのでfrying panです。
私の苦手な「つ」と「す」、日本人の苦手な「l」と「r」。小さな間違いという点では、似ていますね。
間違いやすい音をきちんと「意識する」
こういう発音のミスは誰がどんな言語を話すときにも当たり前にあることだと思うから、あまり神経質にならなくていいと思います。だって、 母語の音声制度が違うから、外国語を勉強しているすべての人に同じような問題があって当然 です。
日本人が外国人と話すとき、外国人がどういう音に悩まされているかを知っていると、相手が言いたいことが理解できる可能性は高くなると思います。その逆もまた、そうですよね。
私自身も、どんなに頑張っても、まるっきり日本語ネイティブのような発音はできないとわかっています。けどさ、今の発音でも言いたいことほとんど伝わるから、それでいいと思います。そして 外国人として、この問題になりがちな音をしっかり意識して言うようにしたら、どんどんうまく言えるようになるとも思います 。
私が「旦那さんとこんにゃくした」と言ったとしたら、たぶん相手にも言いたいことは伝わります。けれど、どうしても旦那さんに「こちらは、私の罪です」とは紹介されたくないなぁ(笑)。そんなことを考えると、ちょっと複雑です。
いずれにせよ、これからも言葉の勉強を頑張らなくちゃ!
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