「英語を学ぶことには、人生を変える力がある」。そう語るのは、『英語の山をのぼる』の著者・とげまるさんです。TOEIC満点、英検1級、国連英検特A級、IELTS7.5、ケンブリッジ英検C2 Proficiency――本書には、英語学習を続けてきた10年間の軌跡と、数々の英語試験に向き合う中で磨かれた学習メソッドが詰まっています。英語学習を「山」にたとえたこの本は、スコアアップの方法だけでなく、学び続けるための考え方も教えてくれる一冊です。
目次
英語学習を「登山」として読む
本書のタイトルは、『英語の山をのぼる』。
この「山」という言葉に、本書全体の姿勢がよく表れています。
とげまるさんは、英語学習について次のように語っています。
「英語学習は“競争”ではなく、“登山”に似ています」
早くのぼる人もいれば、ゆっくり進む人もいる。途中で休んでも、立ち止まっても、遠回りしてもいい。英語学習をそのように捉える視点は、点数や合否に追われがちな学習者にとって、少し肩の力を抜かせてくれます。
もちろん本書は、精神論だけの本ではありません。TOEIC L&Rテスト、英検1級、国連英検特A級、IELTS、ケンブリッジ英検C2 Proficiencyなど、著者が実際に挑戦してきた試験ごとに、学習の過程と具体的な対策が紹介されています。

目次を見ると、TOEIC800点、TOEIC990点、英検1級、国連英検特A級、IELTS、ケンブリッジ英検と、章ごとに“のぼる山”が分かれています。単なる資格取得の記録ではなく、英語力を段階的に高めていく登山記録として読めるのが、本書の大きな魅力です。
「英語を学ぶ意味」から始まる
本書は、いきなり勉強法から始まりません。
冒頭でとげまるさんは、「英語って、本当に必要なのだろうか?」という問いを立てます。AI翻訳が発展し、スマートフォン一つで世界中の人とやりとりできる時代に、なぜ自分で英語を学ぶ必要があるのか。
その問いに対して、とげまるさんはこう語っています。
「英語を学ぶことには、人生を変える力がある」
ここで語られる英語は、単なる試験科目ではありません。留学、就職、昇進といったキャリアの可能性を広げるものでもあり、世界の情報や人と直接つながるための「橋」でもあります。
英語を学ぶ理由は、人によって違います。資格を取りたい人もいれば、仕事で必要な人、海外の情報を読みたい人、誰かと話したい人もいるでしょう。本書は、そうしたさまざまな動機を否定せず、英語を学ぶことで見える世界が少しずつ広がっていくことを、著者自身の言葉で伝えています。

資格試験は「英語力の健康診断」
本書で印象的なのは、とげまるさんが資格試験を単なる点数競争として見ていないことです。
とげまるさんは、検定試験を「英語力の健康診断」と表現しています。
試験を受けることで、今の自分の英語力を客観的に知る。思うような結果が出なければ、努力の方向を見直す。うまくいったところも、弱点も、次の学習につなげる。
この考え方があるから、本書に出てくる試験の話は、単なる合格体験記にとどまりません。
たとえばTOEICでは、満点を取るまでに6年かかったと語られています。その過程で、とげまるさんは「集中力の持続」が課題だと気付き、英語ニュースや講義を連続して聞く練習を取り入れたといいます。
試験を受ける。結果を見る。課題を見つける。学習法を修正する。もう一度挑戦する。
このサイクルが、本書全体を通じて繰り返されています。
TOEIC初受験405点から始まったスコアアップの道のり
本書の実践編として読みやすいのが、TOEICの章です。
とげまるさんが大学入学直後に初めてTOEICを受けたときのスコアは405点でした。その後、800点を目指し、さらに990点満点へと進んでいきます。
第2章では、最初に使う教材を欲張らずに絞り込んだこと、単語・リスニング・文法・読解・模試演習にどう取り組んだかが、かなり具体的に紹介されています。
この章がよいのは、「すごい人の成功談」で終わっていないところです。
最初から英語が完璧だった人の話ではなく、405点から始めて、教材を選び、学習法を試し、習慣化しながら少しずつスコアを伸ばしていく過程が書かれています。だからこそ、TOEIC学習中の人にとっても、自分の学習に置き換えて読みやすい内容になっています。
「とげまる式」単語学習法が具体的
TOEICの章で特に実用的なのが、「とげまる式」単語学習法です。
本書では、単語学習のポイントとして、「感覚刺激」と「復習サイクル」が紹介されています。
単語を見るだけでなく、聞く、声に出す、書く。さらに、その日の夜、翌朝、週末に復習する。とげまるさんは、単語を見た瞬間、あるいは聞いた瞬間に、意味・使い方・発音がつながる状態を目指しています。

この方法は、決して派手ではありません。
むしろ、かなり地道です。1日に覚える語数を決め、声に出しながら書き、寝る前に見直し、翌朝また確認する。忘れていれば、もう一度戻る。
ただし本書では、語数は人それぞれの生活リズムに合わせ、「毎日続けられること」を重視して決めればよいとも補足されています。
英語学習で本当に必要なのは、こうした地道な反復なのだと感じさせられます。
本書の良さは、「頑張りましょう」で終わらず、何を、どのタイミングで、どう復習するかまで書かれていることです。
リスニング学習は「変速トレーニング」
リスニング学習法も具体的です。
本書では、「とげまる式」リスニング学習法として、4段階の「変速トレーニング」が紹介されています。
本書では、TOEIC対策として公式問題集のリスニング Part 3・4を使った方法が紹介されています。まず問題を解いて解説を確認する。その後、0.8倍速でシャドーイングし、等倍、1.2倍速、1.5倍速で聞き、最後に等倍でシャドーイングする。速度を変えながら耳に負荷をかける方法です。

このトレーニングは、リスニングを「なんとなく聞く」練習から、「聞き取れる音を増やし、処理速度を上げる」練習へ変えてくれます。
速い音声に慣れておくことで、本番の音声がゆっくり感じられるようになる。ゆっくりした音声でシャドーイングすることで、音のつながりや発音にも意識が向く。
このように、なぜその練習をするのかが説明されているので、読者も自分の学習に取り入れやすくなっています。
TOEICの先にある“世界基準の英語力”
本書の面白さは、TOEICで終わらないところにもあります。
TOEIC800点、990点の山を越えた後、本書は英検1級、国連英検特A級、IELTS、ケンブリッジ英検C2 Proficiencyへと進んでいきます。
それぞれの試験で求められる力は違います。
英検1級では、語彙問題、長文読解、ライティング、二次試験のスピーチ対策。国連英検特A級では、国際時事や外交的な思考。IELTSでは、アカデミックな4技能。ケンブリッジ英検C2 Proficiencyでは、Use of English、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングといった、高度な英語運用力が問われます。
TOEICのスコアを上げるだけでなく、英語で読み、考え、書き、話す力をどう広げていくのか。
本書を読むと、TOEICの先にもさまざまな“山”があることが見えてきます。英語学習を長く続けていきたい人にとって、その地図が手に入るのは大きな価値です。
こんな人におすすめ
『英語の山をのぼる』は、特に次のような人に向いています。
- TOEICや英検など、英語資格試験を目標にしている人
- 英語学習を続けたいが、最近少し停滞感がある人
- 高い目標に向かう人の学習過程を知りたい人
- 単語、リスニング、読解、ライティングなどの具体的な学習法を知りたい人
- TOEICの先にある英語学習の広がりを見てみたい人
一方で、「短期間でこの試験に合格するための最短ルートだけを知りたい」という人には、少し遠回りに感じる部分もあるかもしれません。
本書は、1つの試験だけを攻略するためのマニュアルではありません。英語を学び続ける中で、どのように目標を決め、壁を越え、また次の山へ向かうのか。その過程を読む本です。
英語学習を続けるための伴走者になる一冊
英語学習は、結果がすぐに見えない時期があります。
単語を覚えても忘れる。
リスニングをしても聞き取れない。
模試を解いてもスコアが伸びない。
周りの人が先に進んでいるように見える。
そんなとき、英語学習を「競争」ではなく「登山」と考えると、少し見え方が変わります。
今は急な坂道にいるのかもしれない。
少し休んでもいいのかもしれない。
別のルートを試してもいいのかもしれない。
それでも、歩き続ければ景色は変わっていく。
『英語の山をのぼる』は、英語の達人が上から教える本というより、ひとりの学習者がのぼってきた道を見せてくれる本です。
その道には、成功だけでなく、停滞や失敗、試行錯誤もあります。だからこそ、読み終えた後に「自分ももう少し続けてみよう」と思えるのではないでしょうか。
英語学習の山を、これからのぼる人にも、いま途中で立ち止まっている人にも、そっと背中を押してくれる一冊です。
書籍情報
『英語の山をのぼる ゼロから世界基準の頂を目指す、10年間の軌跡と学習メソッド』
著者:とげまる(和田 啓)
出版社:アルク
TOEIC満点、英検1級、国連英検特A級、IELTS7.5、ケンブリッジ英検C2 Proficiencyを達成した著者自身の10年間の英語学習の軌跡と、各試験に向けた具体的な学習メソッドを紹介する一冊です。
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