英語で「Mochi」と呼ばれる、アメリカで大人気のアレって何?

世界80カ国以上の現地在住日本人ライターやカメラマンの集団「海外書き人クラブ」がリレー形式で担当する連載「世界のニホンゴ調査団」が帰ってきました!第15回は、アメリカ在住の前田えりかがレポートします。アメリカで耳にする「Mochi」の正体は?

市場を席巻する Mochi の正体は?

Mochi。最近のアメリカで、急速に市民権を獲得しつつある日本語です。米国で圧倒的存在感を誇るニホンゴといえば「Sushi」「Matcha」「Ramen」「Tofu」ですが、Mochi はこれらのニホンゴ四天王の後継者となるポテンシャルを感じるほどの浸透ぶりです。

知人に Mochi を知っているかどうか聞くと、こんな答えが返ってきました。

Of course! Mochi is so good. It’s one of my kitchen staples.

もちろん知ってる! Mochiはすごくおいしい。台所の常備品のひとつだよ。

ただし、ここでいう Mochi は、日本の「お餅」のことではありません。Mochi とは、モチ(正確には、もち米粉などで作った薄い皮)にアイスをくるんだ一口大のスイーツのこと。モチ・アイス(Mochi Ice)とも言われますが、たいていは短く Mochi と呼ばれています。

巷で人気の Mochi。フレーバーは手前からストロベリー、パッションフルーツ、ピスタチオ。

何かに似ていますね? そう、冬を連想させるあの日本の大人気アイス菓子にそっくりです。ただし、アメリカらしく色とりどり。フレーバーも、バニラや抹茶など日本人にもなじみ深いものから、チョコレート、マンゴー、ストロベリー、塩キャラメル、ピスタチオ、コーヒーなど、多岐に渡ります。

Mochi は2017年頃にスーパーマーケットを中心に大ヒット。およそ3年たった今もシェアを伸ばし続け、すっかりおなじみの商品になりました。現在、北米の18,000店舗以上のスーパーで売られているのだとか。

多くのスーパーに設置されている Mochi Bar。好きなフレーバーを選んで買える。ひとつ2ドル(約215円)と、少々お値段高め。

Mochiとは何ぞや、という説明のステッカーが貼られていることも。

Mochi の生みの親は日系アメリカ人

Mochi が全米でブームになったのはここ数年のことですが、実は、しばらく前から知る人ぞ知る人気商品でした。

Mochiのデビューは1993年。ロサンゼルスの日本人街、リトル・トーキョーに店を構え1910年創業の和菓子店「ミカワヤ」が発売元です。創業者の子孫で日系四世のアメリカ人女性フランシス・ハシモト氏が、夫のアイデアを元におよそ10年の研究開発を経てMochi を発売したのだとか。

発売当初のフレーバーはアズキ、抹茶、コーヒーなど7種類。1981年発売の「雪見だいふく」がこの発明のヒントになったのかどうかは不明ですが、Mochi は発売直後から大人気に。日系人の多いハワイにも販路を広げ、あっという間に定着したようです。

誕生から20年ほどアジア系のアメリカ人を中心に愛されてきた Mochi ですが、2015年にはミカワヤが買収され、2017年には「My/Mo」という Mochi の新ブランドが誕生。ダブルチョコレート、マンゴーなど一般のアメリカ人にもなじみの深い各種フレーバーを発売したこと、Mochi Bar が大手スーパーチェーンに設置されて人気を博したことで、幅広い層の米国人に受け入れられる爆発的ヒットになりました。

Mochi 人気を支えているのは・・・

さて、Mochi がこれほどの人気になった理由について、My/Mo の CEO ラッセル・バーネット氏のコメントを見てみましょう。

Because of mochi ice cream's color, shape, and texture, it's incredibly grammable. Instagram has been phenomenal for us.

色や形やテクスチャーのおかげで、モチ・アイスクリームはものすごくインスタ映えします。インスタグラムはわれわれにとってすばらしい効果がありました。
( How Mochi Ice Cream Went From Obscure Treat to More Than $100 Million in Sales )

確かに、カラフルでコロンと小さい Mochi はとてもキュート。どうやら、日本におけるマカロンのような「おしゃれスイーツ」のポジションを獲得しているようで、若い人たちに人気なのもうなずけます。

Mochi Bar に並ぶカラフルな Mochi。手土産にしたら喜ばれそう。ひとつたったの110カロリーほど、というコンパクトさも受けているようす。売られている食品がいちいち巨大なアメリカでも、「小さいもの」に対するニーズはやっぱりあるんだなあと思わされます。

そして今、新たなMochiスイーツブームが……

「Mochi といえばアイス」という認識が浸透しつつある現状ですが、サンフランシスコ周辺では新たな Mochi ムーブメントが起きています。

モチ・マフィンにモチ・ドーナツ、モチ・パンケーキ……。もち米粉をつかったいろいろなスイーツが登場して、もちもちの新食感でアメリカ人を魅了しつつあるのです。仕掛け人は、日本を含むアジア各地にルーツを持つ移民や、その子孫の人々。世界各地から持ち込まれた食文化が独自の進化を遂げていく、アメリカらしいダイナミズムを感じます。

トレンドになっている「サードカルチャー・ベーカリー」のモチ・マフィン。

人気スーパーチェーン「トレーダージョーズ」には、Mochiの名を冠したおかきも。「クリスピー」「クランチ」って、かわい過ぎでは・・・。
アメリカでの Mochi ブームはまだまだ広がっていきそうです。もしアメリカに来られたら、意外なフレーバーの Mochi にぜひ挑戦してみてください。

海外書き人クラブ
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文・写真:海外書き人クラブ・前田えりか

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