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エルヴィス・プレスリーにビートルズ・・・50~90年代の忘れられない名曲

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皆さんの思い出の1曲はなんですか?そんなテーマで、前・中・後編に分けて10名の方に「この1曲」を語っていただきます。前編にご登場いただくのは、DJの小林克也さん、脳科学者の茂木健一郎さん、そしてお笑いタレントの川村エミコさんです。

Heartbreak Hotel (1956) by Elvis Presley

選者:小林克也(DJ)

子どもの頃はまだテレビがない時代で、家に帰るとラジオをつけていました。アメリカ軍の放送FEN(Far East Network、現在のAFN)を聞けば、音楽からドラマまでなんでもありました。そこで耳にしたのがエルヴィス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」。当時のほかの曲は、中学程度の英語力でも何を歌っているかだいたい想像がつくのに、この曲はリズムも歌い方も独特でまったくわかりませんでした。

今聞くと古い感じがしますが、この曲のスタイルは今のロック音楽の原型です。僕と同世代のジョン・レノンやポール・マッカートニー、ボブ・ディランは、この曲を初めて聞いた日にミュージシャンになると決めた、とインタビューで語っているほど有名です。歌詞を手に入れて意味を学び、1年ほどかけて全部歌えるようになりました。そのおかげで英語の発音もぐんとよくなり、学校で英語のテキストを読んだときに、先生に絶賛されるくらいになっていました。プレスリーの最初の映画『やさしく愛して』(原題Love Me Tender)も見に行きました。影響を受けて、話し方とかもまねしていましたね。

当時の音楽は、色で言えばカラーではなくてモノクロの世界。後に登場するビートルズとも違った、あの時代を映すサウンドトラックです。音の作りも今の音楽とはまったく違うので、若い人たちにもぜひ一度味わっていただきたいです。

Profile こばやし・かつや:大学1年のときに通訳兼案内業試験に合格。29歳でラジオのDJを始める。文化放送「百万人の英語」講師、テレビ朝日「ベストヒットUSA」司会、NHK「にほんごでくらそう」講師などを経て、現在もDJ、司会などで活躍中。

Nowhere Man (1965) by The Beatles

選者:茂木健一郎(脳科学者)

僕は当時としては普通に中学校から英語を学び始めた。ビートルズは解散していたけれども、タレントの鈴木ヒロミツさんがラジオで「ビートルズ大全集」という番組をやっていたりして、一種のリバイバルブームになっていた。ビートルズはどれも素晴らしいと思ったけれども、特に引き付けられたのが「Nowhere Man」のような楽曲だった。He’s a real nowhere man(彼はいつも独りぼっち)から始まって、この世に身の置き所がなくて、取り立てて考えもなく、漂流している男の歌で、そんなどうしようもなさを、Isn’t he a bit like you and me?(どこか君と僕に似ていない?)と救ってあげるところがすてきだと思った。

英語を「三単現のs」から始めて、徐々に学んでいく上で、洋楽はとても役に立った。とりわけ、日本語にはないフィーリングとか、世界観を学ぶためには、教科書の例文以上のインパクトとか感動があったように思う。

ラブソングもよかったけれども、「Nowhere Man」のような題材で歌を作ってヒットさせられるんだというのも目からうろこだったし、どちらかというと人とのコミュニケーションが苦手で変わり者だった僕にとっては、魂を救ってもらえるような歌だった。ずっと後になって、ジョン・レノン自身が行き詰まっているときにふっと出てきた楽曲だと知った。洋楽、そして英語は深い。

Profile もぎ・けんいちろう:脳科学者、作家。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。近著『最強メンタルをつくる前頭葉トレーニング』(PHP研究所)ほか著書多数。

I Will Always Love You (1992) by Whitney Houston

選者:川村エミコ(お笑いタレント)

それまで映画館で見たことのある映画と言ったら「ドラえもん」シリーズのみだった私は、母にお願いして初めて洋画なるものを見に、映画館に連れて行ってもらいました。その映画が『ボディガード』です。

小学6年生の冬。主題歌のI will always love you.という歌詞が「あなたをずっと愛し続けます」という意味だとわかったとき、「えっ!」と思わず声が出るくらいびっくりしました。あんな伸びやかに、でっかい声で「私はぁぁぁぁぁ~~~愛し続けますぅぅぅぅ~~~~、あなたをぉぉぉ~~~~!」と声高らかに叫んでいるのかと。恥ずかしっ、でも海外の人、すごい!そんな真っすぐ言うんだ、あの声量で!すんごくかっけー!となりました。

英語はわからないけど、「エンダァァァァァ~!イヤァァァァ~~~!ウィルオールウェイズ ラブ ユー」が、胸にすごく染み渡っていくのは本当なので、「あ、そうか、意味は関係なく、英語という音がイケてるんだ。ABCってすごいんだ」と思って心震えました。当時、弟が英会話を習っていたので、家に帰り、使っているテキストを見せてもらいました。「dog」すら尊かったです。「ドッグゥ」「ドッグゥ」とそっとつぶやいてみました。

今でもこの曲を聞くと当時にヒョイっと戻れますし、いつ別れの時が来るかなんてわからないのだから、今言える気持ちは今言える人になりたいと思えます。なかなかできないけど、なりたいなぁと思えます。

Profile かわむら・えみこ:お笑いコンビ「たんぽぽ」のメンバー。コンビ、ソロで、テレビなどで活躍中。2020年10月に初のエッセー集『わたしもかわいく生まれたかったな』(集英社)を出版。

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ENGLISH JOURNAL 2021年5月号の特集は「名曲で学ぶ洋楽英語」。特集内で紹介されている洋楽曲をSpotifyのプレイリストにまとめています。ぜひお楽しみください。

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※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2021年5月号特集の内容を再構成したものです。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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