スタンダップコメディアン小池リオさんに学ぶ、すべらない英語自己紹介【西澤ロイと世界で活躍する日本人】

患者に対して適切な処方箋を出す医師のように、英語学習者に最適な練習法やアドバイスを与える「イングリシュ・ドクター」の西澤ロイさん。そんな西澤ロイさんが英語に関わるさまざまな方へのインタビューをするYoutube動画<西澤ロイの頑張らない英語>から、今回の記事ではニューヨークの人気スタンダップコメディアン小池リオさんが教える英語自己紹介テクニックを紹介します。

ニューヨークの人気スタンダップコメディアン、小池リオさんとは?

今回ご紹介するのは、アメリカで約20年にわたりスタンダップコメディアンとして活躍されている小池リオさんです。リオさんはニューヨークを中心に活動し、世界中のセレブゲストを含む40万人以上を爆笑の渦に巻き込んできた実力派ですが、学生時代の英語の成績は「10段階の2」だったとか。アメリカで培った英語コミュニケーション術をまとめた書籍『英語は最初の10秒』(ダイヤモンド社)を参照しながら、すべらない自己紹介の秘訣をお聞きしました。

西澤ロイ(以下、ロイ):本日のゲストはニューヨークで活躍されているスタンダップコメディアン、小池リオさんです。書籍『英語は最初の10秒』をダイヤモンド社から刊行されましたが、「英語は最初の10秒」とはどういうことですか?

小池リオ(以下、小池):英語に限らず、多くの人が大切にすべきなのが最初のつかみです。特に英語では最初の10秒で相手の心をつかむと、その後たくさんしゃべらなくても「面白いやつ」として輪に入れてもらえます。最初につかむかつかめないかで雲泥の差だと思いますね。英会話の入口と出口の、入口だけでも固めるというフォーマットを作りまとめたのがこの書籍です。

ロイ:この本を読ませていただいて、ネタが満載でさすがスタンダップコメディアンだなと思っていたのですが、打ち合わせでいろいろお話を聞くと・・・。

小池:もう大変でした。スタンダップコメディアンを呼んでおいて爆笑禁止。スベり禁止なら分かりますが、「ああ面白いですね、NGです!」って。初めての経験ですよ(笑)。

ロイ:この本の読者は一般的な英語学習者で、特に苦手な方も英語ができるようにならないといけないから、爆笑を狙うなということでしょうか。

小池:ええ。相手の心をつかむということは「仲良くなること」です。相手を爆笑させることは必要なくて、クスッとか、なるほどとか、とにかくリアクションを作ろうというコンセプトなんです。たくさんの学習書が世に出ていますが、リアクションを求めるための本は日本にはあまりないんですよね。単に、名前は何々、仕事は何々、と事実を言うだけでは相手も反応のしようがありません。相手が喜んでいればこっちも楽しくなってどんどん話せますが、どんなに面白いことを言っても向こうがクスッともせず腕組みをしていたらそれはもう地獄です。とにかく相手が喜んでくれて楽しくなる、「楽しい英語」というコンセプトです。

ロイ:分かります。日本語でもリアクションは重要ですよね。例えば、名刺交換するときに「ロイって本名ですか」とか「英検4級ってどういうことですか」とか、名刺にネタを仕込んでおくとコミュニケーションが楽になりますよね。その英語版というか。

小池:まさにそういうことですね。皆さん丸腰で行きがちなので、ちょっとした武器を携えようということです。

お世辞は最強のコミュニケーションツール

ロイ:具体的にはどんな自己紹介をしていますか?

小池:僕が名前を言った後、次に絶対に言うのがお世辞です。僕の場合は必ず靴を褒めます。

My name is Rio. By the way, I like your shoes.
私の名前はリオです。ところで、いい靴ですねぇ。

向かい合っていると相手は緊張するじゃないですか。その目線を一瞬下に落として、褒めてあげる。アメリカ人は靴をすごく重要に思っているので、靴を褒めると喜びますし、中には汚い靴もありますが「もう何年も履いてるんだ」とか「バーゲンなんだ」とか、それはそれで大阪人みたいなノリで返してくれるんです。

ロイ:名乗ると次に自分の職業がどうとか言いたくなるところを、いきなり相手の話に持っていくという発想がいいです。

小池:名前(事実)、仕事(事実)、事実、と言うと詰まっちゃうから、間に情感を入れるわけです。事実を言った後は必ずI like 何とか、I’m happy.とか、事実ではないことを言う。そうすると余裕ができるんですよね。ちなみに、お世辞は会話に詰まったときにもBy the way, I like your 〇〇. の〇〇を入れ替えると、話題転換に使えますよ。

ロイ:I like your 〇〇は便利な表現ですね。

これは使える!出身地を言うときに笑いを取るフレーズ

ロイ:他にも何かいいテクニックはありますか?

小池:出身地をよく聞かれると思います。東京なら“Oh, Tokyo!”と盛り上がりますが、“I'm from Aichi.”と言うと大抵”Huh?”と言われてしまいます。そういう場合に決めているのがこのパターン。

Aichi is like the 〇〇 of Japan.
愛知県は、日本の〇〇のようなものです。

小池:僕はデトロイトにしています。

ロイ:ああ、車の!

小池:ちょっとしたトンチですね。すぐ分かる人もいるし、なんで?という人には、

ロイ:“Toyota”とか言えば。

小池:そう!そうすると距離が近くなるんです。

ロイ:僕は千葉出身ですが、“Chiba.”と言っても通じないので“I’m from Tokyo.”でごまかしてしまいます。どうしたらいいですか?

小池:千葉ならニュージャージーですね。

ロイ:ニューヨークの隣、みたいな?

小池:そうです。だから埼玉の人に聞かれても、茨城、栃木もニュージャージー(笑)。でも日本でも「東京の隣」と言うでしょう?どうしてもカラーがないと思ったらノースカロライナ!ノースカロライナはアメリカ人の間でも「何もない」というイメージです。何もないと思っているマイナーな地域の人は“〇〇 is like the North Carolina of Japan. Because there’s nothing.” と言うとアメリカ人は面白がります。

〇〇 is like the North Carolina of Japan. Because there’s nothing.
〇〇は、日本のノースカロライナみないなものです。何にもないですから。

ロイ:この本の94、95ページに「アメリカの場所で言うと〇〇一覧表」というのが載っていますね。六本木だとビバリーヒルズ、渋谷はシリコンバレー

小池:イメージと一致していればいいですが、異論がある人もいるかもしれませんね。でも逆にツッコんでもらって、「私はこう思います」と盛り上げていきたいです。大阪は難しかったですね、福岡も。今もまだ模索中です。

ロイ:この本が素晴らしいなと思うのは、三言しゃべるところです。日本人の英語は一言二言で終わりやすいので、僕は「3球目を投げろ」というアドバイスをよくするのですが、この本では3行目が入っている

小池:この3行目も、言いやすい単語ばかりなんです。例えば

Maybe, maybe not ...
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

It could be.
かもしれない。

Probably.
多分。

That’s what I think.
というのが私の考えです。

とか覚えやすいじゃないですか。さっきのパターンで行くと、新宿なら

Shinjuku is like the Times Square of Japan. Ah, maybe, maybe not.
新宿は日本のタイムズスクエアのようなものです。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

ロイ:今の言い方って、大阪弁の「知らんけど」みたいな?

小池:完全にそうです。あれも言いやすいですよね。相手のリアクションもいいし。後は勝手に相手が広げてくれます。たくさんしゃべらなくていいというのはそういうことなんです。

ロイ:リオさんはスタンダップコメディアンなので、笑わせてくれる本かと思いきや爆笑禁止の本ですが(笑)、役に立つテクニック満載ですね。

小池:ちょっと真面目に作ってしまいました(笑)。でもこれはスベりません!「へー」とか「おー」を必ず担保できます

ロイ:大事ですよ。僕もアメリカの学会で発表したいという方のプレゼン制作を手伝ったとき、まず笑いを入れました。

小池:分かってるね、やっぱり。

ロイ:その方が自分の名前を言うときにちょっと噛んだんですが、それで笑いが取れたから、安心してちゃんとできたようです。

小池:外国人とは、笑ってもらうとギュッと距離が縮まりますからね。笑いは日本人同士以上に必要なものだと思っています。

自分の名前を英訳して伝えよう!愛嬌のある自己紹介

動画のエンディングのコーナーではおまけ映像(16:46ころ~)として、モデルの新井美穂さんが登場します。小池リオさんに愛嬌のある自己紹介のテクニックを教えてもらいました。

新井美穂(以下、新井):愛嬌のある自己紹介って日本語でも難しいですよね。例えば?

小池:僕らの名前には意味がありますよね。例えば美穂さんなら”My name is Miho.” と言って終わりでもいいですが、その後に「美穂って意味はRice head beautiful in Englishなんだよ」と言うと、向こうが「へー」ってなる

新井:なるほど。これからは“My name is Miho. Miho means ‘rice head beautiful.’”と言います。

My name is Miho. Miho means “rice head beautiful.”
私の名前は美穂です。美穂の意味は「稲穂が美しい」という意味です。

小池:名前通りビューティフルなんです、とでも言えば「おー」ってなりますし。

I am as beautiful as my name.
私は名前の通り美しいんです。

新井:それはちょっと恥ずかしいですが(笑)、確かに会話はどんどん広がっていきそうですね。

小池:会話が広がるし、名前を覚えてもらって「彼女の名前は“Rice head beautiful”(稲穂が美しい)という意味なんだって」と他の人に紹介してもらえることもあります。Rice headと言った後に“But I like bread better.”(でも私はパンの方が好きなんです)と付け加えるといいかも。

But I like bread better.
でも私はパンの方が好きなんです。

新井:英語はそういうふうに使えばいいのですね。

小池:トンチを使ってね。こういった思考の人が書いた本です(笑)。

コメディアン小池リオさんが伝授するすべらない英語自己紹介テクニック

すべらない英語自己紹介として、小池リオさんに次のようなテクニックを教えていただきました。

  • 自分の名前を言った後で、すぐに相手の靴を褒める。
  • 出身地を伝えるときには、「アメリカの場所で言うと〇〇」のように、イメージしやすい地名を挙げる。
  • 「しらんけど」のような簡単な一言を添えて、自己紹介は3文以上にする。
  • 自分の名前の意味を英語で伝える。

動画では、小池リオさんとロイさんの対談の様子が見られます。興味のある方はぜひ西澤ロイの頑張らない英語をご覧ください。

小池リオ
小池リオ(小池・リオ)

在米25年。ニューヨーク中心に活動する日本人プロスタンダップコメディアン。学生時代の英語の成績は10段階中の「2」。著書に、英語が苦手でも一瞬で相手の心をつかむ英語本 『英語は最初の10秒!』(ダイヤモンド社) がある。
ウェブサイト: https://riokoike.com
Twitter: https://twitter.com/Riokoike

西澤ロイ
西澤ロイ(にしざわ・ろい)

イングリッシュ・ドクター TM。英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない原因である「英語病 TM」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんなふうに英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)など計11冊で累計17万部を突破。コミュニティFMラジオにて冠コーナー「西澤ロイの頑張らない英語」が好評オンエア中の他、メディア出演多数。ビジョン&ミッションは「日本人がフツーに英語を使い、世界中で活躍し、平和に貢献している世の中にする」こと。
公式HP: https://english-doctor.co.jp/
Twitter: @roy_nishizawa
YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/user/990english

構成:吉澤瑠美 編集:増尾美恵子

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