文法の知識がなくても、英語は話せるようになる?

「英会話に文法の知識はどの程度必要なのか?」「英会話スクールに通う前に、文法の勉強をした方がいいのか?」「文法はどの程度できればいいのか?中学レベルでOKなのか?」文法と英会話の関係についての気になる疑問に、7人の英語コーチがずばりお答えします!

Q. 文法の知識がなくても、英語は話せるようになりますか?

英会話教室に通い始めてから英語に対するアンテナが身について、YouTubeやInstagramなどで英会話関連の投稿を見るようになりました。しかし、昔から文法が苦手で、いまだに全く理解できていません。文法の知識がなくても、いずれ英語を話せるようになるでしょうか?

A. 文法は絶対やったほうがいい!

こんな質問に対して、コーチ陣からは次のような回答が寄せられました。

  • 英会話には英文法は必須です!
  • 英文法の習得は、英会話上達の最短ルート
  • 英文法は野球のルールと同じ
  • 文法は避けて通れないと観念せよ!
  • 文法を避けるのは「回り道」!
  • 学生時代の苦手意識は捨てよう
  • 文法は絶対にやったほうがいい!
すべてのコーチの回答に共通するのが、英文法の勉強は避けて通らず、しっかりと 取り組む べき、ということ。「難しい」「つまらない」という印象を持ちがちな英文法ですが、これをおろそかにすると、効率の悪い勉強をしてしまうことになるのです。

では、以下、それぞれのコーチからのアドバイスをご紹介します(全7件)。各コーチのプロフィールや、これ以外の質問と回答は、 こちらの記事 に。

英会話には英文法は必須です!

英文法を理解しないと、ブロークン英語から抜け出せない (福田圭亮)
結論から言うと「英会話に英文法は必要」です。では、英文法とは何か。一言で説明すると「英語の語順」です。英語を第一言語として習得したネイティブは、英文法を自然に習得しているので、あえて英文法を学ぶ必要はありません。しかし、英語を第二言語として習得する日本人は「日本語と英語の語順や語法の違い」を知る必要があるのです。
  • 日本語の基本の語順: Subject (主語)+ Object (目的語)+ Verb (述語動詞)
  • 英語の基本の語順: Subject (主語)+ Verb (述語動詞)+ Object (目的語)
このように、日本語と英語では語順が大きく違います。英語は、どの順番で英単語を入れていくか、で意味を伝える言語です。ですので、英文法を習得し「英語の語順」を理解すれば、後は言いたいことに応じて英単語を組み替えていけば良いのです。

逆に、「英語の語順=英文法」を理解していないと英会話でも英語の語順で話すことができません。ですので、英会話には英文法は必須です。また、基礎的な英文法を習得しているかいないかで、英語の習得スピードが大きく変わってきます。

基本的な英文法を理解していないまま英会話を継続しても、いつまで経ってもブロークン英語から抜け出すことはできませんので、英会話を行う前にまずはしっかりと基礎的な英文法の習得を行いましょう。

英文法の習得は、英会話上達の最短ルート

「英文法」は数学の「方程式」と同じで応用が利く (五十嵐未知子)
文法の知識を習得することは、英語を上達させるのに最短および効率的な方法と言えます。数学も、方程式や法則を覚えておくと、いろいろな問題に応用でき、幅広く問題を解くことができるようになりますね。英文法も英語を幅広く使うための方程式と言えます。

すなわち 、英文法で「型」を覚えておき、それを応用すれば、単語や表現を変えることで様々な表現ができるようになります。

英語が苦手という人は、ほぼ100%、中学レベルの英文法を完全に理解していません。ここの基礎を理解していないと、複雑な構文などに対応できなくなるのです。 従って 、英文法を飛ばしてしまうと、ちょっと複雑な長文など、読むのにかなり苦労されるのでは、と 予想 します。

さらに、英文法を理解しないままだと、すべての表現を最初から暗記することとなり、効率が悪く感じます。相当暗記に力を注いでいけば、もしかしたら英文法なしでも話せるようになるかもしれませんが、英文法を学んだ方が、学習の効率が格段にアップすることは間違いないと思います。

英文法は野球のルールと同じ

基本ルールを知れば「話す」も「聞く」も楽しくなる(金子まりな)
英語を野球に例えてみると分かりやすいかもしれません。打ったら一塁に走る、ストライク3つならアウト1回と同じ、など、ルールがあることで成り立っています。かといって、プロ選手のように細かくすべて知らないとプレイできないか、というと、そんなことはありません。後は最低限の野球道具があれば、もうできますよね。

英文法は、野球のルールと同じ。基本的なルールを知っていれば楽しくプレイする(話す)ことも、観戦する(聞く)もできるようになります。「基本的」というのは、中学レベルの文法です。そして道具とは、英語で言えば単語。これも、中学レベルの基礎単語を覚えれば、英会話は十分にできていきます。

一方、文法の知識がないままだと、話せるようになるには時間がかかります。子どもは見よう見まねで、周囲が話していることから学ぶこともできますが、大人になってからの英語学習では、基本的なルールを知った上で会話の練習をすることで、自ら組み立てることができ、受け身にならず上達が早くなります。自分で言えると楽しいですしね!

また文法は、英語の4技能と言われる、「話す・聞く・読む・書く」においてすべて必要になりますので、文法を知っていれば、SNSの投稿を読むことができたり、動画などのリスニングも楽になったりします。まずは基本的なルールを覚える。そして自分の話したい状況で すぐに 口から出てくるようなスピーキング力をつけていくのがおすすめです。

文法は避けて通れないと観念せよ!

英文法を勉強し直すと、もっと英語が好きになれる(鬼英語コーチ☆サヤコ)
私たちが文法を意識しなくても日本語を流暢に話せるのは、物心ついた頃からずっと日本語に慣れ親しんでいるからです。文法とは、言わば英語の「ルール」。そして大人になってから外国語を習得する場合に文法を無視するのは、ルールを知らずにスポーツを観戦するようなものです。そして「何が起こっているのか、なんとなくしか分からない」という、残念な結果に終わってしまうのです。

幸い、文法の最重要事項は中学校の3年間で学びます。最近は中学英語文法をまとめた参考書が数多く出版されているので、ご自分のお好みにあったものを選んで復習されてみてはいかがでしょうか。そしてYouTubeやInstagramに触れる際、文法が実際どのように使われているかを意識すると、「文法とは教科書の中にだけ存在するのではない」ことを実感していただけるかと思います。

実は私自身、以前は文法が大の苦手でした。でも英語を教え始めたときに観念して、少しずつ勉強し直しました。すると英語がどのように構成されているかが徐々にクリアになり、より英語を好きになれたのです。文法は避けて通れない道だと早めに観念して、まずは薄めの参考書を1冊使い倒してみましょう!

文法を避けるのは「回り道」!

中学3年間の英文法の復習教材を手に入れよう(谷口恵子 / タニケイ)
「どうも文法が苦手で、できることなら避けて通りたい」という声はよく聞きますが、文法知識がないままに話せるようになるためには、膨大な量の英語のインプットが必要です。

ネイティブの子どもが、文法を習わなくても英語を話せるようになるのは、周囲の人から話しかけられたり、周りで話されている会話を聞いたりすることによって、毎日たくさんの英語に触れて、自然に英語のルールを身につけていくからです。

それと同じ道をたどろうとしたら、四六時中英語に触れ続けるくらいの努力が必要です。日本にいながら、特に大人になってから英語を本格的に習得しようとする方には、やはり基本的な文法知識は知っておくことをおすすめします。そうでなければ、かなりの回り道になってしまうでしょう。

文法に自信がない方は、まずは中学レベルの英文法で構いませんので、一度復習をしましょう。大きな書店に行くと、中学3年間の英文法の復習ができる本がいろいろ売っていますので、パラパラと中身を見て、自分がやる気になりそうなものを選びましょう。もし迷ってしまう場合には、山田暢彦先生の『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく。』(学研)が、問題も豊富で、説明も分かりやすくて、おすすめです。

学生時代の苦手意識は捨てよう

大人の思考力と良質な教材で、今だからできる学習を!(船橋由紀子)
英語アンテナが身についているなんて、おそらく英会話教室でのレッスンが充実していらっしゃるのですね!

さて、質問に対する答えですが、文法の知識がなくても、英語を話せるようになる人はいらっしゃいます。ただ、英文法とはその名の通り「英語のルール」。もう少し難しい言葉を使うと「理論」ですね。スポーツでも何でも「理論」を理解しながら練習した方が、効率良く上達しそうな気がしませんか?ですので、「文法の知識がなくても話せるようになる。が、文法知識があった方が、上達が早くなる」と言いたいです。

ここで、質問者様のコメントで気になるところが……。それは「昔から文法が苦手」というくだりです。おそらく学生時代に英文法で苦労されたものとお察しします。が、今もなお苦手とは限りません。大人の学び直しの最大のメリットは、私たちが10代の頃よりも思考力を育てているということ。今だから理解できる内容はかなり増えているはずです。

さらに現在では「大人の英文法学び直し」を目的にした書籍がたくさん出版されています。ぜひ、これまでのマイナスイメージを一旦横に置いて、書店の文法書コーナーに足を運んではいかがでしょうか?ポイントは、字が大きめ、イラストたっぷりの書籍を選ぶことです。

文法は絶対にやったほうがいい!

中学1~2年の基本文法を押さえて「頭打ち感」を突破(大西江美)
YouTubeやInstagramなどでリアルな英語に触れておられるのは素晴らしいですね。教科書的な教材やテスト向けの教材を「勉強」として 取り組む よりも、自分が興味を持つトピックで、ネット社会の醍醐味を活用して、楽しみながら、いろいろなチャネルで英語に触れるのは本当におすすめの勉強法です。

ただ、ここでご質問の文法 に関して はずばり、絶対にやったほうがいいです。それも受験用や試験対策の難しい文法ではなく、まずは中学英語です。もっと言えば、中1、中2の基本的な文法はしっかり押さえることです。そうでないと、しばらくすると必ず頭打ちを感じられるようになるでしょうし、ご自分が話そうと思ったときに正しい文章を組み立てることができません。

今後 、長い目で英語を楽しみながら伸ばしていくために、まずは薄い大人向けの中学英文法に特化した本に1冊取り組まれるといいと思います。書店で手に取ってみて解説が多すぎず、ご自身が理解しやすいと思うもの、簡単な練習問題がついているものからスタートするといいと思いますよ。頑張ってください。

ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部 「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!

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