シンガポールでの「お酒」の注意点(罰金、酒税、マナー)

2016年12月19日に発売した書籍『シンガポールとビジネスをするための鉄則55』(アルク刊)から、これからシンガポールとのビジネスを始めたい人、シンガポール出張・駐在を控えている人たちに向けて、現地で役立つ情報をQ&A形式でご紹介します。第4回は「シンガポールに行く前に知っておきたいこと」です。

近未来な植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」のシンボル「スーパーツリー・グローブ」はシンガポールの新名所

Q 酒類の販売が禁止される時間があるの?

A 夜10時半から朝7時は、公共の場の飲酒は禁止。販売もされません。

シンガポールでは日本と違い、いつでもお酒が飲めるわけではありません。夜10時半から朝7時まで、公共の場での飲酒は禁止されています。またこの時間帯は、酒類の購入もできません。スーパーやコンビニエンスストアなどの冷蔵庫には鍵がかけられます。違反した場合は、初犯では最高1000シンガポール$(約7万5000円)の罰金が科され、再犯の場合、最高2000シンガポール$(約15万円)の罰金、又は最高3カ月の禁錮刑が科されます。

ここでいう「公共の場」とは、駅、道路、歩道、公園、広場など人の出入りが自由な場所のことで、自宅やホテルの部屋、コンドミニアムの敷地内などは含まれていません。ですから深夜であっても、自宅やホテルの部屋では、お酒を飲むことができます。また、政府から酒類提供の許可を得たバー、レストラン、ホーカー(屋台村)、カフェ、イベント会場などでは、認められた時刻まではお酒を飲むことができます。 ただし 、提供を受けた場所で飲むことが条件となっているので、その場所から別の場所に持ち出したり、自宅やホテルに持ち帰ることは禁止されています。

午後10時半より前に、コンビニエンスストアなどでお酒を買い、午後10時半以降に公園や歩道のベンチなどの「公共の場」で飲むのはもちろん違法です。

シンガポールはお酒が高い

シンガポールは酒税が高いうえ、多くが輸入品であるため輸送コストなども加わって、全体的にお酒の価格は高めです。

シンガポールの酒税は、アルコール度数に応じて高くなります。例えば、アルコール5%のビール1リットル当たりの酒税は、日本の220円に対してシンガポールは約300円と、それほど大きな差がありませんが、アルコール40%のウイスキーの場合、日本が400円に対してシンガポールは約2810円と7倍以上かかります。

午後10時半から午前7時まで、スーパーやコンビニでのアルコールの販売は禁止されている

Q 現地でやってはいけないNG行動は?

A シンガポールは、覚せい剤に関わる罰則が厳しく、犯罪に巻き込まれないよう注意が必要です。ゴミのポイ捨てや、電車内での飲食なども罰則の対象です。

シンガポールで最も気を付けるべきは、覚せい剤に関わる犯罪です。シンガポールでは麻薬の使用はもちろん、持ち込みが発覚しただけでも無期懲役、もしくは死刑に処される場合があります。特にここ最近、アジア全体で麻薬の密輸容疑で逮捕される日本人が相次いでいます。それもほとんどが、知人や空港で知り合った人に、中身を知らされないまま荷物を託されるというケースで、自分で麻薬を密輸しているという自覚がありません。麻薬組織の手口も巧妙になってきているので、注意が必要です。

路上マナー違反も罰金対象

またシンガポールは、公共の場でゴミのポイ捨てをすると、最大で2000シンガポール$(約15万円)の罰金が科せられます。旅行者でも罰金の対象になります。ほかにも、公共の場でつばや痰を吐くこと、MRT(電車)やバス、タクシーの車内での飲食、ガムの持ち込みも罰金の対象となります。未申告でタバコを持ち込むと、最高で5000シンガポール$(約37万5000円)の罰金が科されるので注意してください。また、指定の喫煙所以外での喫煙も罰金の対象です。オフィルビルやショッピングモール、ナイトクラブやディスコといった場所でも室内は基本的に禁煙で、屋外に設置されている喫煙所でのみ喫煙が可能となっています。

MRT(電)の車内にあるサイン。左から「飲食禁止、罰金500シンガポール$(約3万7500円)」「禁煙、罰金1000シンガポール$(約7万5000円)」「火気厳禁、罰金5000シンガポール$(約37万5000円)」「ドリアン禁止」

ほかにも、罰金の対象になっている行為はたくさんあります。左右50メートル以内に横断歩道があるのに無視して渡ると50シンガポール$(約3750円)の罰金、野鳥に勝手にエサをやったり、公衆トイレで水を流さなかった場合も罰金の対象です。植木鉢の受け皿に水を溜めたままにしていたり、水たまりをそのままにしておくのも禁止されていて、抜き打ちでチェックされたりします。これは、マラリアやデング熱などを媒介する蚊の繁殖を防ぐためです。実際に罰金をとられることは 少ない ですが、禁止事項であることは意識し、気を付けるべきでしょう。

基準 は人それぞれ">「不快」と感じる 基準 は人それぞれ

シンガポールに住む人は、さまざまな宗教や文化、価値観を持っていて、それぞ不快に感じる 基準 やポイントは異なります。極端に肌の露出が多い服装や、英語などで差別用語がプリントされている服などは、人に不快感を与えたり、トラブルの元になったりするので気を付けましょう。

日本での慣習やマナーは必ずしも世界標準ではないことを念頭において行動してください。不安がある場合は周りの人の行動を参考にするか、現地の知り合いに聞くのが間違いないでしょう。

Q シンガポールのおすすめ視察スポット、効率のよい回り方は?

A 石油化学工業、観光、IT、先端技術など、見どころはたくさんあります。効率よく回るには、視察ツアーがお勧めです。

シンガポールは、さまざまなビジネスチャンスのある成長性の高い国です。化学工業、観光業、IT産業、先端技術など、さまざまな分野で戦略的に先進的な 取り組み を行っています。以下に、代表的な視察スポットを挙げました。

世界有数の石油化学産業集積地「ジュロン島」

シンガポールは多くの石油化学製品を輸出しており、その一大 拠点 となっているのが、南西にある人工島「ジュロン島」です。もともとは、点在していた7つの島を埋め立て、1つの島を建設して石油化学産業の集積地として開発されました。関連性の高い石油化学工業が集積し、パイプラインで相互接続されています。BASF、BP、セラニーズ、エクソンモービル、デュポン、三井化学、シェブロン、ロイヤル・ダッチ・シェル、住友化学工業など、世界的な大手石油化学メーカーが進出しています。

水のリサイクル工場「NEWater(ニューウォーター)」

シンガポールには大きな河川がなく、貯水能力が低いため、以前は隣国のマレーシアからパイプラインで輸入された水に頼っていました。しかし2061年にはマレーシアからの輸入 契約 が切れてしまうため、1970年代から国を挙げて水の完全自給を目指して水のリサイクル技術を開発してきました。そうしてできたのが「NEWater」です。現在は全使用量の3割を担っています。主に工業用水に利用されていて、一部は家庭の水道水にも使われています。多くの日本の技術も採用されています。

カジノ一体型統合リゾート「マリーナベイ サンズ」(Marina Bay Sands)、「リゾート・ワールド・セントーサ」(Resorts World Sentosa)

観光分野の視察先としては、まず「マリーナベイ サンズ」が挙げられます。有名な世界最大の屋上プールが特徴的で、カジノが設置されている一体型のリゾート施設です。

「リゾート・ワールド・セントーサ」は、セントーサ島初の総合リゾート施設で、カジノ、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」など、たくさんのアトラクション施設が集まった巨大リゾート施設です。

特徴的な形の「マリーナベイ サンズ」。屋上にある「インフィニティプール」が人気

研究開発都市「One-North」

中心市街地から西8キロにある文教地区(ブオナビスタ地区)一帯で、シンガポール政府が2001年から開発を進めています。約200ヘクタールの中に、バイオサイエンス、ICT、メディア、自然科学、エンジニアリングなどの研究施設やビジネスパークが広がっています。生命科学分野におけるアジアの研究開発 拠点 を目指す「バイオポリス」には、アボット、グラクソ・スミスクライン、イーライリリー、ノバルティス、シェリング・プラウ、武田薬品工業などの世界的大手製薬企業が研究開発 拠点 を置いています。情報通信技術、メディア産業等の研究 拠点 「フュージョノ・ポリス」には、シンガポール科学技術研究庁傘下の公立研究所、デンマークの風力発電機器メーカーヴェスタス、セイコーインスツルなどが入居しています。デジタル・コンテンツ制作の新集積地「メディアポリス」には、シンガポールのメディア制作会社などが 拠点 を置いています。

効率よく回るには、視察ツアーがお勧め

個々の企業に依頼し、調整するのは時間と手間がかかりますし、短時間で効率よくポイントを回るためにも、視察ツアーを利用するのがよいでしょう。こうしたツアーは、HIS、JTB、日本旅行などの大手旅行会社が行っています。現地に詳しいアジア進出の専門家の話を聞くこともでき、ビジネスパートナーと出会える場が設けられているものもあります。不動産企業、人材系企業を視察したり、現地の日系IT企業を訪問したりするツアーもあります。

 

文: 関 泰二ビズラボシンガポール所長、日本アシストシンガポール代表取締役。1971年生まれ、東京都出身。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学修士課程修了。シンガポール政府国際企業庁、在京シンガポール共和国大使館商務部を経て、2011年日本アシストシンガポール設立。会員制情報サービス「ビズラボシンガポール」、レンタルオフィス「クロスコープシンガポール」などを運営、日本企業のシンガポール進出や新規事業立ち上げを支援する。「シンガポール和僑会」会長。ホームページ: 日本アシストシンガポール

シンガポールとビジネスをするための則55

アジア進出への第一歩の場として注目を浴びるシンガポール。現在、2500社以上の日本企業がシンガポールに 拠点 を置き、さらに増加 傾向 と言われています。本書は、出張や駐在など、シンガポールに仕事で関わる人が知っておくべき「鉄則」をコンパクトにまとめます。

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