「tipflation」って一体何?アメリカのチップ文化に異変!?【ニュース英語】

海外メディアが報じたニュースから、英語表現を学びましょう!今回は、アメリカのチップ文化に最近起きている異変や、それに対する人々の反応を詳しく見ていきます。

チップの最新事情

時事英語専門のオンライン辞書サイト「RNN時事英語辞典」編集長の廣です。

アメリカに旅行した際に頭を悩ませる「チップ」の問題。アメリカ人はチップ文化を熟知し、スマートにチップを支払っている――と思いきや、最近、アメリカ人も戸惑う現象が起きているとのこと。今回はこのニュースを見てみましょう。

Tipping is an age-old American debate. How much do you pay and when? Is it a choice or an obligation? Generally, tech has at least made it easier over the years. Smartphones made it a breeze for friends to whip out a calculator to figure out tip and split the bill. And now, checkout screens everywhere, from in-person stores to delivery apps, have added buttons designed to make it easier for you to tip.

チップは昔からアメリカ人の議論の的となっている。いくら、そしていつ支払えばよいのか。これは選択なのか、義務なのか。一般的に言って、年を追うごとにテクノロジーがチップの支払いを少なくとも簡単にしてきた。友達同士でスマートフォンの電卓をさっと取り出してチップの額を計算したり、割り勘したりすることは、いともたやすいことになった。そして今、店員のいる店からデリバリーアプリまで、あらゆる支払い画面には、チップを支払いやすくするように考えられたボタンが追加されている。

記事引用元:The Verge

近頃、アメリカでは店頭での決済端末などでお金を支払うときに、画面に「何%のチップを支払いますか?20%/22%/25%」と出て聞かれる場面が増えています。チップ相場は5年前の15%前後よりも多めに設定されています。さらに、セルフサービスのお店でチップを求められることもあり、チップについての議論を呼んでいます。

キーワード①

obligation:義務

obligationには「義務(感)、責任」の他に、「債券、債務」という意味もあります。

【obligationを使ったその他のフレーズ】

make it a breeze:簡単にする

breezeはそよ風のこと。「それをそよ風にする」、つまり「簡単にする」という意味です。

whip out:さっと取り出す

whipは名詞だと「むち」という意味で、動詞だと「(むちを打つように)素早く[さっと]動かす」という意味があります。

split the bill:割り勘にする

splitは「割る、分ける」という意味。勘定書(bill)を均等に割る(split)で「割り勘にする」。日本語の表現とも近いですね。

in-person store:店員のいる店

in-personには「直接(会う)、対面の」という意味があります。

【in-personを使ったその他のフレーズ】

インフレーションならぬ「チップフレーション」とは

求められるチップの額が上がり始めたのはいつからなのでしょうか。

Many people first started noticing so-called tipflation as the economy emerged from the pandemic. Venturing out again to bars, restaurants and shops, consumers were confronted with what felt like a new set of etiquette expectations — and duly began tipping more often, even as many griped loudly about it. But those upticks were modest and far from universal, and some of shoppers’ generosity now looks to be waning.

多くの人がいわゆる「チップフレーション」と呼ばれる現象に最初に気付き始めたのは、パンデミックから経済が回復し始めた頃だ。バーやレストラン、店に再び行くようになると、消費者は新たに期待されている作法のようなものに直面した――そして、声高に不満を言う人は多かったが、チップを期待された通りに渡すことが多くなった。しかし、このチップの上昇傾向は緩やかで、広範囲にわたるものではなく、消費者の気前の良さも今は弱まりつつあるように見える。

記事引用元:NBC NEWS

コロナによる外出制限などが終結し、人々が外出を再開した頃からこの現象は始まっていたようです。72%もの人が、「前よりもチップを求められることが多くなった」と感じているという調査結果があります。例文中のthose upticksは店側がチップを取り始めたり、額を上げ始めたりした動きを指します。

キーワード②

tipflation:チップフレーション

店側のチップの期待率が上昇したり、支払いを要求したりする業種が増えていること。tipにインフレを意味するinflationを組み合わせた造語。

duly:期待された通りに

「正式に、適切に」という意味のduly。この文脈では、「適切に期待に応じて」と解釈でき、「期待された通りに」と訳しました。

gripe:文句を言う

ここでは動詞として使われていますが、「ちょっとした不平、苦情」という名詞の意味もあります。

チップの本場にも戸惑いが・・・

前項で触れた調査結果についてもう少し詳しく見てみましょう。

In a study that tapped the input of nearly 12,000 respondents, Pew found that 72% of participants said they’re being asked to leave a tip in more places compared with five years ago. But knowing which services to tip for divided respondents, with 34% reporting it is extremely or very easy to decide, 39% saying it was somewhat easy and 26% who find the decision of who to tip or who not to not at all easy.

約1万2000人からの回答を利用した調査で、Pew(調査会社)は、72%の回答者が5年前と比べてより多くの場所でチップを求められるようになったとしている。しかし、どのサービスにチップを支払うかは回答が分かれ、34%は「それを決めることは至極、またはとても簡単」だと答え、39%は「ある程度簡単」、26%は「誰にチップを払うか払わないか、決めるのは全く簡単ではない」と答えた。

記事引用元:Deseret News

アメリカ人ならチップを払うべき場面やどれくらいが相場なのか、誰でもすぐに判断がつくと思っていたのですが、どうやら彼らも悩むことがあるらしいというのが発見ですね。

キーワード③

leave a tip:チップを払う(支払い後にテーブルにチップを置く)

他にも、pay a tipは直接店員に払うこと、tipは単に「チップを払う」という動詞としても用いられます。

チップが不可欠である切実な理由

それでもチップ文化をすぐになくせない事情が。それは、アメリカのサービス産業における賃金構造にあります。チップの対象となる業種の最低賃金は、ほかの業種よりも低く設定されており、チップなしでは十分な給料にならないのです。

Despite their negative view of tipping culture, Americans are amongst the best tippers in the world. Customary standards are that you should tip around 15% to 20% of the bill. Most people in the service industry are paid less than the minimum wage—which is generally low to begin with—and workers rely upon tips to enhance their low pay.

チップ文化にネガティブな意見を持ちつつも、アメリカ人は世界で最もチップを支払う国民でもある。慣例的な基準では、請求額の15%から20%のチップを支払うべきとされている。サービス産業の人々のほとんどは、もともと一般的に言って低い最低賃金よりも低い給料で働いており、その低い給料を補うのをチップに頼っている。

記事引用元:Forbes

キーワード④

tipping culture:チップ文化

tipping custom(チップの習慣)という言い方もあります。

customary standards 慣例的な基準

【standardsを使ったその他のフレーズ】

service industry サービス産業

【industryを使ったその他のフレーズ】

minimum wage 最低賃金

wageは「賃金、時間給」という意味。「基本給」はbasic wage、「時給」ならhourly wage

まとめ

いかがでしたでしょうか。①チップの支払いを求める店が増加、②チップの割合の増加、両方の要因でアメリカ人がtipflationと感じる現象が起きているのですね。チップ支払いが必要なのかは、自分が受けたサービスが心地よかったかで判断すればよいのですが、セルフサービスの店でも普通にチップを要求されるようになると、これまでの判断基準が通用しなくなります。一方、単にチップをなくすとサービス産業従事者の収入に直接影響するので、難しい問題です。

次回をお楽しみに。

EJ
廣川 亘(ひろかわ わたる)

RNN時事英語辞典」編集長。1998年に同サイトを立ち上げる。RNNは「Rapid News Network」の頭文字。最新の英文ニュースを常にウォッチし、多用されるキーワードや現代用語、専門用語を多数収録する。

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