舞台は19世紀。両親亡き後、幼い妹たちを支える主人公、キティを突然の婚約破棄が襲います。遺された借金返済のためには、裕福な名士との結婚が不可欠だったのに・・・。キティは悲しみに暮れ・・・るのではなく、さらなる覚悟を胸にロンドンへ!社交界デビューを果たしたキティの大逆転はかなうのでしょうか。アメリカとイギリスでも話題となったラブストーリーを紹介します!
“貧乏令嬢”を襲った突然の悲劇
「わたしとは結婚しない?」――そんな不穏なセリフから始まるのが、翻訳小説『没落令嬢のためのレディ入門』です。
1818年、イングランド。南部のドーセットシャーという田舎町に暮らすキャスリン・タルボット、通称キティ。元貴族の令嬢で、両親は亡くなっているものの、愛する4人の妹がいて、地元の裕福な名士との結婚も控えていました。
・・・そう。いました。過去形。
物語は、いきなりその結婚が破談になるところから始まります。婚約者(だった)チャールズがキティとは結婚しないと言い出したため、キティは思わずおうむ返しに「わたしとは結婚しない?」と言ったわけです。そりゃそうなるよね。
それに対して、チャールズは「残念だが」と返します。まだ冒頭2行しか進んでいないのですが、すでに「どの口が言うんだ」とチャールズにつかみかかりたくなってしまいます。
落ち込んでいる暇なんてない!
キティはこの婚約破棄に焦りました。なぜなら、父親が莫大な借金を残していたから。しかも、返済期限は4カ月後です。裕福なチャールズの財産で返済してもらえるはずが、一気に5姉妹そろって路頭に迷う危機が訪れてしまいました。
キティは婚約者の裏切りを悲しむどころか、怒り心頭でチャールズを追い返します。キティ、強い。とはいえ、キティと妹たちの危機が去ったわけではありません。どうするキティ。頑張れキティ!
彼女の出した答えはこうでした。
「わたしはロンドンへ行くわ」
なんと、大都会ロンドンの社交界へ打って出て、チャールズなんか足元にも及ばない、もっと裕福な相手をゲットしてみせる!と決めたのです。キティ、無敵。
母親譲りの性格を持つキティは現実主義で、逆境にもめげません。何より、「私が4人の妹を守ってみせる」という長女としての深い愛が力になっています。キティ~!!
全部うまくいくはずだったのに
母親の古い友人を頼り、キティはロンドンへ行き、社交界デビューのための手ほどきを受け始めました。
礼儀作法はとにかく上品でなければならない。社交の場に必要なドレスやアクセサリーはやたらめったらお金がかかる。
いくつものハードルを、キティは持ち前の知恵や機転で乗り越え、宣言通り社交界の仲間入りを果たします。さすがキティ。
社交界の紳士たちから注目を集めるまでになり、このまま彼女に夢中なそれも大金持ちの青年と無事ゴールイン・・・となるはずが、ここで思わぬ敵が登場。青年の兄、ラドクリフ伯爵です。
「なんかコイツ怪しくないか?」とピンと来たラドクリフ伯爵は、弟を守るため、キティの背景を暴いて「正体バラすぞ」と脅し、追い払おうとします。
財産狙いの女から弟を守り抜きたい兄。妹たちを守るための財産が必要な姉。
たまらない展開ですこと、オホホ!(社交界を意識)
衝突する2人の行方は?『高慢と偏見』『ダウントン・アビー』ファンにおすすめ
脅されたキティが取った行動は・・・「脅し返し」でした。そんなことある???
衝突から始まったラドクリフ伯爵とキティの関係ですが、その後、徐々に変化を遂げていきます。
青年との結婚は、青年の兄である伯爵との関係は、そしてキティと妹たちの未来は、どうなるのでしょうか。
転んでもただは起きない、読者の予想を軽々と超えてくるヒロイン、キティはとにかく痛快の一言。また、キティと伯爵のやりとり、きらびやかで優雅な舞踏会や、上流社会で生きる人々の様子も生き生きと描かれています。ジェーン・オースティンの名作『高慢と偏見』や、イギリス発の大ヒットドラマ『ダウントン・アビー』が好きな人は、きっとハマってしまうのでは・・・?
幸せを自分の手でつかみに行くキティから、元気や勇気をもらえること間違いなしの一冊です。