はじめに
今回、3人目の映画スターとして取り上げるのは、トム・ハンクスです。日本での知名度も高く、アカデミー賞の主演男優賞を2年連続受賞するなど、輝かしい実績を持つ実力派俳優です。
アニメ映画での活躍も有名で、『トイ・ストーリー』シリーズのウッディ役で知る人も多いでしょう。また『ポーラー・エクスプレス』では、俳優の表情や動きをアニメに反映させる技法(パフォーマンス・キャプチャー)での“演技”を通して、5つの役をこなすという仰天ワザも披露しています。
今回はトム・ハンクスの代表作を使って、映画英語シャドーイングをしていきましょう。
子ども向け番組の司会者が話す、ソフトな英語
まずは、聞き取りやすい英語からスタートです。次のシーンでは、実存した子供向け番組の司会者(フレッド・ロジャース)を演じており、ゆっくりとソフトな口調で英語が話されます。セリフの直後にはコミカルな歌も流れるので、楽しみながらリピートするのもいいでしょう。
I hope you know that you made today a very special day, by just your being you. There’s no one in the whole world like you, and I like you just the way you are.
今日が特別な一日だったのは、君が君らしくいてくれたから。世界に君はたった一人、そのままの君が大好きだよ。
(『幸せへのまわり道』より)
似た表現の繰り返しが、リズムを生む
次は、宇宙飛行士の父親が息子に対して、これから挑むミッションを説明するシーンです。小さな子ども相手なので、文はこまめに区切られ、スピードも遅めです。また、おもちゃの宇宙船を使って話をしているので、視覚的にも内容把握がしやすくなっています。
さらに注目したいのは、セリフ内のマークを付けた箇所で、似た英語表現が繰り返されている点です。この繰り返しにより、発音上のリズムが生まれ、聞き手が心地よさを感じる効果が作られています。セリフを忠実にモノマネして、この特徴的な「音の流れ」を体験しましょう。
①See, this is the Saturn 4B booster, and it shoots us away from the Earth... as fast as a bullet from a gun... until the moon’s gravity actually grabs us and pulls us... into a circle around the moon, which is called an orbit. All right?
いいか、これがサターンの4Bブースターで、パパたちを地球の外へ打ち上げる、銃弾よりも速く。月に近づくと>重力が我々をつかまえて、船は月の周囲に輪を描く。これが軌道だ。わかるな?
②And I take the controls, steer it around, and I fly it down...adjusting it here, the attitude there... pitch, roll, for nice, soft landing on the moon. Better than Neil Armstrong. Way better than Pete Conrad.
そしてパパが操縦して、降りていくんだ。あちこち調整しながら、ゆっくり、優しく月に着陸する。ニール・アームストロングより上手に、ピート・コンラッドより上手くだ。
(『アポロ13』より)
いろんな否定文
次の男女が恋愛について話す会話からは、英語のさまざまなタイプの否定文が学べます。
Joe : So he didn’t answer the question.
ジョー:じゃ、彼は質問に答えなかったわけだ。
Kathleen : Yes, he did.
キャサリン:答えたわ。
Joe : He did not.
ジョー:答えてない。
Kathleen : He did too. He did. He nailed me. He knew what I was after which is, by the way, exactly like him.
キャサリン:答えた。答えたわ。私の意図を見透かしてた。彼は考えを読む人よ。
Joe : He did not answer the question, did he?
ジョー:彼は質問に答えてない、だろ?
Kathleen : ...No.
キャサリン:・・・そうね。
(『ユー・ガット・メール』より)
ジョーの発言に注目です。1つ目ではdidn’tという短縮形が使われ、2つ目ではnot以降が省略された否定文が使われています。また、3つ目では短縮形ではないdid notが使われ、notに強勢が置かれることで、didn’tよりも強い否定が表されています。これによりジョーは、キャサリンを論破しようとしていることが分かります。
また、文末の「~, did he?」は付加疑問と呼ばれ、直前の内容に対して「~だよね?」という、問いや確認を行います。Yes-No疑問文でありながら、文末のイントネーションが下降調になることも可能で、その場合は、発言内容に自信を持つ話者が相手に「同意」を求める効果が出ます。
上のシーンでは、ジョーはキャサリンに対して「自分の意見のほうが正しい」という念押しをしており、その証拠に、キャサリンが最後にNoと認めるとジョーは「ほらね」と言わんばかりの満足そうな顔をしています。
このような、微妙なニュアンスの違いにも意識して、リピートしてみましょう。
英単語や英文法の力も同時につける
最後は、リピートすることで、英語の語彙強化や文法ポイントを学べるシーンです。1つ目は、法廷での会話です。英語はゆっくりと、はっきりと話されるので、トム・ハンクス演じるアンドリューの英語をリピートしてみましょう。
Joe : What do you love about the law, Andrew?
ジョー:法のどこを愛していますか、アンドリュー?
Andrew : I... Many things. What I love the most about the law?
アンドリュー:そりゃ・・・色々と。法の一番好きな所?
Joe : Yes.
ジョー:そうです。
Andrew : Is that every now and again, not often, but occasionally, you get to be a part of justice being done.
アンドリュー:それは時として、度々ではないけど、でもたまに、自分自身が正義の一部になれるんです。
(『フィラデルフィア』より)
最後のアンドリューの発言はIs ~で始まりますが、疑問文ではない点に注意です。この文では、直前のWhat I love the most about the law「僕の法の一番好きな所」が主語になっているので、このように動詞からスタートしています。
また、セリフ内でマークした箇所では「時どき、時折」などと訳される、頻度を表す副詞表現が3つも並んでいます。4単語使う形や、語尾が-lyで終わる形など、いろんなタイプを一気におさえられるチャンスです。
2つ目は、映画ならではの、緊迫したアクション・シーンです。
Professor Langdon : You afraid of heights?
ラングドン教授:高い所が怖い?
Sienna : A little.
シエナ:少しね。
Professor Langdon : I’m uncomfortable in tight spaces. So, don’t look down. Or do. I can never remember which.
ラングドン教授:僕は狭い所が苦手だ。じゃ、下を見るなよ。いや見るべきか。どっちか覚えとらん。
(『インフェルノ』より)
英語では「高所恐怖症」と「閉所恐怖症」は、それぞれacrophobiaやclaustrophobiaと言います。しかし、そんな難しい単語が頭に浮かばなくても、be afraid of ~「~が怖い」やbe uncomfortable in ~「~は不快だ」を使えば同じ意味が伝えられることを、このシーンは教えてくれます。
また最後の文は、whichで終わっています。このように、疑問詞以下を消す現象は英語学では「間接疑問文削除(sluicing)」と呼ばれ、直前に述べられた内容と重複する情報を省略するときなどに見られます。英文としては未完成に見えるこのような文も、口語表現ではよく登場するので、リピートすることで習得しておきましょう。
まとめ
今回は、トム・ハンクスをテーマに取り上げました。彼が出演する作品のジャンルは幅広く、また、不朽の名作として知られる作品も数多くあります。自分が好きな映画を決めて、いろんな英語をリピートしましょう。
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