頑張って英語学習を続けているのに、一向に英語力の上達を感じられない!と思ったことはありませんか?本連載では、イングリッシュ・ドクターの異名を持ち、1万人以上の英語学習者を見てきた西澤ロイさんが、あなたの英語の悩み「英語病」の解決方法を処方します。最終回の今回は、TOEICハイスコアや高レベルの資格を持っているのに英語が話せない原因について紹介します。
TOEICハイスコアがあるのに英語が話せない?
学生であれば英検。社会人/ビジネスマンであればTOEIC。日本で英語を学習していると、そういった資格が求められることも多く、英語の実力を測るために活用している人も多いでしょう。
しかし、永遠の課題だと言えるのが、資格を持っていたら英語が本当にできるのかということ――。実際、高レベルとされる資格やスコアを持っているのに、満足に英会話が行なえない人や、運用力に自信がないと言って英語を全く使おうとしない人もいます。
英語学習上の「つまずき」や上達を妨げるさまざまな要因を、イングリッシュ・ドクターの私は「英語病®」と呼んでおり、拙著『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では英語学習を全7つの分野に分けて、さまざまな英語病の診断を行なっています。
今回の記事では、『英語学習のつまずき50の処方箋』の第7章「資格試験科」に登場する4種類の英語病について診断を行なえるチャートをご紹介します。
以下のチャートで、質問に対して「はい」「いいえ」を選んでいってください。行き着いた英語病に関して、かかっている恐れがあることが判定できます(「かかっている」と断定するものではありません)。
各英語病に関する概要と改善ポイントは以下の通りです。
【英語病】47. 試験テクニック熱
【概要】英語の実力を付ける学習よりも、試験対策を行なうことに熱を上げてしまう英語病
【改善ポイント】実力を測るためには、対策は試験直前に「試験の形式に慣れる」だけで十分です。
【英語病】 48. ○×パズル病
【概要】英語学習そっちのけで、問題を正解できたかという結果に一喜一憂してしまう英語病
【改善ポイント】ただ問題を解くのではなく、英語を理解するプロセスを大切にし、実力を付けることを重視しましょう。
【英語病】 49. 資格ハンター症
【概要】英語力よりも資格やハイスコアを求めてしまう英語病
【改善ポイント】“健康診断”を繰り返し受け、その対策を研究したところで本物の“健康”は得られないでしょう。
【英語病】 50. 解きまくり症候群
【概要】試験対策の問題をたくさん解くことが英語学習の中心になっている英語病
【改善ポイント】タイムマネジメントをすることや、ただ問題をたくさん解くことでは、実力は身に付きづらいです。
今回の記事では、こういった英語病やその解消法に関して詳しくご紹介していきます。
試験勉強で実力が身に付かない根本原因は・・・
頑張って勉強をして資格やTOEICでハイスコアを取っても、それが英語の実力につながりづらい根本原因は何かと言うと、ズバリ「4択」です。与えられた選択肢の中から正しいものを選ぶという試験形式自体に、構造的な問題があるのです(このような試験方式を専門的には「間接試験」と言います)。
本来、目の前で英語を実際に話してもらい、しばらく会話をすれば、その人の英語力を“丸裸”にできます。そうやって英語力を評価できるのが面接試験であり、専門的には「直接試験」に分類されます。
しかし、わざわざ面接をするとなると、受験者だけでなく試験の実施側にも手間やコストが大きくかかります。そこで特にTOEICテスト(正確に言うとTOEIC L&Rテスト)は、「3択もしくは4択のマークシート方式」という、お互いに手軽な方式を取っているのです(それが毎年100万~200万人もの英語学習者が受験している要因の1つだと言えます)。
実力がある人であれば、正しい選択肢を選べるはずです。しかし、正しい選択肢を選んだ人が、本当に実力があるとは断言できません。ここがこの構造的な問題の本質なのです。
ちなみに、当てずっぽうで高得点を取ってしまう可能性については、質の高い試験(TOEICテストも含まれます)であればかなり低いと言えます。しかしそれよりも、学習者が試験勉強を行なう「姿勢」に問題が出てしまうケースが多いのです。
問題をひたすらに解いていませんか?
「試験の模擬問題をたくさん解くこと」が英語学習の中心になっている人は結構いるのではないでしょうか。また、スマホの英語学習アプリを使って、いろいろな問題を解いている人も多いでしょう。
そこで注意していただきたい英語病が2つあります。1つ目が「解きまくり症候群」です。これは、問題を解くという行為が英語学習の中心になってしまう英語病です。何が問題かと言うと、問題を解くときの頭の使い方が、実際に英語を運用する際とは大きくかけ離れていることです。
例えば、自分で英語を話す/書く際には、空欄を埋めたり、与えられた単語の中から選んだりするわけではなく、自分が言いたい英単語を思い出すことから始めなければなりません。ですから、英語を自分で使った経験があまりない人が、問題をたくさん解く形の学習を続けてしまうと、「英語は読めるけど話せない人」が生まれてしまいやすいのです。
正解か不正解かで一喜一憂していませんか?
そしてもう1つ、ぜひとも気を付けていただきたいのが「○×パズル病」です。これは、正解か不正解かという結果に一喜一憂してしまう英語病です。もちろん、正解だったらうれしくなるのが人情ですが、重要なのは「問題を解くプロセス」です。
例えば、4択のリスニング問題で正解できたとします。しかし、同じ正解だったとしても、もっと深掘りするならば以下の4パターンに分類することができます。
1.ほとんど聞き取れなかったが、当てずっぽう/勘で偶然正解できた
2.一部のキーワードが聞き取れ、消去法で正解できた
3.正解となる選択肢の意味が分かり、ちゃんと正解を選べた
4.パーフェクトに聞き取れ、全て意味が分かり、100%の自信を持って正解を選べた
つまり、同じ正解でもその中身によって大きく価値が違います。自分で勉強をするときにも、こういったプロセスの違いを意識することが大切になります。
多くの人が恐らく、問題を解いた後に正解を確認し、解説を簡単に読む程度で済ませてしまっているのではないでしょうか。そのような学習方法では、英語の実力は残念ながらつかないのです。
しっかりとした実力を身に付けられる学習法
では、実力を付けるためには一体どのような学習をすればよいのでしょうか?
そのためのポイントが「パーフェクトに理解する」ことと、「自分で使えるようにする」ことです。問題を解いた後、ぜひ以下のようなことを自分に問うてみてください。
- 出てきた単語やフレーズがしっかりと理解できており、自分でも使えるか。
- 登場した文法項目がしっかりと理解できており、自分でも使えるか。
- 流れてきた英語音声が全て聞き取れているか。
- 発音がしっかりと分かっており、自分でも発音できるか。
- 不正解だった選択肢は、なぜ不正解かを説明できるか。
- 問題に出てきたようなやり取り/会話が自分でもスムーズにできるか。
英語が本当にできる人は、こういったことが自然とできるのです。ですから、上記のようなことを少しでも意識すると、英語学習の質がずっと高まることでしょう。ぜひ消去法といった試験テクニックを一旦手放して、分からないことと向き合い、それを「分かる」、そして「できる」に変えていってください。
参考書籍として、TOEICの模擬問題を活用して実力を養うことのできる本を2冊ご紹介しておきましょう。『TOEIC L&Rテスト最強の根本対策 PART1&2』(実務教育出版)は、パーフェクトに聞き取れることを目指し、「リスニング力」のトレーニングが行なえます。
そして『TOEIC L&Rテスト最強の根本対策 PART5』(実務教育出版)は、英文を語順通りに一度で読み解ける「読解力」を養うトレーニングが行なえる書籍です。
資格ではなく実力を求めよう
英語学習という“大海原”で、自分の英語力がどのくらいのレベルなのかを示してくれる資格試験は非常に便利なものですが、世の中にはさまざまな資格対策本があふれています。英語の実力を付けたい人が、気付かないうちに試験問題のパターンやタイムマネジメントといった表面的なテクニックを学ばされていた・・・というのは非常によくあるケースです。
資格を手に入れるよりも大切なことは、それに見合った実力を身に付けることのはずです。(もちろん、好きでハイスコアを求めるのは自由ですし、それを否定するつもりはありません)。
この記事でお伝えした内容、そして拙著『英語学習のつまずき50の処方箋』をぜひ羅針盤としてご活用いただき、英語運用力アップにつなげていただけたらうれしいです。あなたの英語上達、そして英語を使ってのご活躍を心より応援しています。
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