海外メディアが報じたニュースから、英語表現を学びましょう!今回は、IT業界が憂(うれ)いている、「うるう秒」に関するニュースを取り上げます。
まずは「うるう年」の起源と役割をおさらい
時事英語専門のオンライン辞書サイト「RNN時事英語辞典」編集長の廣川です。
10月8日付けの日本経済新聞に、「うるう秒廃止へ」というニュースが掲載されていました。11〜12月に、国際機関で廃止が決議される予定です。
廃止を積極的に働きかけているのは、IT業界。それはなぜなのでしょうか。今回はこのニュースを英語で見ていきましょう。
まずは、私たちもたまに遭遇する「うるう年」の解説を読んでみましょう。
Roughly every four years, an extra day gets tacked onto the end of February, a time-keeping convention known as the leap year. The practice of adjusting the calendar with an extra day was established by Julius Caesar more than 2,000 years ago and modified in the 16th century by Pope Gregory XIII, bequeathing us the Julian and Gregorian calendars.
おおよそ4年に一度、2月の終わりに追加の1日が付け加えられるが、これがうるう年として知られる時間管理の習慣だ。追加の1日でカレンダーを調整する習慣は、2000年以上前にジュリアス・シーザーによって確立され、そして16世紀にローマ教皇グレゴリウス13世によって改良されて、ユリウス暦やグレゴリオ暦として今日に伝わっている。
記事引用元:The New York Times
西暦が4で割り切れる年が「うるう年」となります(「100で割り切れるが400では割れない年」は例外で、うるう年にはなりません)。2000年前には編み出されていた手法とは驚きですね。
キーワード①
get tacked onto ~ ~に付け加えられる
tack A onto B で、「AをBに付け加える」という意味ですが、get + tacked(過去分詞)とすることで、受け身のような表現に変わります。
convention 習慣、しきたり
そのほか、「大会」や「集会」、「(国家間の)協定」といった意味もあります。
【conventionを使ったその他のフレーズ】
- convention center:展示場
- Convention on Wetlands of International Importance:国際湿地条約、ラムサール条約
leap year うるう年
leapは「飛ぶ」「跳ねる」を意味する動詞でもあります。通常より1日多く飛び跳ねる年、というところでしょうか。
【leapを使ったその他のフレーズ】
- leap second:うるう秒
Pope ローマ教皇
ローマ教皇は、ローマ・カトリック教会(Roman Catholic Church)の最高指導者です。
では「うるう秒」って何?
では、うるう秒はどういった理由で存在するのでしょうか。
Since 1972 there have been 27 leap seconds: additional seconds added to the world’s common clock — Coordinated Universal Time or UTC — to account for changes in the Earth’s rate of rotation.
Historically, our concept of time is defined as a fraction of the length of the solar day, but as the Earth’s rate of spin is somewhat irregular (slowing and speeding based on various factors) it means solar time and universal time tend to drift apart. So, in order to compensate, we add leap seconds. And this really confuses computers.
1972年以降、地球の自転率の変化を考慮して、世界共通の時計である協定世界時(UTC)に、27回うるう秒が発生した。
歴史的に、時間の概念は太陽日(1日)の長さの一部分として定義されるが、地球の自転率はいくぶん不規則(さまざまな要因で遅くなったり早くなったりする)で、太陽時間と協定世界時は徐々にずれていく傾向にある。そのため、補正するためにうるう秒を挿入する。そして、これがコンピューターを実に混乱させる。
記事引用元:The Verge
地球の自転のスピードは不規則で、常に変化しているとは驚きでした。そのため、うるう年とは異なり、うるう秒をいつ挿入する必要が生じるか予測できないのだそう。
キーワード②
Coordinated Universal Time 協定世界時
高精度の原子時計と天体観測に基づいて決定される時間。似たものにグリニッジ標準時(Greenwich Mean Time)があります。こちらはイギリスのグリニッジ天文台での天体観測を基にした時間。
tend to ~ ~する傾向がある
「~する傾向がある」「~しがちである」という意味のフレーズです。
drift ゆるやかに変動する
他にも、「(物が)漂う」「(人が)さまよい歩く」といった意味もあります。名詞では「漂流物」「ゆるやかな変化」という意味です。
【driftを使ったその他のフレーズ】
- drift ice:流氷
- drift-net fishing:流し網漁
compensate 埋め合わせる、補正する
名詞形はcompensationとなります。
【compensationを使ったその他のフレーズ】
- compensation liability:賠償責任
- compensation claim:賠償請求
たった1秒でシステムが大混乱!
たかが1秒、されど1秒。ITシステムは突然1秒が追加されることにより不具合を起こすリスクがあります。
In 2012, a leap second caused a major Facebook outage, as Facebook’s Linux servers became overloaded trying to work out why they had been transported one second into the past.
In 2016, a similar thing happened to Cloudflare, when a leap second at midnight on December 31 extended 2016 by a single tick of the clock.
Now, Facebook wants to call a halt to the practice, because it is dangerous to systems relying on UTC. Instead, it wants to allow clocks to slow down fractionally for a short period, so the extra second can be “smeared” across most of a day.
2012年、うるう秒によってFacebook社に大規模障害が発生。Facebook社のLinuxサーバーが、「ある1秒が過去のものになったのはなぜか」を計算処理しようとして過負荷になったのだ。
2016年には、12月31日の真夜中に、うるう秒で2016年が1秒だけ長くなったことで、Cloudflare社でも同様のことが起きた。
今、Facebook社は、UTCに依存するシステムにとっては危険なため、この習慣を打ち切ることを呼びかけようとしている。代わりに、短期間ほんのわずかに時計の進み具合を遅らせたいと考えている、そうすることで、追加の1秒をほぼ1日に分散させられるからだ。
記事引用元:DatacenterDynamics
有名ITサービスも、うるう秒が原因でシステム障害につながったのですね。私たちの日常生活に欠かせないシステムに不具合が起きれば、影響は大きなものになりかねません。IT業界がうるう秒廃止を訴えるのも理解できます。
キーワード③
outage システム障害
他に「停電」を表すこともあります。
【outageを使ったその他のフレーズ】
- network outage:ネットワーク障害
- water outage:断水
single tick 1秒
tickは時計の針が動く音。single tickで秒針が1回動いた、すなわち「1秒」のことと訳しました。
smear 塗り込む
smear A on Bで、「BをAに塗り込む」「なすりつける」という意味。また、「(人を)中傷する」といった意味もあります。名詞形では、「汚れ」「名誉毀損(きそん)」などを表す言葉です。(この記事では、前後の文脈から「分散させる」というニュアンスになります。)
【smearを使ったその他のフレーズ】
- smear campaign:中傷合戦
まとめ
いかがでしたでしょうか。さらにうるう秒について調べてみると、地球の自転スピードが早くなることで「マイナスのうるう秒」が発生する可能性もあるそうです。1秒を「追加する」のではなく、どこかの1秒を「なくす」作業になります。これまで実施されたことはなく、ITシステムも十分テストされていないため、さらに混乱が大きくなることが容易に想像できます。根が深い問題ですね。
次回をお楽しみに。
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