「クローゼットにいる骸骨」「指を持ち上げる」。本当はどういう意味の英語なの?【ウルトラ英会話表現】

skeletonの意味は「骸骨」と知っているのに、skeleton in the closetの意味は分からない・・・。今回も、カン・アンドリュー・ハシモトさんにそんなフレーズを取り上げて、楽しく解説していただきます。

クローゼットにいる骸骨って何?

数年ほど前に、私が夢中で見ていた法廷ドラマの一場面を紹介します。

急死した政治家である夫の跡を継ぎ、選挙に出ることを決意した未亡人。長年、その政治家を支えてきた選挙参謀は、今度は未亡人を支えることを誓います。しかし、彼は「ただ、その前に」と言った後で、未亡人にこう尋ねます。

Any other skeletons in the closet?

「クローゼットに他の骸骨はない?」・・・という意味ではありません。では、どんな意味でしょうか。

回も、「知っている単語しか出てこない文なのに意味不明・・・それってどういう意味?」シリーズの続編です。

skeleton in the closet

さて、実際に骸骨がクローゼットにいたら怖いですよね。実はこれ「人に知られたくない隠し事」「人に知られては困る秘密」のことです。

ドラマの中で選挙参謀は、急死した政治家との結婚が3度目であったこと、前の前の夫との間の息子が薬物中毒でリハビリ施設にいることなどを調べ上げた後、「この他にも知られては困る秘密はあるか?」と未亡人に尋ねているのです。

ちなみに、アメリカ英語で骸骨がいるのはclosetの中ですが、イギリス英語ではcupboard(食器棚)の中です。

Everyone has a skeleton in the closet.(アメリカ英語)
誰もが人に知られたくない秘密を持っている。

I don’t have any skeletons in my cupboard.(イギリス英語)
私には人に言えない秘密はない。

今は大学院生になっている、僕のめいが小学生の頃の話を紹介します。彼女は当時中学生の姉とスマートフォンを共有していました。メールもSNS(英語ではsocial mediaと言います。SNSはSocial Networking Service/Siteの頭文字とされていて、英語として間違っている訳ではありませんが、英語ではSNSという言い方はまずしません)も全て姉と共有だったため、「ボーイフレンドとの話もお姉さんにすべて筒抜けじゃない」と僕が言うと、彼女は笑って答えました

No problem. Sis knows every single skeleton in my closet.
大丈夫。私のどんな秘密だってお姉ちゃんは知ってるから。

一方、「隠していた秘密がばれること」は「クローゼットから外に出ている」という言い方をします。

Her secret romance is now out of the closet.
彼女の秘密の恋は、今や誰もが知っている(秘密はばれてしまっている)。

また、「自分がクローゼットを出る」と言うと「自ら秘密を公表する」という意味になります。実際には「(同性愛者であることなど)性的指向について公表する」という意味で使うことが多いです。

He came out of the closet.
彼は同性愛者であることをカミングアウトした(彼は隠していたことを公表した)。

Keep your fingers crossed!

さて、どんな意味でしょうか。

「指をクロスさせておいて」という意味であることには違いありません。しかし日本にはその習慣はありません。そのため、そのまま日本語にしても分かりにくいです。どんなときに使うのでしょうか。

先ほどの未亡人は、「出馬することは直前まで秘密にしておくように」と選挙参謀からアドバイスされますが、それをすっかり忘れて友人に話してしまいます。そのとき、彼女は友人にKeep your fingers crossed.と言いました。

これは「幸運を祈っていて」という意味です。指を交差させることで十字を作り、幸運を呼ぶ、または不幸を遠ざけることを意味します。ぼく自身も勘違いしていたのですが、これはキリスト教以前から存在していた言い方でイエス・キリストの十字架とは別物のようです。未亡人は「選挙で勝てるように祈っていて」と言っているわけです。

「自分の指をクロスする」という言い方もあります。

A: I have a job interview today.
B: Oh, I’ll keep my fingers crossed.

A: 今日仕事の面接なんだ。
B: あら、幸運を祈っているわ。

Dad is going to undergo heart surgery today. Let’s keep our fingers crossed.
パパは心臓の手術を受けるのよ。一緒に幸運を祈りましょう。

ちなみにsurgeryはアメリカ英語では加算名詞(countable noun)として使われることもあります。イギリス英語では不可算名詞として扱います。

指(finger)を使う表現は他にもあります。次の表現を見てみましょう。

lift a finger

指を持ち上げる・・・どんな意味でしょう。次のように使います。

My husband never lifts a finger to help with the dishes.
(直訳)夫は皿洗いをするために決して指を持ち上げない。

「指1本も動かさない」と考えると分かりやすいかもしれませんね。つまり、「何一つしない」という意味です。上の例文を訳し直すと「夫は皿洗いの手伝いなど何一つしない」。通常はこのように否定的な内容に対して使います。

They just complain but won’t lift a finger to change the situation.
彼らは文句を言うだけで、何一つ状況を変えようとはしない。

If he won’t lift a finger to call you, just dump him.
もし彼が君に電話もしようとしないなら、捨ててやれ。

あなたの「指」は何本?

指を使ったフレーズが続きました。ここで質問です。もしあなたが次のように聞かれたらなんと答えますか?

How many fingers do you have?

質問の意味はもちろん「あなたは何本fingerを持っていますか?」です。

もしもあなたが「20」と答えたとしたら、相手は腰を抜かすかもしれません。

あなたの友人にアメリカ人かイギリス人がいたらぜひ尋ねてみてください。日本人にとっては意外な答えが返ってくると思います。

英語を母語とする人たちにこの質問をしたら、たいていはEight.またはTen.と答えるはずです。なぜでしょう。

この質問、和訳が「指」ではなく「finger」であったことが気になった人はいるでしょうか。それがヒントです。

実は英語では足の指はfingerとは呼びません。toeと言います。日本語では、手の指も足の指も、指は指ですね。英語では違います。

足の親指:big toeまたはfirst toe
足の人差指:second toe
足の中指:third toe
足の薬指:fourth toe
足の小指:little toeまたはfifth toe

そして手の親指のことはthumbと呼び、fingerとして数えないのが一般的です。

だから、How many fingers?と尋ねられて、Eight.と答えるのは親指以外の手の指を数えているからです。ただしthumb fingerという言い方もあることはあって、Ten.と答えても間違いではありません。

fingerを辞書で調べてみました。

Cambridge Dictionary:
any of the long, thin, separate parts of the hand, especially those that are not thumbs
手の、特に親指以外の長くて細い部位

Merriam-Webster Dictionary:
any of the five terminating members of the hand : a digit of the forelimb especially : one other than the thumb
手から出ている5つの末端の部分。特に親指を除く前肢の指

Oxford Learner’s Dictionary:
One of the four long thin parts that stick out from the hand (or five if the thumb is included)
手から突き出ている4本の細長い部位(親指を入れるなら5本)

いかがでしょう。意外と知られていない、英語と日本語の大きな違いです。

講演に呼ばれたり、出張授業の依頼があったりしたとき、僕が受講者にかなりの割り合いで尋ねる質問ですが、とても喜んでもらえることが多いです。

この記事を読んでいる方も、ぜひ英語を勉強している人に質問をしてみてください。日本の人たちに「英語って面白いなあ」と思ってもらえることが、僕の最大の喜びです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

次回もぜひお楽しみに。

カン・アンドリュー・ハシモト
カン・アンドリュー・ハシモト

アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身。教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手掛ける株式会社ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。英語・日本語のバイリンガル。公益財団法人日本英語検定協会、文部科学省、法務省などの教育用映像(日本語版・英語版)の制作を多数担当する。また、作詞・作曲家として、NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCMに楽曲を提供している。9作目となる著作『外国人に「What?」と言わせない発音メソッド』(池田書店)が発売中。

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トップ写真:山本高裕(ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部)
本文写真:Phil Hearing, Dayne Topkin, Bradyn Trollip from Unsplash

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