患者に対して適切な処方箋を出す医師のように、英語学習者に最適な練習法やアドバイスを与える「イングリシュ・ドクター」の西澤ロイさん。そんな西澤ロイさんが英語に関わるさまざまな方へのインタビューをするYouTube動画<西澤ロイの頑張らない英語>から、今回の記事では通訳者の橋本美穂さんの人気の理由でもある、通訳としてのこだわりについて紹介します。
「ふなっしー」や「ピコ太郎」の通訳をする、橋本美穂さんとは?
今回ご紹介するのは、人気テレビ番組「情熱大陸」などにも出演して、通訳者として有名な橋本美穂さんです。スピーカーになりきって通訳をしたり、英語にない言葉を研ぎ澄まされた感性で英訳してしまうことで大人気を集めました。話者の隣で、即時に訳す同時通訳という仕事は、英語能力のみならずさまざまな能力が必要で、英語を使う仕事の中でも、間違いなく最高レベルの技術が要求されます。英語のプロフェッショナルから、どんなお話が聞けるでしょうか。
西澤ロイ(以下、ロイ):「情熱大陸」という番組がありまして、英語では“A Passionate Challenger”というタイトルで、日本語に訳すと「情熱的な挑戦者」になりますが、その番組に出られた、通訳者の橋本美穂さんです。She sure is “a passionate challenger.” 最初に自己紹介をお願いします。
橋本:私、通訳をしておりまして、主にビジネスのフィールドで、英語から日本語、日本語から英語の逐次通訳、同時通訳をしております。元々は会社勤めをしていたのですが、その後いろいろあって辞めまして、通訳者になって12年くらい(※動画公開 2018年11月当時)になりました。
ロイ:通訳は絶対に手が出せない分野なので、それだけで尊敬するんですけども、例えばふなっしーとかピコ太郎さんの通訳をされて話題になったんですが、どんな感じでされてたんですか?
橋本:はい、あれはですね、まず自分のフィールド外であったということから始まるんですけど、会議通訳者でしたのでビジネスの通訳がメインで、芸能関係はやらないのですが、たまたまふなっしーさんもピコ太郎さんも外国人記者クラブで割りとビジネス向けのプレゼンをする場だったので、ご縁があって通訳をさせていただきました。
でもふなっしーさんは梨(の妖精)ですからね。ピコ太郎さんもそうですけど、やっぱり芸能人の方が何を言い出すか分からないので、大変苦労しました。
ピコ太郎節に、ぶんぶん振り回され過ぎちゃって、死ぬかと思いました。(笑)実際に失敗も幾つかしているのですが、通訳の一番楽しいところってスピード感なんですよ。止まっちゃいけない、瞬時に出さなきゃいけない、伝わらなきゃいけないというのはあるのですが、そこまで考える時間がないということが、楽しいですよね。
西澤ロイさんの自己紹介を通訳してみた
ロイ:ちょっと一つお願いがあるのですが、僕の自己紹介を通訳していただけませんか?自己紹介を読ませていただきますので、逐次通訳をよろしくお願いします。
ロイ:こんにちは、イングリッシュ・ドクターの西澤ロイと申します。
橋本:Hello. This is Roy Nishizawa, the “English doctor.”
ロイ:日本人が頑張って英語を勉強していても、なかなか上達しなかったり、挫折してしまったりします。
橋本:I often witness Japanese people trying very hard to study English. But despite their efforts, some people, mm, they struggle to make progress – or even experience setbacks.
ロイ:その原因を私は「英語病」と呼んでおりまして、「英語病」を治す、ということをやっています。
橋本:The reason behind these struggles is what I call the “English Learning Disorder.” So what I do is I try to treat these, uh, disorders.
ロイ:代表的な英語病としては、例えば、英語が嫌いな「エゴイヤ病」。
橋本:Some iconic examples of English Learning Disorder would be, uh, “English phobia,” for people who prefer to avoid English.
ロイ:英語でのコミュニケーションを妨げる「英語コミュ障」「直訳スピーキング病」。
橋本:“English communication barrier” and also “stuck in literal translation,” which becomes a problem when you try to communicate with others.
ロイ:あとは、リスニングの上達を妨げる「左脳リスニング病」などがあります。
橋本:And “left brain listening” – an impediment to listening proficiency.
ロイ:おー、ありがとうございます!
橋本:よかった!テストやん、これ!(笑)
ロイ:(笑)いえいえ・・・。通訳の世界に僕は絶対に行くことはできないなあと思ってるので、本当に心から尊敬しています。本当にむちゃ振りに応えていただきありがとうございます。
橋本:もう “passionate challenger” って言われたら、やるしかないでしょ!(笑)
ロイ:わははは(笑)。
「エゴイヤ病」と「英語コミュ障」の治療法が詳しくわかる
「エゴイヤ病」「英語コミュ障」についての治療法は、こちらの記事で詳しく解説しています。正解がない言葉「英語病」「エゴイヤ病」はどう訳す?通訳で大事なこと
ロイ:例えば今の「エゴイヤ病」とかって、どう訳すんですか?答えがないじゃないですか。
橋本:正解はないですねー。大丈夫でした?
ロイ:はい、 “English phobia”、なんとかphobiaってなんとか恐怖症とかに使われる言葉ですよね。
橋本:はい、claustrophobic(閉所恐怖症)。狭いところが怖いとか。だから「怖い」なんですけどね、「イヤ」とはちょっと違いますか?
ロイ:いやいやいや。
橋本:それしか出てこなかった。
ロイ:素晴らしいと思います。ありがとうございます!
ロイ:橋本美穂さんの通訳のさまざまな技術が、英語学習者の方にすごく役に立つんじゃないかと思いまして。同時通訳の人は、すごくボキャブラリーもあって、しゃべる能力も高くて、いろいろな意味でレベルは高いかもしれないですけども、じゃあ初心者の人がそこから学べる、すごく大事なことがあると思うんですね。通訳ってどんなことを重視されていますか?
橋本:通訳で大事なのは「正確に訳す」ということだと思います。それから、「翻訳」と対比していただくと分かると思うですけど、「翻訳」というのは文書の方ですね、文書に残すのに比べて時間が限られている。なので「スピード」も大事ですね。瞬時に訳さないとダメ。3つ目は私がこだわっているところなんですけど「表現力」なんです。というのは、一つのことを言うにも、語彙の種類がさまざまあって、いろんな言葉で表現ができるはずだし、またその言い方についてもカジュアルに言うこともできれば、フォーマルに言うこともできるし、テンションも低めだったり高めだったり調節して訳すことで表現力も駆使できるんじゃないかなと思います。
ロイ:なるほど。美穂さんの通訳って、話し手になりきるみたいなことがすごくあるじゃないですか。例えば、ふなっしーになりきって訳すとか。
橋本:ははは、そうなしな(笑)。
ロイ:(笑)
橋本:いや、練習したんですよね。まず、徹底的にスピーカーの方を分析して、その人の価値観とか思いを、どういうときにどういう気持ちになるのかな、というのをまず理解した上で、それでその人の言葉を通訳したり。そうすることによって、通訳って冷たく第三者的に訳しちゃうこともできます。その方が正確だしスピーディーだし、でもそうじゃなくて、その人が話しているんだから、その人が話しているように訳そうというのが、私なりの勝手なパッション。でそれを追求して、研究しているうちに、その人になっちゃうっていう現象が結果的に起きるんですよね。
橋本美穂さんの毎日の英語学習法
日本語としてもかなりクセのある喋り方のふなっしーの通訳をする・・・、想像もできない仕事です。そこにはスピーカーの分身として話すための努力がありました。
動画では、橋本美穂さんの英語学習法や通訳の極意に、ロイさんが迫ります。興味のある方はぜひ西澤ロイの頑張らない英語をご覧ください。
構成:設楽智 編集:増尾美恵子
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