途端にネイティブっぽく言えるようになる英語スピーキングひとり練習法

「ネイティブスピーカーの英語を聞いてまねして言ってみても、英語らしく聞こえない」という悩みはありませんか?ただ漫然と練習するのではなく、3つのポイントを明確に押さえて練習すれば、格段に滑らかに英語を言えるようになります。 すぐに 実践できる練習法を、演劇の本場イギリスで演技を学び、今は俳優、英語講師として活躍する秋江智文さんに教えてもらいましょう。

コミュニケーションのためのスピーキング練習法

英語の発音練習や英語を流ちょうに話す練習をするのは、人と何かを伝え合うためですよね。そのためには普段から、コミュニケーションに直結するスピーキング練習をしておくことが大切です。これは実は、自分1人で行う練習でも可能なのです。

学校の英語教育はレシピを読むだけの料理みたいなもの

学校で英語を学ぶことは、料理をレシピだけで学んで実際に作らずにいるのと同じようなものです。そのため、少しでも実践に近づけようと、学校の教師や個々の学習者はさまざまな学習法を取り入れようとしています。

しかし私の場合、よくあるいろいろな学習法はほとんど試したことがありません。それでも人からは、話す英語にstutter(口ごもる)やaccented(なまりのある)がなく、fairly good(結構いいじゃん)と言われます。

そう言われるのは、イギリス留学中に見つけて今でも行っている独自の練習法のおかげです。この練習法は、留学しなくても、日本にいながら行うことができます。

英語を流ちょうに話せる理由

私の留学の目的はperforming arts(舞台芸術)を学ぶことでした。イギリスの学校で主に演劇、スピーチ、詩の朗誦、ストーリーテリングといったものを学びました。

舞台上では高い英語のスキルが求められます。単に日常的に通じるレベルではなく、相手に届かせる英語を学ぶ必要がありました。人に理解されるだけでなく感動してもらうには、言葉をどんな速度で言ったり、どのような情感を込めたり、どこにアクセントを置いたりするのかに特に注意しなければなりません。

言葉や伝えたいことをどのように人に届けるかを常に考えていました。言葉や言い方に対してそのように向かっていく中で、知らず知らずのうちに英語のスキルが育まれていったのだと思います。

演劇と言語習得は目的が合致する

私は今でも演劇の練習法を英語の学習に応用しています。その学習効果は、話す内容をしっかりと相手に届けること。これは第2言語習得の要とも言えるポイントです。

演劇の練習法を取り入れた英語スピーキング練習法とはいっても、普段から演劇をやっていない人でも 取り組み やすい方法です。

基本的にはどれも簡単で、記事を読みながらすぐ実践できるようにしてあります。ブツブツ言いながら、そして体を動かしながらやってみてください。電車では変な人だとは思われないようにご注意を!

英語を英語らしく言えるようになる3つのエクササイズ

俳優訓練でまず徹底して教えられるのが、リズムとメロディーとアクセント。これが身に付けば、妙な言い方ですが、口に出す英語が途端に英語らしく聞こえてきます。

今回は、このリズムとメロディーとアクセントをトレーニングできる、 すぐに 実践可能な練習法を3つお伝えします。口の準備はいいですか?

リズムのエクササイズ

英語の音は全て長い音か短い音だけで構成されていると捉えることができます。昔も現代もなんら変わりません。

例えば、シェイクスピアのハムレットの名せりふを見てみましょう。色が付いている部分が「長い」音、それ以外が「短い」音になります。

To be , or not to be ; that is the ques tion

生きるべきか、死ぬべきか、それが問題

このように全て「短・長」の連続で構成されていて、そのまとまりが5つあります。これは「iambic pentameter(弱強五歩格/短長五歩格)」というリズムです。シェイクスピアのせりふは大体このリズムで構成されています。

では早速、下の詩を使って練習してみましょう。今度はリズムが「短・短・長」になっていますよ。

As a wave in the sea

Like a leaf on the tree

(1) まずは普通に声に出して読んでみましょう。

(2) 次に「短・短・長」のリズムに合わせて手をたたきます。ここでは詩は読まずに手で拍子を取るだけです。パンパンパーン、パンパンパーン。慣れるまで繰り返し行いましょう。足だけでもいいですよ。

(3) リズムに慣れたら、今度は言葉をそのリズムに乗せて言ってみます。英文の意味は特に考えなくて結構ですので、言葉のリズムを感じる練習をしてください。

(4) 最後はwave(波)の辺りで穏やかに読んだり、leaf(葉)の辺りで明るく読んだりしてみましょう。詩の言葉のリズムや雰囲気を感じ取れましたか?

この「短・短・長」のリズムは「anapest(弱弱強格)」といいます。かなりシンプルなのですが、その分リズムに集中できると思います。

私がこの練習を子どもと行うときは、まずリズムだけ伝えてそのリズムを手と足で取ることから始めます。そうすると、みんな生き生きとやってくれます。口だけではすぐ飽きてしまいますが、手や足も使うと、繰り返し体で英語を感じられて楽しくできるのです。

また、古典の詩やマザーグースは分かりやすいリズムが多いので、練習のテキストに向いています。自分が好きなもの、使いやすいものでいいですが、この記事の最後でおすすめのウェブサイトと本を紹介しています。

メロディーのエクササイズ

英語のネイティブスピーカーは英語を流れるように話します。それに対して日本の英語学習者は1単語ずつぶつぶつ切りながら英語を話す 傾向 があります。これは日本語がどの音も、母音のみか、母音と子音がほぼ常にセットになっていることが 原因 です。

しかし、この 傾向 は比較的簡単な練習法で 改善 することができます。

では、練習してみましょう。下の文章は童話『赤ずきんちゃん』の冒頭です。

Once upon a time, there was a little girl who lived in a village near the forest. Whenever she went out, the little girl wore a red riding cloak , so everyone in the village called her Little Red Riding Hood.
(1) まずは普通に音読してみてください。

(2) 今度は文章を指で指しながら声に出して読んでいきます。自分の読んでいる箇所を指すのではなく、指を先行させて動かし、声が後からついていくように読んでいきます。初めは抑揚を付けて読もうとか考えなくて結構です。棒読みでいいので、流れるように読むことに集中しましょう。そうしていくと、指の流れに意識が向くので、ぶつぶつ切ってしまう余地がなくなります。繰り返し行って、この流れで読む感覚を身に付けましょう。

(3) 最後は自分なりに抑揚や緩急を付けて、子どもに読み聞かせるように読んでみましょう。イメージを持ってやってみることが大切です。

いかがでしたか?

私は個別レッスンなどで生徒に文章をなぞるこの方法を教えていますが、たいていの生徒は途端に流れるように英語を読めるようになります。さらにそれに抑揚や緩急を付けると、より英語らしく聞こえてきますよ。

読み上げる素材は、何度も読むことになるので自分の好きな文章を選ぶことをおすすめします。

言うときにどういうところで切ればいいのか、どういうところに緩急を付ければいいのかは、またの機会にお伝えしますね。

アクセントのエクササイズ

海外の英語の映画を見ていると、俳優たちの表現の大きさ、豊かさに驚かされます。「What?」を言うにしても高く大きい声で言ったり、逆に低く小さな声で言ったりしています。

実は映画だけではなく、英語圏では日常でも本当に表情豊かに自分の言いたいことを強調して話す人が多いのです。相手に自分の感情や意図を伝えるために、同じ言葉でもさまざまなアクセントの付け方をしています。ここでは、どうやって言葉にアクセントを置くのかという練習に 取り組み ます。

では、下の 指示 に従って 次の文で練習しましょう。

Hey, what do you want?
(1) まずは普通に2、3度読んでみましょう。

(2) 今度はwhatを強調して読んでみます。強調するときのコツは、その単語を拳で「たたく」イメージで行うとやりやすいです。

(3) バリエーションとして、whatを極に高いトーンで読んでみましょう。

(4) 次は低くゆっくりな声で、whatを強調します。

(5) 最後はwhatの前に間(ま)を置いてみましょう。途端に意味深長になりますよ。

どうでしたか?

どれもやってみると途端に印象が変わるのが分かったと思います。

考えてみれば、話すときには、強調したいなら「トーンが高く」または逆に「トーンが低く」なったりしますよね。「間(ま)」を置いたり、「ゆっくり」言ったりすることでも、言葉を強調できます。

このことに注意しながら映画を見ると、俳優がどうやって言葉にアクセントを置いているのかが分かります。それを参考にこの練習を行うといいでしょう。高校生や大学生にこの練習をやってもらうと、自分が映画の登場人物になった感じがするのか、大いに盛り上がります。皆さんも負けずに思いっ切りどうぞ!

回の練習法はここまでです。

紹介した方法はどれも容易にできるものばかりで、ほとんど遊びのように感じられるかもしれません。しかし、時として、何を話すかよりどのように話すかが重要なことがあります。

日本では私たちはこういった「人にどのように自分の考えや気持ちを伝えるか」という方法をほとんど教えられてきませんでした。演劇はある意味、実際のコミュニケーションの模倣です。だからこそ、英語で話せるようになりたい学習者は、自由に楽しく英語でコミュニケーションできるようになる方法を演劇から学べるのです。

来月公開予定の次回の記事では、2人で行う「英語の表現力アップ」の練習法をお伝えします。

今回の練習法に使えるウェブサイトと本

リズムの練習には詩や遊び歌、メロディーの練習には童話など、そしてアクセントのエクササイズには英会話本や映画台本が使えます。自分が繰り返し口に出したくなる、好きなものを選びましょう。

については、何を選んだらいいか分からない方には、下に挙げているものをおすすめします。

詩と韻文のウェブサイト

6~13歳向けの詩や韻文が学年別に掲載されているので、自分の英語レベルに応じて活用できます。

Poems and verses for Waldorf teachers: home page

『アメリカ名詩選』と『イギリス名詩選』の本

知っておきたい詩人たちの詩が原文と対訳で掲載されているので、便利で読みやすいです。

アメリカ名詩選 (岩波文庫)

文:秋江智文

高校から続けた演劇を本格的に学ぶべく、演劇の本場イギリスに留学。演劇が教育、医療、ビジネスなどの現場で研修に使われていることに感銘を受ける。帰国後は俳優に演技を教える傍ら、演劇を用いての英語教育やビジネスパーソン向けのスピーチ講座などを行っている。

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