注目を集めた海外ニュースを紹介する、英語音声付きの連載。2000年にアメリカの首都・ワシントンD.C.に来た2頭のジャイアントパンダとその子どもが、中国に返還されることになりました。
アメリカからパンダがいなくなる!?
アメリカの首都ワシントンのスミソニアン国立動物園にいる3頭のジャイアントパンダが、12月に中国に返還されることが決まりました。アメリカにいるその他のパンダも、2024年までに全て返還される予定で、別れを惜しむ声が上がっています。半世紀以上続いた、アメリカと中国間の「パンダ外交」が終わることや、アメリカの動物園でパンダが飼育されてきたことには、どのような意味があるのでしょうか。
US-China Panda Diplomacy Ending
Anchor: The giant pandas that have been living at the Smithsonian’s National Zoo in Washington for 23 years will return to China by the end of this year.
Reporter: Hsing-Hsing and Ling-Ling arrived in the United States in 1972. The rare gift from China was a sign of not only goodwill but also soft power after then-U.S. President Richard Nixon and first lady Pat Nixon had paid a historic state visit to the East Asian country. In 1984, when the giant panda was declared an endangered species, Beijing began lending bears instead of gifting them. Ten-year agreements with a price tag of up to $10 million were put in place.
(中略)
Under one of those research and breeding agreements, which would later be extended several times, panda pair Mei Xiang and Tian Tian began living at the Smithsonian’s National Zoo in Washington in December 2000.
(中略)
The Washington-based giant pandas and their cub are now also expected to depart to China by the end of this year. There’s been some speculation that economic, political and security tensions between the U.S. and China might be at play in the non-extension of the agreements.
(中略)
The success of breeding and other conservation efforts in U.S. zoos, however, should not be overlooked, some analysts say. The zoos have helped improve the species status from “endangered” to “vulnerable.” But others say it is time for a new strategy.
ⒸVOA News, September 14, 2023
米中パンダ外交の終わり
キャスター:ワシントンのスミソニアン国立動物園で23年間暮らしてきたジャイアントパンダが年内に中国に戻ることになりました。
リポーター:シンシン(興興)とリンリン(玲玲)は 1972 年にアメリカにやってきました。中国からの珍しい贈り物は、当時のリチャード・ニクソン米大統領とパット・ニクソン大統領夫人がこの東アジアの国への歴史的な公式訪問を果たした後、親善だけでなく、ソフトパワーをも示すものとなりました。ジャイアントパンダが絶滅危惧種と宣言された1984年、中国政府はパンダを贈与するのではなく貸与し始めました。最大1000万ドルで10年間の(貸与)協定が結ばれました。
(中略)
後に数回延長されることになる、そうした研究や繁殖協定の中の一つに基づいて、メイシャン(美香)とティアンティアン(添添)のが、2000年12月にワシントンのスミソニアン国立動物園で暮らし始めました。
(中略)
ワシントンにいるジャイアントパンダとその赤ちゃんも、年内に中国へ出発する予定です。 協定が延長されない背景には、アメリカと中国の間の経済的、政治的、そして安全保障上の緊張が作用しているのではないかという憶測があります。
(中略)
しかし、アメリカの動物園における繁殖やその他の保護活動の成功を見過ごしてはならない、と言う専門家もいます。動物園が、種(しゅ)の状態を「危機」から「危急」へと改善させるのに一役買ったというのです。一方で、新たな戦略を取るときが来たと言う人もいます。
語注
語句 | 意味 |
---|---|
goodwill | 親善、友好 |
soft power | ソフトパワー ※自国の価値観や文化を背景とした、他国への影響力のこと。 |
first lady | (アメリカの)大統領夫人 ※州知事夫人も表す。 |
state | 公式行事、公式の |
endangered species | 絶滅危惧種 |
Beijing | 北京(中華人民共和国の首都) ※ここでは、Beijingは中国政府を指している。 |
bear | 熊 ※ここではジャイアントパンダを指す。panda bearとも呼ばれる。 |
put ~ in place | ~を施行する、~を導入する |
breeding | 繁殖、飼育 |
extend ~ | ~を延長する |
~-based | ~に本拠地を置く |
cub | (クマ、ライオン、キツネなどの)子 |
speculation | 憶測、推測 |
be at play | 作用する、はたらく |
extension | 延長 |
conservation | 保護 |
overlook ~ | ~を見過ごす、~を見逃す |
vulnerable | 脆弱(ぜいじゃく)な、危急な ※国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、VulnerableはEndangeredより1段階低い。 |
トップ画像:Harrison Mitchell from Unsplash
SERIES連載
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