ハリウッドを代表する大女優のひとり、メリル・ストリープの英語をシャドーイング!

はじめに                                       

映画スターが話す英語をリピートすることで、楽しく英語を学ぼうという本連載。ここまで3人の男優を取り上げてきました。今回は、ハリウッドを代表する大女優のひとり、メリル・ストリープの英語をモノマネ対象にしたいと思います。

出演作の多い女優ですが、音楽関係の映画が多いのも特徴かもしれません。『ミュージック・オブ・ハート』ではバイオリン奏者を、『幸せをつかむ歌』ではロック歌手を、『マダム・フローレンス!夢見るふたり』ではソプラノ歌手を、『今宵、フィッツジェラルド劇場で』ではカントリー歌手を、それぞれ演じ分けました。さらに『マンマ・ミーア!』では、踊って歌ってと、ミュージカルの才能も披露しています。

回はメリル・ストリープの出演作から、シャドーイングをやってみましょう。

まずは短いセリフから            

まずは短い英文を、3例取り上げましょう。1つ目は、メリル・ストリープが厳格な聖職者を演じている次のシーンです。

His resignation was his confession. He was what I thought he was. And he’s gone.

辞任は彼の告解よ。彼は私が思った通りの男だった。そして去ったのよ。

(『ダウト ~あるカトリック学校で~』 より)

ここでは、resignationとconfessionの連続から、語末の /-??n/ の発音を意識しましょう。2文目にあるwhatは「何」という疑問詞ではなく、関係詞のwhatです。また、この発言の少し後には、There is a price.というセリフがありますが、ここでのpriceは「代償」という意味です。

2つ目は、敏腕編集長が部下を褒めるシーンです。ゆっくりとされ、シャドーイングしやすい英文です。

I see a great deal of myself in you. You can see beyond what people want, and what they need... and you can choose for yourself.

あなたは私に似ているわ。人々が求め、必要としているものを超え、自分のために決断できる。

(『プラダを着た悪魔』より)

ここでのa great deal of ~は、「たくさんの~」を意味します。what people wantやwhat they needといった類似する表現の繰り返しや、myselfやyourselfなど再帰代名詞に注意して、リピートしましょう。

3つ目は、ジャーナリストと政治家との会話です。

Janine:Have you ever bled in a fight?

ジャニーン:実戦に出たことは?

Senator:Intelligence. Six years.

上院議員:情報部に6年間いた。

Janine:But not the infantry, right?

ジェニーン:でも歩兵は経験してない、よね?

(『大いなる陰謀』より)

最初の文では、inとaがつながり「イナ」の発音になる点に注意です。最後の疑問文では、文末に付けるだけで「~ですよね?」という問いができる、便利なright?が確認できます。なお、議員が答えたintelligenceには「知能」という意味があり、いま話題の人工知能AI(artificial intelligence)のIは、この単語の頭文字からきています。

発音の強弱を意識しながらリピート                            

英語では、全ての単語が同等に、はっきりと発音されるわけではありません。たとえばbe動詞や代名詞は通常、文中では弱く発音されます。次のシーンで、be動詞のamや代名詞のhimの発音を確認しましょう。

When I’m with him, I feel... yes, I am living. And when I’m not with him... yes, everything does seem sort of s... silly.

彼と一緒にいると「生きている」と感じる。一緒じゃないと...えぇ、全てくだらないと感じる。

(『めぐりあう時間たち』より)

通常弱く発音されるbe動詞は、直前の単語に付いて短縮形を作ることも多く、上のセリフでも2か所でI’mの形になっています。ただし、I am livingでは「私は “まさに” 生きている」という強調がなされるため、例外的にamが強く発音されています。同じく、代名詞も基本的に弱形で発音されるので、上のセリフのhimでは、語頭のhの音が消えて「イム」のようになっています。このような、英語の発音上の「強弱」も意識しながら、リピートしましょう。

会話スピードのアップ・ダウン、どこまでついていけるか                 

次は少し高度なセリフです。下のセリフでは、1つ目のYou knowから2つ目のYou knowまでの間が、超高速スピードで話されます。逆に、その前後はゆっくりとしたスピードです。教科書的な常にワンパターンの会話スピードではなく、このようなスピードの「上がり下がり」を体験できるのも、映画英語の醍醐味です。どこまでついて行けるか、挑戦です!

Okay, here’s the thing. I love being on my own. I really do. You know, every morning, I get up and I thank God, that I don’t have some middle-aged, menopausal man telling me how to run my life. You know, I’m free and I’m single. And it’s...it’s great.

はっきり言うわ。私は独りが好きなの。本心よ。毎朝、神に感謝してるの、更年期障害の中年男性に生き方を指図されないことを。自由でシングルな人生、最高よ。

(『マンマ・ミーア!』より)

母が息子への愛を語る感動シーン                             

最後は、息子を引き取りたい母親が、息子への気持ちを語るシーンです。全体を通してゆっくりと話され、難しい英単語もないので、気持ちを込めてリピートしましょう。母親の主張はしばらくの間続くので、分割しながら練習するのもいいでしょう。

①Because he’s my child...and because I love him. I know I left my son. I know that that’s a terrible thing to do. Believe me, I have to live with that every day of my life.

我が子だから。彼を愛しているからです。彼を一度は捨てました、ひどいことをしました。ずっと後悔するでしょう。

②But in order to leave him... I had to believe it was the only thing I could do... and that it was the best thing for him. I was incapable of functioning in that home.

でも置き去りにしたのは、そうするしかなく、最善策だと思ったんです。家庭で私はマイナスの存在でした。

③And I didn’t know...what the alternative was going to be...so I thought it was not best that I take him with me.

どうしていいか分からず、息子を連れていくのはベストではないと思いました。

④However, I have since gotten some help...and I have worked very, very hard to become a whole human being.

でも家を出てから、1人の人間になるべく努力を続けました。

⑤And, I don’t think I should be punished for that. I don’t think my little boy should be punished.

悪いことをしたとは思いません。息子にも罪はありません。

⑥Billy’s only 7 years old. He needs me. I’m not saying he doesn’t need his father... but I really believe he needs me more.

ビリーはまだ7歳で、私が必要です。父親も必要ですが、それ以上に母親が必要です。

(『クレイマー、クレイマー』より)

まとめ                                        

今回は、本連載で初めて女優の英語を取り上げました。これまでのハリウッド男優たちの英語とはまた異なる視点で、英語学習を楽しんでいただけましたでしょうか。次回はいよいよ最終回です。このハリウッドスターの英語を使った “モノマネ大会” に、もうしばらくお付き合いください。
飯田泰弘
飯田泰弘

岐阜大学教育学部准教授。趣味である映画鑑賞と、中学校から大学までの教員経 験を活かし、映像メディアを活用した英語学習や英語教育を考え、発信している。 とりわけ、一般の英語学習書には出てこない実例採取が大好き。博士(言語文化学)。研究対象は、言語学と英語教育。

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