英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)の無料オンライン学習コンテンツで英語と演劇が学べる!

シェイクスピアの戯曲は現在も世界中で舞台化、映画化され、日本でも芸能人が主演した上演などが頻繁に行われています。その中でイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(Royal Shakespeare Company、RSC)は、斬新な解釈や演出による作品でも有名です。RSCは教育にも力を入れており、無料で提供されているオンライン学習コンテンツがかなり充実しています。そのコンテンツで英語と演劇を学ぶ方法を紹介します!

RSCの「Shakespeare Learning Zone」とは?

ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー (Royal Shakespeare Company、RSC)のサイトから行ける「 Shakespeare Learning Zone 」(シェイクスピア学習ゾーン)では、戯曲ごとに4つの 区分 で学べます。

  • STORY(ストーリー)
  • CHARACTERS(登場人物)
  • LANGUAGE(言葉、表現、技法)
  • STAGING(舞台化、演出)
また、3つのレベルが設定され、レベルごとに上記4つの 区分 で学習できる構成です。
  • LEVEL 1 - NEW TO THE PLAY(レベル1:この劇に初めて触れる)
  • LEVEL 2 - MORE DETAILED INFORMATION (レベル2:さらなる詳細情報)
  • LEVEL 3 - IN-DEPTH STUDY AND ANALYSIS (レベル3:深く研究・ 分析
情報を読んだり、動画を視聴したりすることで学び、「 TEST YOURSELF」のところからは確認クイズを受けられます。

英語はネイティブスピーカー向けですが、動画では明瞭に話していますので、英語字幕を表示させれば(自動生成の字幕は不正確なところもありますが)聞き取りやすいでしょう。

LEVEL 1なら、シェイクスピアや演劇についてあまり予備知識がなくても、楽しく学習内容に入っていきやすいと思います。

▼「Shakespeare Learning Zone」↓

www.rsc.org.uk

▼「Shakespeare Learning Zone」紹介動画↓

学べるシェイクスピアの戯曲は?

現時点では、下記の14作品のコンテンツがあります。聞いたことがあるものも多いのではないでしょうか?

  • Hamlet(ハムレット)
  • Henry V(ヘンリー五世)
  • (The Tragedy of) Julius Caesar(ジュリアス・シーザー)
  • King Lear(リア王)
  • Macbeth(マクベス)
  • Measure for Measure (尺には尺を)
  • The Merchant of Venice(ヴェニスの商人)
  • A Midsummer Night’s Dream(夏の夜の夢)
  • Much Ado about Nothing(から騒ぎ)
  • Othello(オセロー)
  • Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)
  • The Taming of the Shrew(じゃじゃ馬ならし)
  • The Tempest (テンペスト)
  • Twelfth Night (, or What You Will)(十二夜)
どの作品を学ぶかは、粗筋をだいたい知っているものや、映画や舞台などで見たことがあるものを選ぶといいでしょう。

「Shakespeare Learning Zone」での学び方

画面に沿って学んでいけるので、進めやすいです!

例えば四大悲劇の一つ、「Hamlet」(ハムレット)を選んで、学習 手順 を見ていきましょう。

LEVEL 1, STORYで、粗筋を確認"> LEVEL 1, STORYで、粗筋を確認

LEVEL 1のSTORYでは、PLOT(粗筋)を読んで確認できます。登場人物名をクリックすると、演じた俳優の写真(演出によっては現代風の身なりをしたものも。また多様性の観点から、ハムレットやオフィーリアなどの主要人物をアフリカ系の俳優が演じたり、男性主人公を女性が演じたりすることも結構あります)や人物に関する情報が表示されます。

「DID YOU KNOW?」の矢印からは、ここでは例えば劇の舞台となっている場所、Elsinore(エルシノア)の説明が読めます。

ひととおり確認したら、右上の「 TEST YOURSELF」で、出来事を戯曲の話の順番に並び換えてみましょう。

下にある「TEACHER NOTES」には、授業でこの劇の粗筋を取り上げる際の授業のヒントなどが記されています。ここでは詳しいSynopsisも入手できるので、独学の際は音読してみたりするのもいいでしょう。「TEACHER NOTES」は、STORY以外の LEVEL 1などの各 区分 にも置いてあります。

LEVEL 1, CHARACTERSで、登場人物の概要を確認"> LEVEL 1, CHARACTERSで、登場人物の概要を確認

主要登場人物について確認しましょう。各人物の詳細は、STORYで見られる情報と同じです。

確認が終わったら、右上の「 TEST YOURSELF」で、表示される質問に当てはまる人物を制限時間内に選んでいくゲームに挑戦!(焦って英文を読み間違えたのか、初回のトライで全問正解できなくて大ショックでした・・・)

LEVEL 1, LANGUAGEで、セリフや英語の技法を確認"> LEVEL 1, LANGUAGEで、セリフや英語の技法を確認

ここには動画もあり、盛りだくさんですが、ほかの戯曲と共通する部分も多いようなので、ゆっくりと 取り組み ましょう。

シェイクスピアの作品を読む上で欠かせない、次のような英語の技法などについて学べます。

  • Iambic pentameter(弱強五歩格)
  • Prose and verse(散文と韻文)
  • Rhyming couplets(二行連)
  • Antithesis(対義語、反対の概念)
「WHERE WILL I FIND IT IN HAMLET?」のところで、戯曲でこれらの技法がどのように使われているのかの例を確認できます。

仕上げとして、下にある「 TEST YOURSELF」の穴埋め問題で、用語を理解できたかをテストできます。

1つ目の「弱強五歩格」は、「弱・強」のリズムが5回繰り返されて1セット10音節になったもので、シェイクスピアのセリフの多くがこのリズムで書かれています。

このような説明を読むと意味不明かもしれませんが、ここでは下記のように生き生きと説明されています。

The rhythm of iambic pentameter is like a heartbeat, with one soft beat and one strong beat repeated five times.

 

弱強五歩格のリズムは心臓の鼓動のようなものです。静かな鼓動と力強い鼓動が1つずつ、それが5回繰り返されます。

さらに、動画で実際にセリフを読んでいるのを聞くと、セリフが音として立ち現れ、そのときの登場人物の気持ちがリズムから伝わってくることが感じ取れます。シェイクスピアの言葉は、文字で読んで勉強するものではなく、音で聞いて、声に出して、登場人物や物語世界を生きるためのものなのです。(すごい!面白い!)

動画で取り上げられているのは、『ロミオとジュリエット』第3幕2場のジュリエットのセリフです。声に出してみた人が、ジュリエットはロミオのことを思って breathless (息を切らす)になっている、といった気付きを述べています。

日本でこういう授業を受ける機会はなかなかないと思いますので、動画で疑似体験できて、楽しいです。

LEVEL 1, STAGINGで、舞台・映像化の様子や演出上の解釈を確認"> LEVEL 1, STAGINGで、舞台・映像化の様子や演出上の解釈を確認

舞台の写真とその説明を見ながら、舞台化した際のセットや衣装がどうなるかを想像できます。

さらに、現代的な解釈に基づく演出をする場合は、独裁政権が倒れた国を想定することなどが可能、といった記述により、思考を促されます。

LEVEL 2で、戯曲をさらに深く味わう"> LEVEL 2で、戯曲をさらに深く味わう

STORYでは、の流れ(タイムライン)を詳しく確認できます。

シェイクスピア劇は長いものが多く、舞台化や映画化に当たってはたいていの場合、一部のシーンがカットされます。戯曲のタイムラインがだいたい頭に入っていれば、舞台や映画を見るときに、どこがカットされているか、そこにはどんな演出上の意図があるか、といったことを考えられるようになり、より深く作品を味わえます。

CHARACTERSでは、登場人物の代表的なセリフや人物同士の関係を相関図から確認できます。セリフから人間関係を読み取るヒントが得られるでしょう。

演出によっては、「この人物は実はこの人物に恋している」といった隠しネタを仕込むこともあります。でたらめなわけではなく、人物のセリフや行動からそうも読み取れるという部分を膨らますことが多いようです。そうした二次創作的想像もたくましくすると、シェイクスピア劇がもっと楽しくなります。

LANGUAGEでは、有名なシーンからセリフを 具体的に 見ていくことができます。『ハムレット』なら、 To be , or not to be の独白や、「尼寺へ行け」の場面など。セリフの一部は現代風の英語にパラフレーズ(書き換え)したものが表示でき、内容への理解を深められます。

俳優が演じる動画や写真も見られる・聞けるので、自分でもセリフを声に出してみましょう。該当するシーンを演じるほかの動画も検索して、見・聞き比べるのも面白いです。

STAGINGでは、演出でポイントとなるテーマなどについて、提示される写真や問いから考えを深められます。『ハムレット』なら、ハムレットと母ガートルードの関係や、ハムレットの父の亡霊の出現など。

LEVEL 3で、自分ならどう演出するかを想像してみる"> LEVEL 3で、自分ならどう演出するかを想像してみる

LEVEL 2の内容をさらに深めた学習ができ、最終的には「自分ならこの劇をどう演出するか?」と、演出家になったつもりで考えます。

このように、無料 にもかかわらず 、「 Shakespeare Learning Zone 」ではシェイクスピア劇や豊かな英語表現をたっぷり学べるのです!

ほかにもあるRSC提供の学習コンテンツ

2020年4月現在、新型コロナウイルスの感染 拡大 防止のため、イギリスの学校ではオンライン授業が行われています。その素材として、RSCは「Shakespeare Learning Zone」のほかにも多彩なコンテンツを提供しています。

詳細は下記をご覧ください。(一部、日本では再生できない動画もあります)

▼「HOME LEARNING WITH THE RSC」↓

www.rsc.org.uk

上記ページからは、イギリスの作家ロアルド・ダールの児童文学『Matilda(マチルダは小さな大天才)』をRSCが初演したミュージカル『Matilda』に関する学習コンテンツにもアクセスできます。

▼「MATILDA SCHOOL RESOURCES」↓

uk.matildathemusical.com

グローブ座のサイトでも上演動画や学習素材を提供

ロンドンにある劇場、 グローブ座 (Shakespeare’s Globe)のサイトでも、新型コロナウイルスの状況に際し、期間限定で、過去の上演動画を無料で提供するなどしています(「WATCH」からアクセス)。

また、「LEARN」などから、シェイクスピアや演劇の情報を得られますので、こちらも活用してみてください。

▼「グローブ座」↓

www.shakespearesglobe.com

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文:Irene
『シェイクスピア劇の名台詞』(ピーター・ミルワード著、安西徹雄訳、講談社学術文庫、1986年)は、タイトルどおり、シェイクスピア劇の代表的なセリフを英語原文と日本語対訳、解説で手軽に読めて、重宝します。紹介されているセリフを音読しておけば、英語の新聞記事や現代の小説やドラマ、映画などで、シェイクスピアのセリフがもじって使われていることにも気付きやすくなります。残念ながら絶版のようですが、古書で入手できる方はぜひ!

トップ画像: steve oprey による Pixabay からの画像

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