「イングリシュ・ドクター」の異名を持つ西澤ロイさんが、英語に関わるさまざまな方へのインタビューをするYoutube動画<西澤ロイの頑張らない英語>から、今回の記事ではアメリカの人気ラーメン店店主、西岡津世志さんを紹介します。
ボストンの学生に二郎系ラーメンが大人気!西岡津世志さんとは?
今回ご紹介するのは、ボストンにある人気ラーメン店のオーナー、西岡津世志さんです。いわゆる「二郎系」と呼ばれるボリューム満点のラーメンを提供する「Yume Wo Katare(夢を語れ)」をオープンし、ハーバード大の学生を中心に連日大行列ができるほどの人気を呼んでいます。しかし西岡さんのお店はただのラーメン店ではなく変わったルールがあるそうで・・・?そのユニークなシステムと開店秘話をお聞きしました。
西澤ロイ(以下、ロイ):二郎系のラーメン屋さんをアメリカのボストンで経営し、大行列ができているという人気ラーメン店「Yume Wo Katare(夢を語れ)」のオーナー、西岡津世志さんにお越しいただきました。
西岡津世志(以下、西岡):日本では「ラーメン二郎」をご存じの方も多いと思いますが、まさにあのラーメンをハーバード大学の学生に一切違わず大盛りでお出ししています。そしてラーメンを食べた後に、お客さんが夢を語るお店です。
ロイ:1年間にどのくらいの人が夢を語るんですか?
西岡:1年間で約4万5000〜5万件の夢が語られています。うちの店には売上目標がなく、年間に何個夢を語ってもらうかという経営目標があって、それを毎日カウントしています。
ロイ:その経営目標がハーバード大学でも研究対象になっているとお聞きしました。
西岡:ありがたいことに、ハーバードビジネススクールで事例になっています。
英語は得意・・・ではない?
ロイ:英語はあまりお得意ではないと伺ったのですが、本当ですか?
西岡:渡米してから店の準備中に英語を勉強していればしゃべれるようになると思ったんですが、全くしゃべれなくて。2011年にボストンに行って、まずは日本食レストランの門を叩き、日本人のオーナーさんにサポートしてもらいながら英語をしゃべれないまま店をオープンさせました。いつかしゃべれるようになるだろうと思っていましたが、いまだにしゃべれない(笑)。
ロイ:でも、5万件もの夢が語られたのを聞いているんですよね?
西岡:実はほとんど分かっていないんですよ!ただ、僕は夢を伝えることだけはできます。
ロイ:ネイティブの英語を全部聞き取るのは確かにハードルが高いと思います。でもちゃんとコミュニケーションは取っていらっしゃる。
西岡:そうですね。英語の文法はめちゃくちゃですが、だんだん僕の仲間たちがこの英語に慣れてくれています。
英語ができるようになってから挑戦しようとする人へ
ロイ:英語学習をしている方の中には、英語ができるようになってから何かに挑戦しようと思っている方が結構いらっしゃると思うんです。そういう方に、津世志さんならなんと声をかけますか?
西岡:それは英語を勉強する人のゴールがどこにあるかだと思います。僕は英語を勉強することではなく、自分の店をアメリカでオープンさせたいというのがゴールだったので、そのために英語が必要だっただけです。でもアメリカで生活しているうちに、生活に必要な英語だけはちゃんとしゃべれるようになりました。英語学習者の方々に思うのは、英語学習をゴールにせず、その先のモチベーションが高ければ英語はちゃんと勉強できるし、もっと言えば英語を勉強しなくても目標達成はできます。気付いたら英語がしゃべれていると思います。
ロイ:多くの人が「まず英語、その後に何かやろう」と思うけれどいつの間にかすり変わって、英語が目標になってしまっているのかも知れませんね。
西岡:まさにその通りです。最初は何かやるために英語が必要だったのに、途中からTOEIC◯点ということがゴールになってしまう。
ロイ:ミイラ取りがミイラになるんですよね。本来のゴールをちゃんと考えて、それに向かって足を踏み出していることが大事なのですね。
西岡:まあ、アメリカに行ってしまったらなんとでもなるんですけど。
ロイ:その行動力がすごいです!
「学生が夢を叶えたら1億円が手に入る」作戦!?
ロイ:ボストンにはハーバード大学の他にMIT(マサチューセッツ工科大学)もありますね。
西岡:ハーバード、MITの学生さんがターゲットです。毎月1回ハーバードの学生寮に忍び込んではラーメン100杯を無料で出したり、その代わり学生さんに夢を語ってもらって「いつかその夢を叶えたらミリオン持ってきて」と言ったり。ラーメン代はもらわないけれど10年後ぐらいに彼らの夢が叶って1億円が手に入る、という作戦で頑張っています。
ロイ:すごく夢がありますね。しかし夢が見つからないという人もいると思います。そういう方に対してアドバイスはありますか?
西岡:小学校の文集などでは花屋さんやプロ野球選手といった理想の職業を書いたじゃないですか。それがだんだん「自分ができるか、できないか」で考えるようになって、大学生になる頃には実現できることしか語ってはいけないと思い込み、「夢がない」と言うようになってしまいます。夢ってもっと簡単なもので、「今日何食べたい」から夢だと思っているんですよ。
ロイ:それも夢ですか?
西岡:夢というのはa great wantですよね。wantの付くものは全部夢だと思っています。ラーメン屋で語ってもらっている夢も「早く寝たい」とか、「今度は完食したい」「世界一周旅行をしたい」とか、いろいろなジャンルがあります。僕たちは「今夜何を食べたい」というところからwantを引き伸ばして、だんだん大きな夢にしていくことを目指しています。
ロイ:夢と聞くとマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの”I have a dream.”などを連想しますが、そうではなく”I want to ~.”も夢だから、したいことをどんどんやっていこう、ということですね。
西岡:そうですね。wantは常に体から出てくるじゃないですか。体から出てきたwantに対して、どうやって叶えるかを頭で考えて行動し実現するんです。みんな今は「うまくいくかな、できるかな」と頭で夢を選んでしまっていますが、心から湧き出てくる夢に向かっていくと毎日楽しくてたまらなくなります。
ロイ:本当にやりたいことは考えるより先に体が動いてしまいますよね。
西岡:僕の場合は気付いたらもうアメリカにいました。そこから何か食べたいけれど買えない、買えないから英語を使うしかないという状況になったので、英語というのはそうやって勉強していくものだと思います。
ロイ:そこに恐怖はなかったですか?
西岡:恐怖ですか?そういえばつい最近、台湾で財布をなくした途端にワクワクの波が押し寄せてきました。
ロイ:ど、どういう意味ですか!?
西岡:「なくしてしまった、ここからどうしようか」というアイデアをたくさん出せるチャンスが降ってくるというか。アメリカでの生活も同じで、不自由だからこそアイデアがたくさん湧いてきて、自分のできることが増えていくと思っています。言い方は悪いですが、なんでもできてしまう日本という環境は僕にとってはちょっと不自由で、それもあって日本を出たんです。
ロイ:確かに、自由過ぎると何もできないですもんね。ある程度制限があると逆にアイデアをたくさん出せるが出てくると。
西岡:「そうですね。理想はピンチではなく夢に向かってどうするかを考えることですが、こういうピンチに直面すると、天から課題を与えられたようで、「どうやって解決しようかな」ってワクワクするんです。
ロイ:財布をなくしてワクワクすると言う人、初めて聞きました(笑)。
夢に進みたい方へ、西岡津世志さんからのメッセージ
ロイ:最後に、英語学習者の方や何かに挑戦したい方、夢に進みたい方に向けて熱いメッセージをお願いします。
西岡:やはり夢を持つことが大事です。まずは小さな夢からスタートして、例えば「今日◯◯が食べたい」というものが出てきたらそれを今日食べてほしいです。夢を叶えると、次の夢が表に出てきます。そういうことを繰り返して、英語は「やらなくてはいけないもの」ではなく「やりたいもの」という夢にしていけば、放っておいても英語学習は進むと思います。
ロイ:have toでは「しなきゃいけない」になってしまいますからね。
西岡:have to / must / want というのを毎日考えて、have toを取り除いてwantに切り替えられるように意識しながら毎日を過ごしてもらえたらと思います。
ロイ:例えば、遠い夢として「Yume Wo Katare」にラーメンを食べに行くぞ、とか。
西岡:めっちゃいいですね!うちの甥っ子は1年に1回ボストンの「Yume Wo Katare」に来て、人前で夢を語るために英語の勉強をしています。
ロイ:ああ!それはいいですね!
西岡:たった1文でもアメリカ人の前で夢を語るとみんな”Good job!”と言ってくれるので、それを快感に1年に1回来ています。*
ロイ:それは面白いですね。僕も行きたいと思います。
西岡:はい、ぜひ来てください。
動画では、西岡津世志さんとロイさんの対談の様子が見られます。興味のある方はぜひ「西澤ロイの頑張らない英語」をご覧ください。
構成:吉澤瑠美 編集:増尾美恵子
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