海外メディアが報じたニュースから、英語表現を学びましょう。「給料が減らない週休3日制」が、新たな働き方として広がりつつあります。一部企業で実験が始まったドイツ。すでに正式な制度となっているベルギー。アメリカ、カナダ、イギリス、ポルトガルで見られた変化。世界各地の動きを見ていきます。
目次
ドイツの「働き方改革」
時事英語専門のオンライン辞書サイト「RNN時事英語辞典」編集長の廣川です。
今回は、ドイツの一部企業で始まった「週休3日制」の試行について取り上げます。この試みの目的と効果はいかに。それでは、ニュースを英語で見ていきましょう。
It sounds counterintuitive: While Germany, like many countries, struggles to find enough workers, dozens of companies are starting an experiment that will see employees work a day less. In February, 45 companies and organizations in Europe‘s largest economy will introduce a 4-day workweek for half a year. Employees will continue to receive their full salary. The initiative is led by the consulting firm Intraprenör in collaboration with the non-profit organization 4 Day Week Global (4DWG).
直感に反しているように聞こえるかもしれない:ほかの国と同じように、ドイツも十分な労働者を確保するのに苦戦する中、数十の企業が、従業員に1日少なく働いてもらう実験を始めている。2月から、欧州最大の経済(=ドイツ)の45企業および団体が半年間週休3日制を導入する。従業員は引き続き給与を全額支払われる。この取り組みは、コンサルティング会社のIntraprenörが、非営利団体4 Day Week Global(4DWG)の協力を得て進められる。
記事引用元:dw.com
この実験は、ドイツの一部企業で半年間実施されます。1週間のうち、4日働いて3日休むことを日本では「週休3日制」と呼ぶことが多いですが、英語では”4-day workweek”と言います。
キーワード①
- counterintuitive:直感に反した
- 4-day workweek:週休3日制
- non-profit organization(NPO):非営利団体
【関連フレーズ】「非政府団体」はnon-governmental organization(NGO)です。
生産性低下に歯止めをかけられるか
では、週休3日制を取り入れる狙いはどこにあるのでしょうか。
Advocates argue that a 4-day workweek would increase worker productivity and, by consequence, help alleviate the country‘s skilled labor shortage. Germany has a long-held reputation for industriousness and efficiency. Yet, in recent years, productivity in Germany has fallen.
週休3日制の提唱者は、この取り組みで従業員の生産性が向上し、その結果、ドイツの熟練労働者不足を軽減するとしている。ドイツは長年にわたり、勤勉さと効率の高さに定評がある。しかし近年、ドイツの生産性は低下している。
記事引用元:dw.com
例えば会議時間を短縮するなどで生産性が高まり、働きやすさが向上するとその会社の採用活動にも有利というメリットがあるようです。週休3日制をドイツの生産性向上のきっかけにしたいという目的があります。
キーワード②
- advocate:提唱者、支持者
- skilled labor:熟練労働者
- industriousness:勤勉さ
- efficiency:効率
選べるようになった“先進国”ベルギー
ベルギーではすでに週休3日が法制化されています。
Belgium became the first country in Europe to legislate for a four-day week. In February 2022, Belgian employees won the right to perform a full workweek in four days instead of the usual five without loss of salary. The new law came into force on November 21 last year, allowing employees to decide whether to work four or five days a week. But this does not mean they will be working less – they will simply condense their working hours into fewer days.
ベルギーは週休3日制を法制化した、欧州で最初の国となった。2022年2月、ベルギーの従業員たちは、通常の5日間分の労働時間を、給料はそのままで、4日でこなす権利を得た。昨年11月21日にその法律は施行され、従業員は1週間に4日または5日のどちらで働くか、選択できるようになった。しかし、これは働く量が減ったわけではなく、単に少ない日数に圧縮されただけだ。
記事引用元:euronews
「働く量はそのままに、単に少ない日数に圧縮されただけ」というのは悩ましい状況ですが、人によってはオンオフのメリハリを利かせて、より多くのオフの日を確保する選択をする人もいるでしょう。
キーワード③
- legislate:法制化する
- condense:圧縮する
【参考】ちなみに、いちごにかける「コンデンスミルク」はcondensed milkと表記します。
週休3日制がもたらしたメリット
他にも週休3日制を取り入れる実験をした国がいくつかあります。
But previous trials in the US and in Canada have shown that there potential gains in the four-day week, as employees reported feeling better physically and less burnt out.
After these trials, none of the participating companies switched back to a five-day work week.
A similar trial here in the UK saw a 65 per cent decrease in sick days, while a study in Portugal showed that anxiety and sleeping problems were reduced by about 20 per cent.
だが、アメリカやカナダでの試行では、週休3日制の潜在的な利点が示され、従業員たちは身体的に調子がよくなり、燃え尽きることも減ったと報告している。
施行後も、参加企業の中で週休2日制に戻したところはなかった。
ここイギリスでも病欠日が65%減少し、一方、ポルトガルでの研究では、不安や睡眠障害が約20%減少したことが示された。
記事引用元:Daily Mail
従業員にとっては、より健康的な生活を送れるようになるという利点もあったのですね。
キーワード④
- sick day:病休/sick leaveとも言います。
- sleeping problems:睡眠障害
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本企業でもこの制度の導入を検討している会社があり、たびたび報道されますが、みなさんのお勤めの会社でもし週休2日と3日が選べるようになったとしたら、あなたはどちらを選びますか?
次回もお楽しみに。
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トップ画像素材:canva
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